音の表現
シナリオ・センター代表の小林です。昨年2月に亡くなった森治美さんのお芝居を観に行ってきました。
実は、森治美さんの著作物については、ご本人の遺言でシナリオ・センターが権利関係を管理させていただいています。
今日拝見したお芝居は、もともと森治美さんは朗読劇として書かれたものでした。
「遊女~長き夜の夢~」 平成16年に森治美脚本演出で、内幸町ホールで上演されました。
その時は、「ぶれさんぽうず」という話芸舞台の朗読を研究されているアナウンサーの方などで構成されている女性だけのプロ集団が上演されました。
「ぷれさんぽうず」は亡くなられた放送劇作家の御大西澤實さんが主催され、Breath(いき・呼吸)&Pause(間・間拍子)こそが「音声言語表現の最も大事な基礎」ということで命名された集団名です。
西澤さんは、話し言葉(音声言語表現)には、「話・語・讀・誦」の4つの態があり、この基本が「ぶれす(呼吸)」「ぽうず(間)」だとおっしゃっています。
この「呼吸と間」は「生理と心理」「からだとこころ」に置き換えてみると理解しやすく、伝えるということは、単に話せばいい、言葉を発すればいいということではないということがわかります。
そんな西澤實さんの大切にされている話し言葉(音声言語表現)をラジオドラマの名手森治美さんだからこそ、朗読劇として命を吹き込むことが可能だったのだと思います。
お話は、明治の終わりの吉原。
遊女4人の親に売られてきた女たちの絶望的な苦しみ、吉原にいることしかできないやりきれない悲しさ、満たされない愛、女たちのそれぞれの境遇、想いを、女たちのいきざまを丹念に描かれていました。
朗読劇の時は、元アナウンサーの近藤サトさん始め4人の女性アナウンサーが情緒豊かに演じ、好評を得ました。
森治美との時間
それが今また蘇りました。
朗読劇をみられた佐々岡さんが感動され、是非ともお芝居にしたいと脚色されて、上演されたのです。
日本を代表する名優長谷川一夫さんの孫長谷川かずきさん、69連勝という不滅の大記録を持つ第三十五代横綱のお孫さんの穐吉次代さんなどが出演されています。
この脚色は、お芝居ですから、森治美さんの脚本では出てこなかった遊女の婚約者の男性などが増えたり、踊りなどもあり、朗読劇とは一味違った雰囲気になっています。
11月8日から11月11日まで、下北沢GEKI地下liberty(井の頭線・小田急線下北沢南西口下車徒歩3分)
03-3413-8420
形はもちろん変わっていますが、亡くなった後も森治美の作品は、様々な形で遺り、受け継がれていきます。作品を創るということは、創っただけでなく、他人に影響を与え、遺って行く・・・素敵なことだと思います。
森治美はいなくなったけれど、森治美の作品は生きている・・・嬉しい時間でした。