寒露
シナリオ・センター代表の小林です。10月10日は、ちょっと前まで体育の日。(笑)
1964年の東京オリンピックを記念して創られた祝日でした。東京オリンピックは、秋に開催したのですよ、前回は。
今回は、夏に開催するためによりお金がかかり、かかるお金は3兆円を超すかと言われる東京オリンピック。他人のお金(税金)を湯水のように使う組織委員会も、国も都も、何を考えているのでしょうか。
こんなお金が使えるなら、日本全国災害のあった方々に全部つぎ込んでほしいです。
挙句に、人材はボランティア。人間は、タダでこき使えると思っているお上の発想に下々はいつまでたってもいい目には合わない。
まるで沈みかかった船に乗っている気分です。
この連休は、お休みごとに台風にばかり襲われていたせいか、久しぶりの青空に、あちらこちらで楽しいイベントを満喫されている方も多かったようです。
灼熱の夏から、もう二十四節季では寒露。
晩夏から初秋にかわる時で、季節としては天候も安定して、紅葉のさかりになる一番よいときです。お月様もはっきり見えるそうです。
いろいろむかむかざわざわするけれど、ゆっくり空を見上げて心を落ち着かせましょうか。
人間を描く
この連休にスペシャルドラマを2本みました。
ひとつは岡田惠和さん脚本の「それでも恋する」(TBS)
なんでお昼の放映なのかなあと思いながらも、堪能しました。もったいない、もったいない。
ちょっと年齢の3人の女性同級生のところへイケメンの若者が転がり込み、3人3様の淡い恋心が、つかの間のワクワクを楽しむ、女心をくすぐるドラマでした。岡田さんは女心を知り尽くしている???
もういつもながらの会話の応酬の面白さに岡田ワールド炸裂。
ほんわか気持ちの良いお休みの昼下がりを味わうことができました。
もうひとつは、どうなるかと一転二転する展開にハラハラドキドキ。
いずみ吉紘さんの脚本の「誘拐法廷~セブンディズ~」(テレビ朝日)
殺人犯を無罪にしろと9歳の娘を誘拐された女性弁護士が母性と倫理の狭間で葛藤しながら、なんとか無罪を勝ち取りホッとするのですが、誘拐犯は彼女と同じく母性愛にかった被害者の母。復讐のためにあえて無罪放免にさせ、自分の手で一番苦しむ方法で犯人を殺すというドンデンに次ぐドンデン。
韓国ドラマのリメイクとは思えない、いずみさんらしい細かな人物描写に骨太の人間ドラマを堪能しました。
連休前日には、森下直さんの「琥珀の夢」(テレビ東京)も、こちらはサントリーの創業者鳥井信治郎さんを描いたもの。伊集院静さんの小説が原作ですが、さすが森下直さん。主人公の生きざまに焦点を当てて、ただの企業ものドラマでもなく人生ドラマでもなく、人間ドラマとして実に丹念に人物像を描いていました。
向田邦子の世界
人間を描く・・・これこそがドラマの本質です。
その人間を描き続けた脚本家たちにスポットライトを当てて、作品上映とシンポジウムを市川森一財団がシリーズで行っています。
2回目は「向田邦子 ひと、その悲しみと可笑しさ」
脚本家でもあり直木賞作家でもあった向田邦子さん。どなたもがご存知の方ですが、向田さんの作品上映とシンポジウムが11月3日、千代田放送会館(地下鉄永田町駅下車)で行われます。
シナリオライターを志すのであれば、是非向田さんの作品を学んでください。本当に見事な脚本です。
私個人の好みとしては、「だいこんの花」「七人の孫」などの軽いんだけれど、遊び心に溢れているながら、ジーンとさせられる向田ホームドラマが好きです。
「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」もいいですが、その前のこの二つのホームドラマは最高だと思います。今回の放映される作品は、ちょっと固め。(笑)
私の一番好きなのは「冬の運動会」ですが、どれも見損なったら損するドラマばかりです。
10:00~12:15 「隣の女 現代西鶴物語」(TBS)
13:15~15:15 「冬の運動会(第9回/最終回)」(TBS)
15:30~17:20 「あ・うん(第1回こま犬/最終回弥次郎兵衛)」(NHK)
名作の数々、まず見てください。ドラマ作りの肝を掴めることでしょう。
17:30~19:00 シンポジウム
司会:岡室美奈子(早稲田演劇博物館館長)出演:岸本加世子(俳優「あ・うん」、田澤正稔(「隣の女」プロデューサ――)、飯島俊彦(「冬の運動会」プロデューサー
無料ですので、この機会に名作を見て、創作の肥やしにしましょう。