魅せる女
シナリオ・センター代表の小林です。先日亡くなられた樹木希林さんの考え方がとっても素敵だということで本になり、ベストセラーになっています。
私は、ほかの共演者を何気に食っている森繁久彌さんの「七人の孫」(TBS)の女中さん役で出演されている希林さん(そのときは悠木千帆さん)を拝見していました。
1960年代、戦後20年経つかどうかという時期で、ホームドラマが全盛期でした。戦争で家族を失った方が多かったからでしょうか、暖かい家庭の話が欲しい時代だったのかと思います。
そんなアットホームのドラマの中で、さほど出番が多くはないのに異質な感じが妙に受けていました。向田邦子さんの脚本がよかったからかもしれませんが。
樹木希林さんが遺されたことば 「おごらず、他人(ひと)と比べず、面白がって、平気に生きればいい」 心に響く言葉です。
いくら樹木希林さんが、すごい女性だとしても、この言葉を言えるまでにはたくさんの葛藤や対立を乗り越えて、ある意味悟られた言葉ではないかと思います。
なかなかこのようには生きられませんが、おごらないでいることは常に自分を戒めていればできるかと思います。
他人と比べずというのは、うらやましがらないということだと思います。
自分の利益だけを追う人々が多い中で、地に足をつけて、何が本当に必要なのか、自分はどう生きればいいのかをちゃんと考えられることは本当に難しい。
だからこそ、面白がって世の中を見ていることが大切で、そうすることで平気に生きていけるような気がします。
今、樹木希林さんのことばが、たくさんの方に感銘をあたえるのは、本当は希林さんのような生き方をしたいと思われているからでしょう。
「さすがだね」で終わらせずに、少しでも自分と向き合う縁(よすが)にできればよいのかと思います。
魅せるドラマ
映像表現の技術を使って、どれだけ魅せるシーンを作れるかということをサマーセミナーでやってみたいなと思っています。
シナリオ・センターではもちろんのこと、プロデューサーの方々も「キャラクターが大事」と誰もがおっしゃいます。
その次に大事なのは何か、ストーリーだと思われるかもしれませんが、ぶー!です。
ストーリーを構築するには、シーンの積み重ねですから、シーンが魅力的でないと、テレビであれば他の番組に変えられてしまいますし、映画であれば眠られてしまいます。
では、シーンとは何かです。シーンこそが描写なのです。映像描写、そこで誰と誰とが何をどうしているかを見せるのですね。
先月放送されていた岡田惠和さんの「ひよっこ2」をご覧になられたでしょうか。「最後から二番目の恋」はいかがでしょう。
こういう言い方をすると失礼ですが、岡田さんのドラマの多くは、ストーリーとしてはすごいことが起こるわけでもないのに、目が離せない、聞き漏らせないドラマです。
樹木希林さんが出ていらした「七人の孫」もそうです。何の事件も起こらないホームドラマだけれど見逃せない。
それは向田邦子さんが魅せるシーンを作っているから、樹木希林さんも森繁久彌さんも魅力的に惹きつけられるのです。
これが魅せるシーンです。情熱的なラブシーンや激しい闘争シーンだけが魅せるシーンではないのです。
そんな魅力的なシーンの積み重ねからできたドラマを書いていただきたいと思います。
そのためにはどのように学んでいただければいいいか、深く深く試案中であります。頑張ります。(笑)