忖度する
シナリオ・センター代表の小林です。相撲の千秋楽を見ていたら、トランプ大統領が升席にソファに座って観戦。どうみても升席にソファは合わない。
わずか5番しか見ないのだし、4人すわりは無理なら1人で座ってもいいですから、日本人がいつもやっている通りにしていただいて、日本の文化、国技を味わっていただくことがお互いの文化を知るためにも大事だったのではないでしょうか。
コミュニケーションの基本は、お互いの文化の違いを知ることから始まります。
土俵への階段はコミュニケーションの距離を表しているように見えてしまいました。
普段通り、日本にきたからには、「郷にいては郷に従え」とそれこそ日本文化を学んでいただくようにお願いできればよかったのに。
特に、表彰状を片手で渡す姿は、おめでとうの感じがせず、有難みがガタ減り。なぜ、ちゃんと表彰状の渡し方をお教えしなかったのでしょう。
なんだかまるでマッカーサーが日本へ降り立った時みたいに見えてしまったのは、うがちすぎでしょうか。
それにしても、トランプ大統領ばかりに焦点が当たって、せっかく三役にもいっていない平幕優勝58年ぶりという快挙を成し遂げた朝乃山関が気の毒で仕方ありませんでした。本当に優勝おめでとうございます。
久々にしっかりとテレビを見ていたら、しこ名にルビが振られていました。いつからなのでしょうか。ご存知の方も多いのかもしれませんが、私は初めて見つけてひどく感激しました。
昨今のお相撲さんのしこ名、外人さんが増えていることもありますが、案外キラキラネームぽくって、どう読むのかわからないものが多いので、ありがたいです。
昔は、朝乃山のように、なんとか山、川、海、花、里とかがほとんどでした。
時代の流れは、しこ名にもでているし、ソファで目クジラ立てるな!といわれそうですが、女性が土俵に上がれないのには意味がある、伝統を重んじる相撲協会だからこそ、頑張ってほしかったなぁ。内館さんがちゃんと研究してくださったではありませんか。
ここまでなし崩しにするなら女性も土俵に乗せてよってつい言いたくなり ます。内館さんのご意見をお聞きしたいです。
忖度しない
出身ライターの北川哲史さんの新しい時代小説シリーズが始まりました。
「名奉行筒井政憲異聞 駿河の海」(光文社時代小説文庫刊)
帯に「公平無私の名奉行に『忖度なし』こんな奉行を待っていた!」と書かれています。
まさに、今の時代に生きていてほしいようなお奉行様の誕生です。
長崎奉行だった筒井和泉守政憲が、正月明け任地に向かうため品川宿までついたところ、「即刻江戸城へもどれ」との命、びっくりしながら単身馬でかけつける。
下田に英国の船が来航し通商を迫っているという。どうしていいかわからない幕閣たちの代わりに見事英国との折衝を切り抜けた政憲は、時の老中首座水野出羽守に頼られ、江戸奉行伊賀守に任命される。
そして、行方知れずの幕臣の奥方の探索、伊能忠敬の地図略奪事件、江戸をにぎわす河内山宗春の捕り物劇など次から次へと難事件を解決していきます。
その解決の仕方が見事です。
剣も強いがそれ以上に心根の強い他人の気持ちを慮れる性格。 奉行として、黒白をつけなくてはいない立場ですが、部下の意見も、罪人とされる人たちなどすべての人々の声をよく聞き、その上で、常に自分の責任で判断し、四方八方に目を配り人情味溢れた名裁きをしてくれます。
部下のキャラクターもそれぞれ変わっていて、そのキャラだからこその動き、セリフに魅せられます。
なにより、スカッとするのは、絶対上司の(笑)老中首座の水野忠成に対しても一歩も引かずに、忖度もせず悪いものは悪いということをきちんと論理的に述べ、納得させてしまうこと。 どうしても目の前のところでしか見ない、考えない上役に、その裏であったり先にあるものをきっちり想像し、見せていくので、グーの根も出ないのです。
剣戟もうすごいですが、それよりは人の心を奥を探る、それも慈愛をもって探る姿勢が何とも言えません。
最後の章、河内山宗春とのからみは、この先どうなるのか、江戸中をうならせるような面白い展開になりそうで、次のシリーズが待ち遠しいです。
ああ、本当に今欲しい、こういう人が一人でも日本の中枢にいたら、日本はここまで悲しい国にはならないのではと思わせられます。