脚本を書くことと小説を書くこと /出身ライター 福田裕子さんに聞く
ゼミの課題やコンクールに出すための作品を書こうと思っていても、「なんか気分がのらない…」というときもあるのでは?
そんなときは、シナリオ・センター1階や各教室に、放送クールごとに掲示している出身ライターの「連ドラ・アニメOA情報」をご覧ください。
脚本家志望の生徒さんからは、「いつか自分もココに名前が載るように頑張っています!」「この人も出身ライターだったとは!今の自分と同じようにここで勉強していたんだと思うとヤル気がでます」とお声掛けいただくことがあります。OA情報を確認するだけでなく、この掲示がモチベーションを上げるツールにもなっているようです。
こんな風に、ちょっと書く気が起きないときはこの掲示をご活用ください。
そして、脚本家志望のかただけでなく、小説家志望のかたもぜひご覧ください。
というのは、こちらにお名前が載っている出身ライターの中には、脚本だけでなく、小説(児童書も含む)を書かれているかたもいらっしゃるからです。
例えば、出身ライターの福田裕子さん。
近年では、アニメ『プリパラ』『アイドルタイムプリパラ』(2014~2018年・テレビ東京)、『カミワザワンダ』(2016年・TBS)、『プリプリちぃちゃん』(2017年・MBS)などの脚本をご担当。
今年2019年1月~3月期は、『キラッとプリ☆チャン』(テレビ東京)、『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』(TOKYO MX他)、『3D彼女 リアルガール(第2シーズン)』(日本テレビ)、『パッコロリン』『うちのウッチョパス』『少年アシベGO!GO!ゴマちゃん』(すべてNHK Eテレ)等々、子どもだけでなく大人も楽しめるアニメの脚本を沢山担当されています。
そして昨年2018年には、小説(児童書)『ないしょのM組』シリーズ【「あかりと放課後の魔女」「あかりの大事な宝物」/絵:駒形、企画協力:ぱらふぃんピジャモス/角川つばさ文庫】を発表。
新米魔女・魔法使いたちが学校の中で内緒に学ぶ、放課後だけの特別なクラス「M組」。 第1作目の「ないしょのM組~あかりと放課後の魔女~」では、自分が魔女だと知らない主人公のあかりがM組に転校してきて、魔女への特訓をされるところから始まります。
内容を少し聞いただけでワクワクしてきませんか?
公式サイトにある「みんなのかんそう」には、主に小学4年生~中学1年生の女の子たちから、
「いつも元気で明るい、あかりちゃんが頑張る姿を見て、応援したくなりました!」
「あかりちゃんの世界にまた行きたいです!ということは・・・続編!続編お願いしますぅぅぅぅぅぅぅ」
「ないしょのM組大好きです!また出るなんて神!!!!!!!!!!!!!」
――といった“声”が沢山掲載されており、読者の夢中度がよく分かります。
そこで今回は、この『ないしょのM組』シリーズについてと、
幅広い層から人気のアニメ『少年アシベGO!GO!ゴマちゃん』の脚本について、質問させていただきました。
なお、『月刊シナリオ教室』(2019年3月号/2月末発行)には福田さんのインタビューを掲載予定。この作品以外にもいろいろお話いただきましたので、今回ご紹介するブログと『月刊シナリオ教室』、併せてご覧ください。
『ないしょのM組』シリーズ【「あかりと放課後の魔女」「あかりの大事な宝物」】について
Q1:アニメの脚本以外に、なぜ小説(児童書)を書こうと思ったのですか?
〇福田さん:脚本家になることと同じぐらい、小説を書くことは子供の頃からの夢でした。
特に子供向け、女の子向けの作品を書きたい思いは、ずっと抱いておりましたが、良いご縁があって挑戦させていただくことができました。
また、脚本のお仕事でお世話になっているプロデューサーさんたちにも、「違うジャンル、作品を書いてみることが脚本の『幅』をひろげることにもつながる。じゃんじゃん書くといいですよ」と背中を押していただけたことも、とても大きかったです。
Q2:なぜこのようなジャンルを書こうと思ったのですか?
〇福田さん:「“魔女もの”を」、というのは編集担当者さんの熱いご要望でした。
あまりファンタジー寄りにはせず、読んでいる女の子たちの日常のすぐ隣にある魔女ものにしたいなという気持ちは、ご依頼いただいた当初から意識していたように思います。
大変有難いことなのですが、脚本家になって間もないころから現在にいたるまで、常に何かしらの女の子向けアニメ作品に関わらせていただいております。
登場人物、ひいては見てくれる女の子たちの気持ちに寄り添うこと、女の子たちのきらきらしたものを汲み取ることは、自分のライフワークのひとつだと思っているので、自然とこういった内容になりました。
Q3:他の脚本家の方々と一緒につくっていくアニメの脚本と、ひとりでお書きになる小説は、何か違いがありましたか?例えば、小説の場合は担当編集者のかたと話し合いながら作り上げていくと思うのですが、その際に感じたことなど教えてください。
〇福田さん:脚本家同士が連係して書くことにより、キャラクターたちの魅力も、物語の奥行きも重層的に深まっていく、アニメ脚本の世界が大好きであることが大前提ですが、ひとりで書かせていただける小説の世界は、とても楽しいです!
おっしゃる通り、担当編集者さんと二人で、会議やメール交換をさせていただく場合が多いことも新鮮でした。小説家としてのキャリアはないに等しい私であるにもかかわらず、こちらのやりたいことをとても理解、信頼してくださっているのを感じられ、お話しあいをさせていただくと、自然とぽんぽんとアイデアが湧きあがっていく過程は、この上なく楽しかったです。
担当編集者さんがプロデューサーのお立場だとするなら、作家は書くだけでなく監督的な仕事も兼ねているような感覚も持ちました。ゼロから作りあげた登場人物たちが、イラストレーターの駒形先生によって絵になったものを初めて拝見したときは、なんともいえない感動がありました。
「登場人物が命をもって動きだす」喜び、同時にひとりひとりを心から大切にしたいと思えた感覚は、小説だけでなく脚本においても、常に持っていたいとあらためて強く思いました。
Q4:登場人物のキャラクター設定について。読者が共感できる登場人物のキャラクターを作るために、どのようなことを意識されましたか?
〇福田さん:何よりも、「自分が友達になりたい/ファンになりたいと思う女の子」というのを意識しています。
これは、この作品に限らず、脚本においても、また悪役でもメインの登場人物ではなくても、いつも心がけているように思います。
あとは(女の子アニメのキャラクター作りで学んだことなのですが)細かい性格/プロフィール設定をしていく前に、まず「ラブリー系」「クール系」など、登場人物を『〇〇系』と一言で言えるものを作ってしまいます。
こうすると、登場人物のキャラクターがバッティングしませんし、お話が進んでいく中での、人物同士の化学反応も自然と起こしやすいような気がします。
アニメ『少年アシベGO! GO!ゴマちゃん』の脚本について
Q5:以前もアニメ化されており、老若男女・幅広い層から大変人気がある作品だと思うのですが、この作品に携わる際、心掛けていることはありますか?
〇福田さん:昔から大好きだったゴマちゃんに、関わらせていただけるなんて、本当に夢のようです!
沢山の方に愛されている作品だからこそ、私自身がゴマちゃんファンクラブの一員という意識をもって、「ゴマちゃん、かわいい!! 大好き!!!」を力いっぱいおしだすことに、全力を注いでいます。
Q6:「ココはぜひ注目してほしい!」というところを教えてください。
〇福田さん:原作の森下先生の持ち味である、「ゴマちゃんのかわいさと、シュールさのギャップ」は、アニメでも健在。キワを攻め続けていると思います。
Q7:思い出に残るご執筆中のエピソードがございましたら教えてください。
〇福田さん:10代のころ仲良しだった友人が、いつもノートのはしっこや手紙に、ゴマちゃんの顔を描いてくれていました。その友人が、お子さんと一緒に観てくれていると知ったときは、本当にうれしくて、書かせていただいてよかったと思いました。
また、放送1年目で提出してそのときは、採用にならなかったプロットが、3年目にして形になったこと。長く放送が続いていることにより、ゴマちゃんワールドが深まったおかげで、挑戦できることがひろがっているように思います。
最後に、脚本家を目指すシナリオ・センターの“後輩”にひとことメッセージを
福田さんは、課題で書いた20枚シナリオ(写真内・左)や、課題表(=ゼミで提出した課題のタイトルを記載したもの/写真内・右)を今でも大切に保管してくださっていました!
課題の裏に書かれた講師の感想も含め、読み返すたびに初心に戻れるのだとか。
そんな福田さんに、最後の質問。
Q8:脚本家を目指すシナリオ・センターの“後輩”にひとこと、声をかけるとしたら?
〇福田さん:好きなモノ・ヒト・コトを、大切にしてください。
脚本(ドラマ、映画、アニメ、舞台等)が大好きだから志していらっしゃると思いますが、その世界に足を踏み入れたとき、想像していたのとは少し違う部分に触れてしまい、「好き」が揺れ、ネガティブな気持ちを抱いてしまうこともあるかもしれません。
でも、それでも「大好き」という気持ちを持ちつづければ、良い出会いは必ずあります!
私もまだまだ学ぶことばかりですが、いつか良い作品、チームでご一緒できることを、楽しみにお待ちしています!
※角川つばさ文庫 公式サイト
■『ないしょのM組 あかりと放課後の魔女』の詳細はこちらから。
■『ないしょのM組 あかりの大事な宝物』の詳細はこちらから。
※そのほか脚本家・小説家・映画監督の出身生コメントはこちらから。
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