引き出し
10月23日、シナリオ・センター代表の小林です。この歳になっても知らないことが多すぎるとしみじみ思います。
種子法ってご存知ですか。廃止になるならないで物議を醸しだしましたが、廃止すると在来のタネがなくなるとか・・・いまだによくわからないまま過ごしています。
「しあわせのタネ」というミュージカルが、11月21・22日東京の座・高円寺2で上演されます。
ジブリアニメ「かぐや姫の物語」「メアリと魔法の花」、青春映画「恋は雨上がりのように」、トランスジェンダーを描いた「女子的生活」(BSプレミアム)など話題作を、そして11月24日には山田洋二監督とタッグを組んで、スペシャルドラマ「遥かなる山の呼び声」(BSプレミアム)が放映されるなど幅広く活躍されている坂口理子さんが脚本を書かれました。
物語は、脱サラして新婦の実家の農業を継ぐという新郎に、新婦の祖父は大反対。
そんな中で結婚披露宴が行われようとしているところから始まります。
「おじいちゃんは、私たちが種から野菜を育てるのが気に入らないのよ」
え?野菜は種から育てるんじゃないの?作物はどうやって生まれるの?命は一体どこからくるの?
様々な疑問の中で若い二人のしあわせのタネは果たして実るのでしょうか。
切り口
「しあわせのタネ」は再演ですが、坂口理子さんは、4年前に在来種のタネの話をやりたい」とプロデューサー側から話をいただいたとき「全く興味のないテーマ、素材」だったそうです。
種子法廃止の動きがあったからかと思うのですが、プロデューサーは当初「もっと在来野菜のタネを守るべき」というようなものを書いて欲しい意向だったようです。
ですが、坂口さんは農業の対してもそれほど興味はなく、タネについても御存じないので、ご自分自身が根源的に興味を持っている「命」をテーマに、よい、悪いではなく「知ることが大切」というところにとどめた物語にしたいと申し出られてOKをいただいたそうです。
どこを描いてどんな物語にするか、観客をどう楽しませるか、作者の切り口ですね。
さすがに幅広い活躍をされている坂口理子さん、このお芝居も一味違ったものを創られました。
今回は、小田原(神奈川県)・鶴岡(山形県)・石岡(茨城県)そして東京の4つの地域で上演されます。 そこに坂口さんの驚きべき一味違う仕込みがありました。
一味その1 カップルの結婚式場が実際に上演されるホールで観客は、披露宴の列席者となります。しかもミュージカル。
一味その2 テーマは、在来野菜(その土地で昔からタネをとって育ててきた固有の野菜)です。なので取り上げる野菜が公演地によってかわります。 鶴岡の波渡(はと)なす、小田原の真ネギ、石岡の大豆。
一味その3 公演地ごとに披露宴に招かれた来賓は地元の方がやります。小田原:新婦のお母さんの親友の設定で市会議員さん、鶴岡:新婦が卒園生という設定で保育園の皆さん、石岡:新郎の先輩の設定で都会から新規就農した男性
という具合なので、テーマの野菜も違えば、土地の性格設定も違い、登場人物ももちろん違うのです。
で、どうなるかというと、4公演地4バージョンのシナリオを坂口さんが書かれたということです。
でも、この公演地に合わせてシナリオを変えるという大変な提案は、坂口さんご自身が出されたことだとか。
テーマがご当地の野菜ですから、公演地のお客様に添ってというのはすてきなアイデアです。しかも観客も一体化させる舞台ですから。
坂口さんにとっては過酷なお芝居ですが、プロデューサーの方は47都道府県でやる気だそうです。
坂口さんはご自分でご自分の首をしめられたと・・・。
もちろん、役者さんも公演地ごとに台本が変わるのでその都度セリフを憶えなくてはなりません。なんとたいへんな。お気の毒に。坂口さん恨まれているかも。(笑)
4バージョンは無理としても1バージョンでも坂口流切り口を楽しんでください。
一味にもうひとつプラスの隠し味は、お子様にお母さんたちにやさしい。
22日の14:00の部は小さいお子様連れOK。そのためにお子様連れ以外の方には、もしかしたらうるさいことがあるかもと、割引で見ていただけるようにしています。
11月21日19:00(全席指定5000円)22日14:00(全席指定3000円)と18:30(全席指定5000円)
シナリオ・センター事務局では、通常チケットからセンター割引きにて受付しています。