この世界の片隅に
シナリオ・センター代表の小林です。猛暑がまた戻ってきました。この異常な暑さは、来年以降も続くのか、今年が特別なのか、そしてこの暑さはいつまで続くのか・・・知りたい。
全国津々浦々、西日本の暑さも半端ではなく、被災地の復興もままならず、先は果しなく、本当に何とかしてほしいものです。
慢性熱中症的なウニ頭になっていますが、少なくともこうして大変な想いをしながら人々が頑張っている時に、まさか上に立つ方々がのんびり夏休みはありえないですよね。
もちろん、それぞれの立場の仕事の仕方はあります。でも、少なくともトップは命令するだけでなく、被災者の気持ちにもちゃんと寄り添って欲しいです。
どんどん終戦記念番組が創られなくなっている昨今、「この世界の片隅に」は、傲慢な神の手を見せてガンガンア進む痛快なドラマだった前期の「ブラックペアン」とは違い、とても地味なドラマですが、是非見ていただきたいドラマです。
岡田惠和さんの脚本は、原作にもアニメにもリスペクトしながら、また別の世界を作りだしており、新たな境地を開いています。
本当にディテールが素晴らしく、シーンシーンに魅了されます。
正面から戦争の悲惨をみせつけられるよりも、日常がじわじわと侵されていく方が、今の時代ともリンクして、とても怖い気持ちになります。
恋バナなどの女子トーク、家族愛、夫婦愛に包みこみながら、静かに戦争の怖さを感じさせる見事な脚本であり、演出だと毎週拝見しています。
岡田さんから、原作をどのような切り口でどうみせていくかこそが脚本家の腕の見せ所なので、センターでもそういう勉強もされたらどうかというご提案をいただいたこともあります。
オリジナルとは違った視点から、独自の切り口を作りあげる力を身につけるのも大事なことかと思います。
このご提案は、これから作家集団などに取り入れてみたいなあと思っています。
あちこちのすずさん
大ヒットした映画「この世界の片隅に」が参考にした貴重な記録の第2弾が、この夏半世紀ぶりに刊行されるのだそうです。
雑誌「暮らしの手帖」が編んだ「戦中・戦後の暮らしの記録」。
1968年に「戦争中の暮らしの記録」を刊行されてから、半世紀ぶりに刊行されます。
市井の人々が体験されたことを募集したところ、「あちこちのすずさん」の2300以上の体験記が寄せられたそうです。
戦後73年、どんどん戦争体験者が亡くなられている中で、薄れていく記憶は、記録として遺していかなくてはなりません。
こうした庶民の記録はとても貴重であり、この本のサブタイトル「君と、これから生まれてくる君へ」をみてもわかるように、記録としてしっかりと遺すこと、語り継ぐことを願っています。
「この世界の片隅に」生きたすずさんたちは、「悲惨」だけではひとくくりできない、力強く知恵とユーモアで生き抜いてきたのです。
どんな状況でも人間の生きようとする底力は、今生きている私たちに大きな影響を与えてくれることでしょう。
最終的にはいつの時代でもお上の力ではなく、個々の力で、個々の知恵で生き抜いていく・・・それができるのが庶民です。(それに政府は甘んじてほしくないですが)
ひとり一人がこの時代を生き抜くために、自分で考え、想い、行動してきた・・・現代に生きる私たちもそこから学びとっていかなくてはと思います。
ドラマ「この世界の片隅に」の現代を生きるのかよさんは、私たち同様すずさんの足跡をたどりながら、なにを感じていくのでしょうか。