登場人物のキャラクターから考えるとドラマが生まれる
小学校の中学年や高学年になると「物語を書こう」という単元があります。実はこの単元で、書くことへの苦手意識が生まれてしまうというお話を、小学校の先生から伺ったことがあります。
では、子どもたちが、どんどん物語を書きたい!と思うようにするには、どうすればいいのか。答えは、ストーリーからではなく、登場人物のキャラクターから考えることです。
なぜなら、キャラクターがしっかり作れれば、「このキャラクターならこういうこと言うだろうな・するだろうな」と、どんどん発想が湧いてくるからです。
この方法なら、書くのが苦手な子も苦も無く書けますし、書くのが好きな子はどんどん書けるようになります。
映画やテレビドラマの脚本家を600名以上、養成しているシナリオ・センターが教育機関などで実施しているキッズシナリオから、子どもたちに楽しみながら物語を書いてもらうコツをご紹介します。お子さんはもちろん、大人でも物語が書けるようになりますよ。
登場人物のキャラクターから
【リアクション】【セリフ】【アクション】を考える
先日、朝日新聞販売会社の㈱エヌ・アイ・エスさんが主催し、弊社の田中が講師を務めた「シナリオライター体験教室」で実践した「もしも桃太郎」をご紹介します。
今回参加してくれたのは、小学3年生~6年生の子どもたち、26名。
「文章を書くのが苦手なんです…」と恥ずかしそうにしている女の子もいれば、「ラーメンズの舞台が好きで、コントを書きたいと思っているのですが、舞台の台本と映像の台本ってやっぱり違うんですよね」と大人顔負けな質問をしてくる男の子もいます。
そんな色々なタイプの子どもたちですが、後半は全員にシナリオを書いてもらいます。
そのため、前半はウォーミングアップとして様々な発想ゲームをします。
その1つが「もしも桃太郎」。
この発想ゲームを通して、【登場人物のキャラクターによって、生まれるドラマが変わる】ということを実感すると、文章を書くのが苦手な子も、メキメキとシナリオが書けるようになりました!
「もしも桃太郎」とは、昔話でお馴染みの“桃太郎”の勇敢な性格を、もしも「怠け者な性格だったら」「臆病な性格だったら」「能天気な性格だったら」と変えて、【リアクション】【セリフ】【アクション】を考えてみる発想ゲームです。
例えば、桃太郎が怠け者な性格だったら。こんなふうにやってみます。
①怠け者な性格の桃太郎が、「鬼退治に行ってくれ!」と頼まれました。
②お供の猿・犬・キジ3匹は明日の決闘に向けて、「エイエイオー!」と騒いでいます。
③怠け者な性格の桃太郎はこの3匹をみて、どう感じるでしょうか。つまり、どんな【リアクション】をしますか?
④そして、怠け者な性格の桃太郎はこの3匹に、何と声をかけたり(=【セリフ】)、どんな行動をする(=【アクション】)でしょうか?
皆さんも、③と④について、考えてみてください。
登場人物のキャラクターによって
【リアクション】【セリフ】【アクション】は変わる
皆さん、考えてみましたか?
③と④について、子どもたちからはこんなアイデアがでました。
Q 怠け者な性格の桃太郎が、「エイエイオー!」と騒いでいる3匹を見たら…
・いまのうちに帰っちゃおう!と思った。「君たち、ヤル気あるね~。じゃ、任せます!僕、帰るね!」と声を掛ける。
・おじいさんとおばあさんのことが恋しくなった。「あと、よろしく!」と言って帰ってしまう。
・鬼はなんでこんな面倒くさいことするんだろうと不思議になってきた。「鬼なんてもうどうでもいいや。でも鬼退治に行けと言われちゃうから、家に帰って鬼退治のゲームしよっと」と言う。
・お腹がすいてきた。「♪僕にきびだんごくださ~い♪」と歌う。
・眠たくなってきた。ごろんと横になった。
「ごろんと横になった」というように、敢えてセリフは言わずにアクションだけを発想した子もいたりと、短時間でさまざまなアイデアがでましたよ。
もし桃太郎が勇敢な性格だったら、「面倒くさいな」というリアクションもしないし、「じゃ、任せます!」というセリフも言わないし、無責任に家に帰るというアクションもしないはず!
桃太郎が怠け者の性格だからこその【リアクション】【セリフ】【アクション】になってますよね。
子どもたちは、「確かに~!」と面白がりながら、そのキャラクターの違いでドラマが変わることを学んでいました。
皆さんも、登場人物のキャラクターを考える大切さを改めて実感できたのではないでしょうか?
キャラクターによって、【リアクション】【セリフ】【アクション】は変わる。
だから、たとえ「鬼を退治して、めでたしめでたし」という同じラストでも、登場人物のキャラクターが違うと、全然違うドラマが生まれるのです。
だから、「ああなってこうなって」とストーリーだけを考えるのではなく、まず、「このキャラクターならどうするか」を考えていくと、自然とドラマが生まれていくようになります。
そして、これができるようになると、「そのドラマをもっと面白くさせるにはどうしたらいいか」というワンランク上のお悩みが出てくると思います。
そんなときは、こちらのブログ「脚本コンクール で賞をとる4つのポイント」にある、登場人物のキャラクターを考えた上でどうしたらいいのか、というポイントを参考にしてください。
今回ご紹介した発想ゲームを、お子さんに物語の書き方を教えるとき、ぜひ使ってみてくださいね。
子どもも大人も、登場人物のキャラクターを考えることを常に意識して、面白いシナリオを作っていきましょう!