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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

どんなに時を経ても

部長会議はじまります

人を想う心を

シナリオ・センター代表の小林です。3月11日東日本大震災から8年目、3月10日東京大空襲74年目を迎えました。
多くの方を失い、遺された人々の想いを、現実を、決して忘れてはいけない日です。
人が理不尽に亡くなる、殺されることは、どんなに月日が経とうと遺された人々の苦しみも悲しみも消えることはありません。
風化するのは、自分は関係ないと思っている周りだけです。
74年経った今もあの悲惨な状況を思い出すだけで震えが止まらない方々がたくさんいらっしゃり、あの日を想って涙されています。
まして東日本大震災はまだ8年、復興もほとんど進んでいない状態で、いわずもがなです。
秋篠宮殿下が追悼式で「今なお多くの被災者が被災地で、また避難先で、依然として不自由な暮らしを続けている厳しい現実があります。
とりわけ、いまだに放射線量が高いことなどによってみずからの家に帰還できない人々が多いことや児童および生徒数の減少、さらに根強い風評被害により農林水産業などへの影響が残っていることに思いを馳せると心が痛みます。
さらに、避難生活が長期化する中で、齢を重ねていく高齢者を始め、被災者の心身の健康のことは、深く心に掛かります。」とおっしゃっていました。
こと細やかに見聞きし、弱いものに寄り添おうとするお言葉だと思います。
安倍首相は「被災地の復興は着実に前進している」と述べ、「放射能漏れ事故を起こした東京電力福島第1原発周辺の帰還困難区域でも、避難指示解除への取り組みが進んでいる」と強調されています。
想像力というのは、他人を想う心だと瀬戸内寂聴さんはおっしゃいます。
人の上に立つ人間に想像力がないと、寄り添う気持ちも優しさも本気も感じることができません。
NHKの復興五輪に対する調査で「復興五輪は後押しになるか」の設問に、被災者の方々60%近くがならないと答えています。
復興五輪のかげで復興住宅も道路整備も遅々と進まず、原発汚染水の増加はとどまるところ知りません。
「復興五輪」の名前の意味はどういうことでしょう。福島から聖火が走って、被災地の復興が進んでいるところを見てもらう、復興と思うかどうかはそれぞれの認識の違いだから、そう思わない人もいても関係ないそうです。
であればよく見える形に、「復興五輪だったわ」と思えるように、五輪で落とされたお金はすべて被災地につぎ込んではいかがでしょう。まだ避難しているのに補助金を打ち切るなどしないで、オリンピックが終わるときには、元の生活に戻れるようにされたらいかがでしょう。
名前だけの復興五輪は、被災者の皆さんをより深く傷つけるだけです。
まだまだ復興の道は遥かです。少なくとも、元の生活に戻れるまでは、被災しなかった私たちは、さまざまな形で応援していかなければいけないと思うのです。
当事者と同じ想いは決して持つことはできませんが、心の痛みを少しでも想像することは誰でもが可能です。

部長会議はじまります

出身ライターの吉野万理子さんの小説が上梓されました。
「部長会議はじまります」(朝日学生新聞社刊)
吉野さんは、日本テレビシナリオ登竜門で優秀賞を受賞され、シナリオライターとして「仔犬のワルツ」(日本テレビ)でデビュー後、すぐに「秋の大三角」で新潮エンターテイメント大賞を受賞、小説家として小説、児童書など数々の本を書かれています。
昨年、久しぶりに描かれたラジオドラマ「73年前の紙風船」で、第73回文化庁芸術祭優秀賞を受賞され、これからまた脚本の世界でも活躍してくださるのではと、私はひそかに楽しみにしています。
吉野さんの小説も児童書もどのご本もとても映像的で、かつキャラクターが素晴らしいのです。
今回のお話も中学生の部活の部長たちがそれぞれの気持ちで動いたことがさらに事件を混迷させていきます。
それぞれの部長たちのキャラの見事なことと、ちょっとした事件が「ジオラマ」を使って、運動部はそれぞれのスポーツの特徴を使って絵として映像が浮かびます。
中学生のちょっとかわいい胸キュンに、若い痛みや、爽やかな友情が大人の私にも青春を思い出させます。
なによりも好きなのは、中学生の登場人物たちが、それぞれ悩み、己を苛んだり、友達を思いやり、泣いたり、怒ったり、喜んだりと、いきいきと生きていることです。
朝日中高生新聞の大人気連載小説というのもうなづけます。
そうそう、シナリオライターをめざす方には、吉野さんがデビューして間もない頃に書かれた「ドラマデイズ」(小学館刊)を、是非読んでいただけたらと思います。
勇気をもらえます。私の大好きな本の一冊です。

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