シナリオ・センター出身の脚本家・ライターの大前智里さん。ライターズバンク(※)でのコンペを経て、ドラマデザイン社シナリオインキュベーションに参加し脚本家デビュー。
これまで脚本・脚色を手掛けた主なドラマは、『松本清張ミステリー時代劇』(2015)、『山本周五郎人情時代劇』(2015・2016)、『男と女のミステリー時代劇』(2016)、『マネーの天使~あなたのお金、取り戻します!~』『遺産相続弁護士 丸井華』(2016)、『山本周五郎時代劇 武士の魂』(2017)、『小説王』(2019)など。なお、『山本周五郎時代劇 武士の魂』では、大前さんが執筆された第1話「大将首」が平成29年日本民間放送連盟賞番組部門<テレビドラマ番組>優秀賞を受賞。
物語の構成を丁寧に組み上げていくチカラが現場で高く評価されており、現在注目されている脚本家のおひとりです。そんな“今”に至るまでの道のりについて、『月刊シナリオ教室2019年8月号』(7/26発行)でお話しいただいております。また掲載に先立ち、ブログ用のコメントとして、脚本家志望者にとって大切なことをお話しいただきました。
例えば、「脚本コンクールで賞をとらない限り、脚本家にはなれないのかな…」とお悩みのかたは、【私は、「コンクール受賞者も、結局プロットライターとしての下積みを経て、脚本家になることが多い」という話を聞いて、この“コンクール受賞”の部分をすっ飛ばして、早々とプロットライターになりました】という大前さんの言葉が参考になると思います。この他、脚本家志望者に響く言葉を沢山いただいております。『月刊シナリオ教室2019年8月号』と併せてご覧ください。
「シナリオ・センターのライターズバンクを活用しました」
――先日最終回を迎えたドラマ『小説王』では、脚本家としてどんな“収穫”がありましたか?
〇大前さん:『小説王』は、原作がとても面白くて、セリフも名言だらけで、「ここは重要」と思うところに付箋を貼っていくと本が付箋だらけになってしまって……。でもドラマにする時は、もちろんドラマの見せ方というのがあって、原作の面白さをそのまま持っていけない部分も多いし、ドラマならではの面白さを足していかなければならないし、大変だなあ~~~と思いながらやっていました。
「収穫は」と言えば、私は当初、脚本家としてではなく、プロットライターとして参加させてもらっていたのですが、脚本家の方々の執筆スケジュールがとてもタイトだったため、運よく私も脚本まで書かせてもらうことができました。ほかにも収穫は盛りだくさんにありますが、本作品に参加できたこと自体がとてもラッキーでした。
――これまで色々な時代劇の脚色を担当されている大前さん。研修科ゼミ最後の課題が「時代劇」で、また、「時代劇を書きたい」という生徒さんが沢山いるのですが、時代劇を書くとき、どんなところを特に気をつければいいでしょうか?
〇大前さん:私も特別に造詣が深いわけではないのですが、ドラマを見る人、聞く人が、白けない程度の知識を持っておくことは大事だと思います。その時代のことをよく知っておいた方が、人物造形やセリフ、アイデアに、幅が出てくるように思います。
とはいえ、初めは調べることにあまりとらわれすぎず、書きたい部分について、ピンポイントで調べるだけでも、いいと思います。
私は、いいアイデアが出ないときに、時代背景や小道具について深く調べることに頼っていたりしました。そうすることで、“目新しいこと”“面白そうなこと”を発掘したりしていました。
――脚本家として活動されている今、シナリオ・センターで学んだことで役立っていることはありますか?
〇大前さん:シナリオの基礎を学んだこと、また、書く習慣をつけられたことが、一番大きいです。
それ以外では、シナリオでもプロットでもなんでも、“人に見てもらって、意見をもらって、直す”また“人の作品に対して、意見を言う”トレーニングができたことです。これらのことは、オリジナルを書くときや、原作を脚色するときに、とても役に立っています。
――脚本家志望の “後輩”に向けてメッセージをお願いいたします。
〇大前さん:コンクールに受からなくても、チャンスを自分で拾いに行くようにすれば、チャンスはいくらかあると思います。
とにかく、“脚本家デビュー”するには、「プロデューサーから『脚本を書いて』と発注してもらうこと」が必要です。そのためには、プロデューサーと出会わなければなりませんし、「書かせよう」と思ってもらわないといけません。そこに至るまでの方法は、いろいろあると思います。
テレビ局が主催するコンクールなどに入賞するのが一番手堅い方法だと思うのですが、私は、「コンクール受賞者も、結局プロットライターとしての下積みを経て、脚本家になることが多い」という話を聞いて、この“コンクール受賞”の部分をすっ飛ばして、早々とプロットライターになりました。
プロットライターになるためには、シナリオ・センターの「ライターズバンク」を活用しました。自分でいきなりプロデュ―サーに持ち込み営業するよりも、ライターズバンクのコンペに受かって、徐々に人脈を広げていく方が、私には楽な方法でした。そして、プロットライターとしてさまざまなプロデューサーのもとで企画書を書かせてもらううちに、自分の能力を引き出してくれる、ありがたいプロデューサーと出会うことができ、結果、脚本を書くチャンスをたくさんいただくことができました。
運や縁に左右されることも多いのですが、脚本家デビューに至るまでの方法は1つではないので、自分の挑戦しやすい方法を見つけて、継続してやっていくことが大事だと思います。
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