ホラー映画の監督がファンタジーを撮る!
僕の中ではファンタジーとホラーは地続きで、同じ世界にあるという気がしています。アメリカのハロウィンのイベントなんか、明るく怖さを楽しんでいますよね。その恐怖の部分を濃縮するとホラーになると思います。
『魔女の宅急便』の実写映画を撮ることになった時に、原作を書かれた角野栄子先生が、僕が監督することを、OKしてくれるのかどうか不安だったんです。
でもお会いしたら「私、ホラーとファンタジーって同じだと思うのよ」って仰ってくださいました。そういう原作者の方なら大丈夫だと思い、僕も今回の映画では、自信を持って取り組むことができました。
僕の場合、ホラーを撮っていても、現場はすごく明るい。録音部に「監督の声うるさい」って指摘されるほど笑っていたりします(笑)。
俳優から「なぜ笑ってるんですか? 私、ダメなんですか?」なんて勘違いさせてしまうこともあります。僕としては思い描いた世界が具現化して嬉しいだけだったりするんですが……。
あとは……仕事ですから、役者さんも真面目な顔をして、白く塗った顔で「おはようございます」って現場にやってきたりする。客観的な視点で見ると、それがすごくおかしいんですよ。映画としては怖く仕上げないといけないんですけどね。ファンタジーとホラーとの境界線はあまりないと思っています。
『魔女の宅急便』実写映画化の話は、実は何年も前から出ていた企画でした。プロデューサーから「ちょっと内密で話が……」と呼び出されまして、「『魔女の宅急便』って知ってますか?」と。
アメリカでも映画化を検討していたようです。でもなかなか実現せず、原作者の角野栄子さんの元に、原作権が戻ってきたんですね。
それで、「東洋を舞台にして、日本でできないか」という経緯があったようです。それが実に20年近く前のことらしいので、原作者からすると、今回ようやく実現できたということになりますね。
しかしいかんせん、『魔女の宅急便』と言えばジブリのイメージが強いんですよね……今日は皆さん、こんなに集まっていただきましたが、宮崎駿監督が来るって勘違いして来た方はいませんか?(笑)僕、今ちょっと不安なんですけど……(笑)。
それに、原作本があるのに、原作よりもジブリの映画で有名ですよね。僕もアニメを観た後で原作を知り、本を読んだ口ですが。
原作は全部で6巻ありまして、『赤毛のアン』のように長く続く作品になっているんです。主人公のキキは、皆さんには女の子のイメージしかないかもしれませんが、6巻では、キキは双子の子供のお母さんで、その子供たちがストーリーのメインキャラクターなんですね。映画を観て興味が湧いたら、ぜひ原作も読んでみてください。
話を戻すと、とにかくそのアニメで有名になった原作の実写化を、ホラー映画ばかり撮っている僕にオファーをするなんて、なんて無謀なプロデューサーだって思ったんですけど(笑)。ホントに無謀な企画だとは思ったんですが、僕は無謀なことが大好きな性分なので、「やります、やりたいです」と即答しました。
その時一応、「僕がどんな映画を撮っているか、ご存じですよね?」とは訊きましたが(笑)。事務所の女性スタッフからは、「正気ですか? 今までのキャリアも全部崩されますよ」と心配していましたね(笑)。
だけどその時点では、実現するかどうかわからない、資金繰りもまだという状態でしたから、それから何年か音沙汰がないままでした。
だからたぶん他の監督の方に話が行ったか、あるいは企画自体がなくなったのかもしれないくらいに思っていたんですが、今から3年くらい前に、「やっと動き出せることになりました」との連絡をもらいました。
ちょうど僕は別の仕事で日米を行ったり来たりしていたので、「お待たせさせちゃいますが……」と返したところ、待ってくださることになりました。