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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

たくさんの人と出会うことで、創造性が深くなる

私の裸(新潮文庫刊)

出会いの瞬間

シナリオ・センター代表の小林です。日曜日の説明会から、参加者の皆さんのご質問にメールで返事をしていて、今日ですべての方へのお返事を終えました。
いつも平均70名くらいの方々にお返事させていただくので、できる限り他の仕事は入れないで専念するようにしています。
事務局のスタッフもこの時は、余計なことは声かけないようにしてくれます。寂しい(笑)なのに、月曜日火曜日とライターズバンクなどの打ちあわせが入り、お返事し終わるのだろうかと心配だったので、今はちょっとホッとしています。
おひとりおひとりが、すべて違う方ですから、想いも疑問もみんな違います。
説明会でお答えできることといえば、講座の内容だとか、特徴だとか、フォローの仕方、受講料だとか、内容も時間も本当に限られてしまいます。
なので、おひとりずつにお返事することは大事なことではないかと思っています。
年代も違う、考え方も、暮らし方も違うおひとりおひとりに、どんな方なのかなあと想像しながら、お返事することはとても楽しい時間です。
子どもの頃、京都の女の子と文通をしました。どんな子なのかなあ、京都ってどんなところ、お手紙の中から想像しながらワクワクして文通を続けていました。(関係ないけれど今もです。)
その頃は、京都ってめちゃくちゃ遠いところにしか感じられませんでしたから、 お寺の中に家があるに違いないくらいの知識も教養もない10歳かそこらでした。
今はいい歳になりましたから、ある程度のことは知っていたり、小学校から大学までお教えさせていただいているので、年代的にも若い方のことも少しは理解できている大人になったとは思うのですが、でも、知らない人が知っている人になるかもしれない瞬間って、なぜか10歳の頃と同じようにワクワクするのです。
明後日は大阪校の開講で、関西の方々との新たな出会いも楽しみです。

私の裸

小説家の森美樹さんの「幸福なハダカ」が文庫化されました。
「私の裸」(改題・新潮文庫刊)
森美樹さんは、ライトノベルなどを書かれていましたが、5年間の休筆後、R-18文学賞読者賞を受賞、主婦の気持ちを描いた「主婦病」で一躍小説家としての地位を築かれました。
女性を描かせたら追従を許さないほど女性の心の襞を分け入った小説をお描きになります。
この「私の裸」は、単行本「幸福なハダカ」を改題して加筆されています。
最初に読んだ時も衝撃でしたが、もう一度文庫で読んでみたら、「私の裸」というタイトルの方がこの小説にはぴったりだと思いました。
単純に幸福といいたくない幸福感があるからです。

成長ホルモン分泌不全低身長症の朔也と彼の妻を含む4人の女性物語です。
いわゆる小人、大人として成長しているのに身長は大きくならない朔也。身長を伸ばすための治療を拒み、彼が選び取った人生でした。
子どもの頃から大人の男に弄ばれ続け「いい子の呪い」を持つ壮絶な生い立ちの鈴美、男性経験がなく鬱屈した気持ちを持ちながら張りつけた笑顔で過ごす介護士の冬美恵、雑誌記者として活躍しながら夫との愛を信じられずただただ尽くすだけの天音、豊かな生活ながら偽善的な親との生活に孤独に生きてきた朔也の妻理都子、自分を愛することができない女性たちが、朔也と接することで変化していきます。
朔也はいいます。
「自分が最高に自分のこと好きじゃなくてどうすんの、そんなの可哀想すぎるじゃん。自分で自分を愛せない人が誰を愛せるの。誰に愛してくれって言える?」
濃いキャラクターなのに、ここに登場する人間たちは、多くの人間が抱えている何かを持っていて、その痛ましさ、その強さ、その涙、その笑顔に共感を覚えます。
森さんのキャラクター造詣の深さに圧倒されます。
是非とも読んでもらいたい、見事な人生書でもあります。

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