OQTAのキズナ聞こえる鳩時計は何がすごいのか?
「あ、いま、あの人なにしてんだろう?」
そう思ったら、アプリをタップする。
すると、あの人の家にある鳩時計が、ぽっぽーって、鳴く。
3時のおやつの時間だからではなく、誰かが自分のことを思ったらしいから、鳩時計がぽっぽーって鳴く。ちょーシンプル。でもこれ、何の役に立つの?
そんな鳩時計の開発秘話を聞く会に、シナリオ・センターの新井、行ってきました。
OQTAのキズナ聞こえる鳩時計については、>>こちらから
大学の先輩が作ってた、誰かが誰かを想う鳩時計
OQTAのキズナ聞こえる鳩時計について、なんか知ってるかも?
という方もいらっしゃるかもしれません。
テレビ東京さんのワールドビジネスサテライトの「トレンドたまご」でも
取り上げられたり、ネット上でも取り上げられたり、果ては、経済産業省の2018年優秀賞受賞したり。
まさにブレーク前夜。
で、この鳩時計を作ったのが、高橋さん。Chief Philosophy Officer らしいです。
▼このかた
というか、行って分かったのですが、当時ワンワンさんと呼んでいた大学の先輩でした。
高橋さんって、ワンワンさんだったのか。
ぽっぽーって、鳴く。たったそれだけが、ただ事ではない。
誰かが自分のことを思ったらしいから、ぽっぽーって鳴く鳩時計。
これの凄さ、わかります?
これね、ぽっぽーと鳴ると、なった瞬間に、ちょっと嬉しいんですって。
そりゃ、そうですよね。鳴る=誰かに思われる なんだもの。
私たちが生きていて何が悲しいって、誰にも思われていないかもしれないという孤独感じゃないですか。
誰かに思われてるってことだけで、人って嬉しくなるものです。
そうすると、ふっと笑っちゃったりして。
ふっと笑っちゃったりするんだけど、相手が何を思っているのかは、わからないってことが、OQTAの鳩時計はミソのようです。だって、鳩がぽっぽーっていうだけだし。
でも、ぽっぽーって鳴ったら、「私について、こんなことを思ってくれたのかも」と、受け手は勝手に解釈するらしいのです。
そうなると、鳴らす側も気が楽です。だって、相手のことを思い出した時に、アプリ立ち上げて押せばいいのだもの。
鳩が、ぽっぽーって鳴くだけで、誰も言葉を発していない。
言葉を発していないのに、言葉以上の何かが伝わる。伝えられた気になる。どっちも。
一秒で、人がちょっと笑顔になる。これ、すごいでしょう。「秒速で~」の世界です。
でもね、わたくし新井、はっきり言って、これ、ズルいと思いました。
OQTAの鳩時計は、ト書じゃないか
多くの方が苦しむのは、ビジネスでも、日常でも、言語化することです。
言語化って、難しい。ってか、めんどくさい。それでも日々、頭をうんうんさせながらひねり出すのが、言葉です。このブログだって、書きながら、うんうんしてます。めんどくさいし。
でも、鳩時計を鳴らす側は、思い出したという感覚だけでいいわけです。「これを伝えよう!」とか、「こんな風に言おう」とかは、全く考えません。言葉にしようとして苦しむことも、言葉にできなくて諦める必要もないわけです。
「あ、思い出した。あ、鳴らそう」これだけでOK.。
だから、ズルい!
でも、もっとズルいと思うのは、言葉よりもぽっぽーの方が、伝わるものがあるからです。
これ、シナリオで言うと、ト書です。
例えば、力投が続いていた金足農業の吉田投手にねぎらいの言葉をかけようと思ったら、なかなか大変。
でも、吉田選手の肩に、ポンっと手を置いたら、そこに思いが乗っかっていきます。
ト書の威力です。
ヒッチコックは、「映画は、小道具、小道具、小道具」と言っていましたが、セリフではなく、ト書でこそ魅せるのが映画だといっているわけです。
それを、このOQTA HATOの鳩時計はやっているってことです。
▼ト書についてはこちら『グッとくる気持ちの伝え方』
言葉の過剰供給な社会へのカウンターパンチ
というか、現代社会は言葉が多すぎ。
ググれば、言葉の嵐。TwitterやFacebookも言葉の嵐。人類がこれほど、言葉を使っている時代は、いままでなかったとか。
言葉の過剰供給が起きているってわけです。このブログだって、言葉が多い!
で、そんな毎日に、私たちは疲れているわけ。もうね、情報はそんなにいらないよって。
いうなれば、ナレーションばかりの映画やドラマは辟易とするわけ。「心情を説明すんじゃねぇ~」って思うわけ。俳優さんを信用してよ、脚本家を信用してよ、何より視聴者をもっと信用してよって思うわけ。
そんな世の中のカウンターパンチとして、人知れず鳴り響くぽっぽー。
これは、ズルくて、すごいことだと思うんです。
700年、800年に一度起きるようなことをしたい!
高橋さんは、鳩時計を思いついた時に、100人いたら99人は、この価値に気づいてないだろうなって、思ったそうです。
でも、この鳩時計を作ることで、ガラッと世界は変わるんだ!と、はっきりと見えたと言ってました。ってか、700年か800年に一度起きるような、世界の変化を起こせると!
でも、話を聞いていると、確かに!って思うわけです。
神保町の片隅だというのに…
開発秘話を聞く会なのに、鳩時計の実機を高橋さんは持ってきてないのに…
ただ、いまは形になっているからこそ、思えるっていうのもあります。アイデアだけだと、ちょっとイメージは湧かないかもしれません。このとんでもない着想に乗ったのがOQTAの代表の中野さんという方らしいです。資金調達やら、すべての側面から高橋さんのアイデアを支えてくれたとか。
アイデア × 実現に向かうための仲間
アイデアと、実現に向かうための仲間。これも、やっぱりものごとを成すために大切な要素なのだと思います。
で、これ、だれかが言ってたな~と思ったら、小説家の柚木麻子さんも公開講座の際におっしゃってました。
「まずは、友達でも、親でも誰でもいいから、一人、自分の作品を読んでくれる読者を持ってください。そしたら、プロの作家になれたも同然ですから」って。
そうです。世界のだれにも、必要とされていないときに、たった一人でも味方を作ること、これが大事なんです。シナリオ・センターのゼミの仲間って、そういう存在でもあると思うんです。
▼さらに、思い起こせは我らが岡田惠和さんも、ステキなこと言ってました。
「世界は片想いでできてるんです。成功への片想いを永遠に続けたい」
高橋さん、新井一と同じじゃないか
高橋さんの話を聞きながら思ったのが、わたしの祖父でありシナリオ・センター創設者の新井一のことです。新井一も、シナリオ・センターを始めるときに、「新井ちゃん、気でも狂ったの?」と言われたそうです。
なんせ、当時は、脚本家になるには徒弟制度のような方法が主で、「習うより慣れろ!」の世界だったからです。
100人いたら、99人はムリだと思っていたわけです。しかも、東京映画の企画部長という社会的な肩書を投げ打って、私財を投じてシナリオ・センターを作ろうっていうのだから、尚更です。
でも、新井一は、「何を書くかは教えられないけど、どう書くかという技術は教えられる」と信じていた。その方法もわかっていた。だれも、そんな方法があるとは思っていないときに。脚本界を変えてやる!と思っていたのです。で、実際はどうなったかは、ふふふふふっ
とは言え、高橋さんと一緒で、新井一だって、一人では厳しかったと思います。そこに仲間がいなかったら、成立はしなかったはずです。シナリオ・センターの場合は、生徒さんがそう。
なんせ、生徒さんが一株株主となってくれたのですから。
シナリオ・センター設立の経緯についてはこちら>>日本映画黄金期の影武者たち
どんな世界を作りたくて、仕事をするのか
脚本家を目指す方は、言います。
「プロの脚本家になりたいです!」って。それはもう、シナリオ・センターは全面的に応援します。
でも、だからこそ考えてほしいのは、どんな脚本家になりたいのか、です。
どういう作品を作り、それによって、世の中にどんな気持ちになってもらいたいのか、そこまで考えてもらいたいと思うんです。
これは、どの職業にも言えるのではないでしょうか。
高橋さんは、「わかり合う」のではなく、誰かが誰かを想う「気にし合う」世界を作りたいって、言っていました。鳩時計は、高橋さんが考える世界を実現するための、手段のひとつなんだと思います。
鳩とシナリオが作りたい世界は、重なるかも。
シナリオ・センターだってそうです。
新井一は、日本中の人がシナリオを書くことで、日本人の人間を、社会を、世界を見つめる作家の眼を豊かにしたいと思ったのです。その手段の一つとして、プロの脚本家やプロデューサー・ディレクターの養成があります。
でも、もっと重要なことは、シナリオを書くことは、考えることだということです。しかも、自分の視点だけではなくて、相手の視点で、さらにはその場を俯瞰する視点で。
もしも、日本中のすべての人が作家の眼を持てば、日本はすごく変わるはずです。お互いがお互いのことを、俯瞰して見ることができるわけですから。
日本が変われば、きっと他の国々も変わって、そしたら世界も変わると思うんです。私の利益!ばかりを言うのは、バカバカしくなるはずです。
シナリオ・センターは、「人を想う」ことのできる世界を作りたいのかもしれません。ちょっと、これだけ聞くと宗教っぽくて気持ち悪いかもですが…
「気にし合う」プロダクトとしての、鳩時計。
「人を想う」仕掛けとしてのシナリオ。
形は違えど、共通するものがあるような気が、私はしてしまいました。
ワンワンさんは、どう思ったかな。
シナリオ・センターの新井でした。
- シナリオ・センターなんて、知らないあなたに!
シナリオ・センターは、ジェームス三木さん、内館牧子さん、赤川次郎さん、鈴木光司さんなど600名以上の脚本家、小説家を業界一輩出した学校です。連ドラの約7割はシナリオ・センターの出身ライターです。
シナリオを描いてみたいという方はこちら>>プロの作家になるにはシナリオには、ものすごい可能性があります。OQTA HATO「 キズナ聞こえる鳩時計 」にはかないませんが、楽しく世の中に変化がを起こせたらと思って、子ども向けからビジネス向けまで、「一億人のシナリオ。」プロジェクトを展開中です。
シナリオの専門教育機関として、シナリオ・センターでは2010年から実施。これまで8000名以上に受講頂いています。
詳しくはこちらまで>>一億人のシナリオ。について