発想力を高めるには「発想は止めないでとばす」
企業の人事部のかたとお話しすると、「目的に応じてこれまでになかった考えを導き出す“発想力”がある人を求めています」とよくお聞きします。
職場で「どうやったら、こんなこと思いつくんだろう」と羨ましくなるような、発想力が豊かな人って周りにいませんか?そういう人が身近にいると、「自分もあんな発想力があればな」と思いますよね。
発想力を高めるために、何かいい方法はないのでしょうか。
シナリオ・センターで基礎講座(8週間講座・作家養成講座・企業向けシナリオ基礎講座)を担当する河合雅子講師は、こう言います。
「発想は止めないでとばす」
これはどういうことか。
この「発想は止めないでとばす」という言葉とその意味を、河合講師が担当した「企業向けシナリオ基礎講座」で“受講生”の皆さまにお伝えしたところ、「一斉に」といっていいほどのタイミングで大きく頷かれていました。
そこで今回は、発想力を高める方法「発想は止めないでとばす」について解説いたします。
なお、今回の「企業向けシナリオ基礎講座」は、ゲームソフトなどさまざまなエンタテインメントコンテンツやサービスを開発・提供されている企業の新入社員研修の一環として実施させていただきました。
否定はせずに思いついたことをボンボン言っていく
河合講師は、「今までにない新しいものを作るぞ!」と目を輝かせている新入社員の皆さんに向けて、発想力を高める方法「発想は止めないでとばす」についてこう説明しました。
〇河合講師: これはシナリオ・センター創設者の新井一がよく言っていた言葉なんですよ。
もっと具体的に言うと、“ブレスト(ブレーンストーミング)”してください。
「これは無理だよな…」なんて否定はしないで、思いついたことをボンボン言ったり、書き出してみるんです。そうすると、誰も思いつかなかったようなアイデアがポっとでてくることがあります。
だからプロの脚本家はネタ帳をつけています。常に発想しているので、それを書いておくんです。たとえ、すぐに使わなくても、書きとめておけば、何かのときにスッと使えます。
シナリオ・センターでは、閃いたことなどを書きとめ、自分だけのネタを“発酵”させるという意味で「ミソ帳」と言っています。
皆さんもミソ帳をつくってどんどん書いていってください。
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また、新井一は、『シナリオの基礎技術』のP42「1発想について」の中でこう述べています。
【私たちの考え方、方法というのは、どんな人でも一応は今までの既成概念で考えます。
つまり、今までの経験だとか、知識によって判断し、思考するものです。
従って、新しい考え方が仮に湧いてきても「こんなことは、ありえないよ」、あるいは「そんなことはできないよ」と否定します。その判断の結果を結論として、ものを書いたり、発言したりするのです。そこに行き詰りがくるのです。
そこで、その新しい考え方を殺さないで生かすためには、そうした既成概念を除くことが第一です。
(中略)
どうやるかというと、テーマを考えたら、そのモチーフはどうするか、舞台になるところを考えるにしても、日本とばかり考えずに東南アジア、欧州、アメリカ、どこでもあり、日本の中でも都会と田舎、中都市、山の中、海はどうかというふうにあてはめるのです。
(中略)
とんでもないところにピッタリするテーマに肉薄するモチーフが転がっているものです】
※テーマ=読者や視聴者や観客に伝えようとする、自分の考え方や主張(『シナリオの基礎技術』P40より)。
※モチーフ=人物や、時代や、社会を決めること。これらを決めることでいろいろな角度から同じテーマをとらえることができる(『シナリオの基礎技術』P41より)。
既成概念を除いて、どんどん発想
ドラマ『ハケンの品格』(2007年・日本テレビ)では、ずば抜けた能力をもちながらも、正社員として働くことや出世に興味をもたない特Aランクのスーパー派遣社員を主人公にし、今までにない主人公のキャラクターに視聴者は魅了されました。
また、ドラマ『任侠ヘルパー』(2009年・フジテレビ)は、「任侠」と「ヘルパー」という一見するとかけ離れているように思える2つの世界を巧みにかけあわせて、今までにないドラマを作りだしていました。
こんなふうに、今までにないものを作り上げるには、新井一がいうように「既成概念を除くことが第一」なのです。そして、既成概念を除いたうえで、「発想は止めないでとばす」ことが大切になるのです。
発想をとめずにとばして、どんどんどんどん発想していく。
こうすることで、企業の人事担当者も驚くような「目的に応じてこれまでになかった考えを導き出す“発想力”」が身についたり、自分でもびっくりするような今までにないモノをつくることができるようになるのではないでしょうか。