「シナリオのテクニック・手法を身につけると小説だって書ける!」というおいしい話を、脚本家・作家であるシナリオ・センター講師柏田道夫の『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
今回は作家になるための読書方法Ⅳ。柏田講師の読書量はものすごい数。しかもただ読んでいるだけではありません。ではどうやって読んでいるのか。今回ご紹介する「作家になるための読書方法」はこれまでのまとめにもなっていますので、このページを読むだけでこれまでの復習もできます。ぜひお手元に本を置いて実践してみてください。作家になるための“視点”を身につけていきましょう。
作家志望者は「盗む」つもりで読書をすべし
小説家志望者、つまり書き手になるための読書の方法のまとめです。
一般読者ならば、趣味として読書を楽しんで下さい。おもしろかったのなら、感動や余韻に浸りつつ本を閉じればいい。つまらなかったならば、さっさと忘れるに限る。より熱心な人ならば、ブログや読書ノートに感想などを残すかもしれません。
書き手たらんとする人は、それだけではもったいないのですが、一般読者的な楽しみ方も大事です。勉強とか分析のつもりで読んでも続きません。ただ、そうであっても頭の片隅に「盗む」という意識を残しつつ読んでいきましょう。
以前紹介した平野啓一郎さんの『本の読み方 スロー・リーディングの実践』(PHP新書)には、“一冊の本を、価値あるものにするかどうかは、読み方次第である。”と主張していて、“読書を今より楽しいものにしたいと思うなら、まずはそうした、書き手の仕掛けや工夫を見落とさないところから始めなければならない。”と述べています。
この本は一般読者向けに、より深く小説を味わう方法が記されていますし、もちろん実作者たらんと望む人にも役立ちます。
「盗む」ための読書法まとめ
それはそれとして、「盗む」ための読書法を具体的にまとめておくと、読む前にまず大まかな分量を確認します。短編と長編では作者のアプローチが違います。読み手もその作者の取り組み方を探りつつ小説世界に入っていく。
そのために長編ならば、何章で構成されているか?
章立てをざっと確認します。長編にも短編連作形式もあります。短編でも一、二、三というような小章立てもあります。
後は読み進めて行きますが、まず書き出し。どういう場面なり空間から入っていて、視点者と人称が誰かを把握します。
特に冒頭部分は、その物語の天(いつの時代、季節かなど)、地(設定、主たる場所や空間なのか)、人(主人公、視点者、脇キャラ)などを、作者がどのように描いているか、設定しているか、分からせているか?
それからは、文章表現やキーとなる小道具、場所、人物など、とにかく読み手であるあなたが、気になったところを傍線や囲みでチェックしていきます。
これのチェックも慣れです。あまりつけすぎると読み返しの時に乱雑になりますし、キーかなと思ったらさほどの意味はなかった、といった場合もあるでしょう。ともあれそうした読み方をしているうちに、自分なりのチェック法、基準が身に付いてくるはず。
特に「ここは!」と思った箇所(文章表現として卓越している、セリフが素晴らしい、場面としての見せ場などなど)は、チェックしつつ付箋をつけておく。
そして、読み終わったら、まずは一般読者と同じように、本を閉じて余韻に浸ります。それから時間を置いてもう一度開く。なるべく記憶の新しい内に再読をしますが、当然1回目と同じではなく、クライマックスや結末を知った上で、つまり全体像を俯瞰で意識した上で、チェックした部分を反復していく。
こうすると作者の意図や作品にこめたテーマ性と、それをどう物語として作っていったかがより見えてくるはず。もし、期待外の出来、読後感の作品であっても、「つまんなかったよ」と忘れ去るだけでなく、その前にざっと再読するだけで、そうなったのはなぜか? が分かれば「盗む」ことができるはずです。
作家志望者ならば、そうした気づいたことをメモ的に記しておくノートを作っておくこともオススメします。平野さんの本では、「音読」や「書き写し」はあまり意味がないと述べていますが、これは私はやり方次第だと思っています。
出典:柏田道夫 著『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(月刊シナリオ教室2016年8月号)より
★次回は2月2日に更新予定です★
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