ドラマを面白くするドキュメンタリーからのヒント
人間を描く、とは。ドキュメンタリーから学ぶ!
シナリオ・センターでは、皆さんの“引き出し=ミソ帳”を増やすために、様々なジャンルの達人から“その達人たる根っこ=基本”をお聞きする公開講座「ミソ帳倶楽部 達人の根っこ」を実施しています。
2006年公開の中村高寛監督デビュー作、映画 『ヨコハマメリー』。
12年以上たった現在も、各地でリバイバル上映が続く人気ドキュメンタリー映画です。
なんと今回シナリオ・センターで上映します!
「ドラマを作る身としてはドキュメンタリーに勝てないと思うことがある。
ドキュメンタリーの持つ力強さはどこからくるのか、それをドラマに活かすことはできるのか。」
新田晴彦(シナリオ・センター作家集団講師)
ドキュメンタリーとドラマの二つの現場を知る中村監督に、新田講師が構成を中心にドラマを魅力的にするヒントに迫ります!
映画監督 中村高寛(なかむら たかゆき)さん、プロフィール
1975年生まれ。97年、松竹大船撮影所よりキャリアをスタート。99年、中国・北京電影学院に留学し、映画演出、ドキュメンタリー理論などを学ぶ。
06年に映画『ヨコハマメリー』で監督デビュー。
横浜文化賞芸術奨励賞、文化庁記録映画部門優秀賞、ヨコハマ映画祭新人監督賞・審査員特別賞、藤本賞新人賞など11個の賞を受賞。17年9月 監督第2作目映画 『禅と骨』(林海象監督プロデュース)が公開。
語り継ぐこと 監督・構成 中村高寛
中学生のころ、町に映画を観に行くと、よくメリーさんを見かけた。全身白塗りの老女で、とても近づける雰囲気ではなかったし、強烈な畏怖を感じた記憶だけが今もなお残っている。
その後、いつの間にかメリーさんは町から居なくなっていた。「なぜ、メリーさんを題材にしたのですか?」と多くの人に聞かれる。いちばんの理由は、私がメリーさんと関わりを持った人達と出会ったこと、そして彼らに強く惹かれたことだろう。
畏怖すら感じるメリーさんと、ただ会って話すだけでも凄いのに、友達だった人すらいる。彼らが語る「メリーさん」との記憶や話、真偽すら定かではない伝説などが面白くて堪らなかった。
記憶の中のメリー 写真・構成出演 森日出夫
1995年、写真集「YOKOHAMA PASS」ができ上がった。
……そしてメリーさんが忽然と街から消えた。
横浜の風景が変わって見えた。何か違和感があった。メリーさんと横浜の街が一体となっていたのだ。
ヨコハマメリーのナラティビティ プロデューサー・編集 白尾一博
当初は「LIFE 白い娼婦メリーさん」として始まった作品。一度完成した作品を解体し、タイトルも替え、「ヨコハマメリー」としてスタートした。監督がリサーチをおこない、その情報を元に、私と2人で考えていくというスタイル。最初の撮影から7年、私が参加してから3年。数百時間の膨大な素材があった。
大都会に棲む小さな獣 出演 山崎洋子
その人がいたのは、歓楽街にあるビルの一隅だった。パイプ椅子を二つ並べ、上体を深く折り曲げた姿勢で眠っていた。人は普通、体を伸ばして眠る。しかし野生の獣は、自分の体で自分を隠そうとするかのように丸まって眠る。メリーさんと呼ばれるその人は、大都会に棲む小さな獣だった。頭から足の先まで真っ白だったから、置き去られた大きな卵のようにも見えた。