プレゼンにも物語
シナリオ・センター代表の小林です。もうあと数日で12月、今年もラストスパートへとかかってきました。 来年は49年目。語呂合わせ好きのシナリオ・センターですが、四苦(49)八苦ではなく49(よく)できる年にしたいと思っています。(笑)
日曜日でしたか、何気にテレビを見ていたらNHKの「仕事の流儀」の再放送をしていました。
「すご腕ヒットメーカー 柴田陽子」
柴田さんはブランドプロデューサーとして、ブランドの立ち上げから見直しまで、彼女の手にかかるとヒットするというすご腕のプロデューサーです。
彼女の仕事ぶりを見ると自分の目で脚でとことんリサーチされ、「?」と思うとすぐに飛び出していき、企画も二転三転させながら、これぞというものに辿りつかせるのです。
そして、プレゼンテーションの時に、彼女はお客様の物語を作ります。
なるほどと思いました。シナリオ的発想で、ヒットを重ねていらっしゃるのです。
私が台東区商店会連合会で研修をさせていただいたのも、同じようにお客さんとのシナリオでした。
もうひとつ感心したのは、柴田さんは雇用するにあたって、気が利く人でなければだめとおっしゃっていました。気が利くというのは、想像力だからと。
想像力を広く大きく持っていれば、相手のこと、先のことを考えることができるからです。
それは気が利くに通じるのですね。
シナリオライターの仕事も全く同じ。なるほどと感心しながら拝見しました。
新米女医えすが異世界では活躍しています
想像力がないと書けません。異世界を描きました。
「新米女医ですが、異世界では、活躍しています!」(コスミック文庫α刊)
出身ライターの亜坂たかみさんの医者もの小説2作目です。
といっても医者ものといっても1作目はまったく違って現代の女医を描いた「医大生には真実がある」というミステリーでした。
今回は、SFファンタジーとなるのでしょうか。異世界に運ばれてしまった新米女医野乃花のお話しです。
新米女医としては、ちょっととろくて病院でもお荷物扱いされていた野乃花。
ある日、屋上で英気を養っていたら、青い光に包まれ、なぜか異世界へ。
異世界は、ガルバード王国といって、中世のフランスのようなところでした。
そこは、宮殿の偉い人以外、庶民は医者に診てもらうこともできない、女性は医者になることも許されないような世界。
そんな中で、黒髪の白衣姿で現れた野乃花は、スパイと思われ死刑にされそうになりますが、看守の命を取り留めたことから、国王の次男アレックス王子の計らいで宮殿のメイドとして働けることになります。
医療器具もなく薬もあまりない異世界で、メイド仲間や志の高い宮殿医師の助けで、医者として働けるようになった野乃花は、新米女医の経験と知識をフルに使ってたくさんの庶民を助け、毒を盛られたアレックス王子も助け、異世界へとなじんでいきます。
新米女医というところが、この小説のキーポイントです。
ベテランではない、しかも「医者に向かないナンバーワンドクター」といわれる優しくてのんびり屋で情にもろい新米女医というキャラクターが抜群です。
医療器具も薬もないところで、フルに教わったことを思いだしながら手探りで患者と対応していく。自分自身で一生懸命考えるところがチャーミングに描けています。
異世界というのはタイムスリップと違って、まったくの想像の世界を描かなければならないので、初めての経験の亜坂さんは悩まれたそうですが、見事に異世界を描かれています。
亜坂さんは、御主人もお嬢様もお医者様ということもあり、医療知識も正確ですし、先の柴田さんではないですが、想像力と知識を生かされて、前回書かれた医療ものも、今回も「医学に強い」というご自身の強みを生かして いらっしゃいます。
この本は、発売と同時に重版出来となり、シリーズ化も決定。すごいですよね、第2作3作と楽しみです。
亜坂さんのただのファンタジーでない、きちんとした医学に基づいたお話を展開してされていることがヒットされた秘密ではないでしょうか。
創作される方は、亜坂さんのようにご自分の強みをみつけ、活かしてほしいと思います。