「シナリオのテクニック・手法を身につけると小説だって書ける!」というおいしい話を、脚本家・作家であるシナリオ・センター講師柏田道夫の『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
今回は、コンクールに応募する際の心得について。柏田講師は「自分に合った、挑戦できそうなものを選んで、ある程度の傾向を探りつつ、きちんと準備をして挑むべき」といいます。「いやいや、当たり前のことでしょう」と思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、こういった準備をしないかたも少なくないのです。小説でも脚本でも「コンクールに出そう!」と思っているかたは、柏田流の心得をぜひ実践してください。
小説もシナリオも コンクールに出すなら きちんと準備を
小説のコンクールは年間を通しても多種多様、実にたくさんあります。
以前、おおざっぱにシナリオコンクールに比べると10倍はあるのでは、という印象を述べました。
小説もシナリオもそれぞれで枚数や条件が違いますので、自分に合った、挑戦できそうなものを選んで、ある程度の傾向を探りつつ、きちんと準備をして挑むべきでしょう。
ただ、この「傾向を探る」というのを誤解しないように。例えばシナリオコンクール「フジテレビ ヤングシナリオ大賞」は、若い視聴者を意識して、いわゆる月9ドラマみたいな恋愛ものを書けばいい、といったことではありません。どのコンクールでも、自分の書きたいテーマなり題材を見つけ、できるだけこれまで書かれていなかった作品をぶつけた方が受賞に近づきます。
それはそれとして、これまでにどのような受賞作があって、どこが評価されたのかを知る。きちんと数年分くらいの受賞作を読むことは、最低限の「傾向を探る」ことになります。私の印象ですが、シナリオも小説もコンクールへの挑戦者は、自分が出そうとする賞の受賞作をほとんど読んでいません。
ただ、メジャー系のシナリオコンクールの場合は、割とちゃんと受賞作を読んだ上で応募する人が多いように思います。それだけ大きなシナリオのコンクール数が限られているからでしょうか。
ですが小説の場合は、まさに『公募ガイド』をパラパラ見たり、ネットで検索して、ちょうど応募している賞に、枚数が合うとか、書けそうだと思って応募する、という人が圧倒的に多い気がします。
受賞作の未読応募者は「落選」します
こういう「読まずに応募だけ」という人は、シナリオも小説も(数年に一度だけ現れる天才的な書き手を除き)、片っ端から落選します。
ですから、あなたが自分は「数年、数十年に1人だけ」の天才作家だ、と思うのでしたら、受賞作だけでなく古典とかも読まなくてもいい。むしろ読まないことが武器になって、たちどころに受賞して作家デビューするはずです。
ともあれ小説の賞ですが、どこを目指すかでアプローチが違ってきます。
売れっ子作家を目標として、メジャー系の賞を目指すならば、長編を書く体力をつけつつ、勝負できるだけの題材、テーマを見つけ、かなりのエネルギーや時間をかけて挑むことが必要となります。
ジャンルとしてはやはりミステリー。さらには恋愛物、時代・歴史小説、ホラーといったエンタメ系でしょう。
童話や児童文学もコンスタントに募集があります。また近年では特に門戸が開かれていて、新しい書き手が求められているジャンルはライトノベル(ラノベ)です。ミステリーに加えてファンタジーや青春小説がメイン。
純文学系は募集としては短編が多く、200枚くらいまでの中編もあります。こちらも、いわゆる芥川賞に直結する大手出版社の文芸誌が募集するメジャー系と、地方の自治体や団体が主宰する文学賞があります。
さらに単発での募集やショートショートもあります。こうしたマイナー系の賞は受賞しても、すぐに出版化されて本屋さんに著書が並ぶ、ということはまずありません。
けれども腕だめしには、こうしたマイナー系の文学賞をオススメします。特に初心者、文章的な修業がまだまだ必要だと自覚している志望者は、いきなり長編はリスクが多すぎます。
ショートショートや短編と長編では、小説の構造や手法も当然異なりますし、書き手も取り組み方が違ってきます。それはそれとして、通用する文章、その人だけの文体を磨くレッスンとして効果的ですし、物語の構造を学ぶこともできます。さらに毎回違う物語を書くことで、発想の訓練にもなります。
当然マイナー系でも受賞は容易ではありません。以前の受賞作を探し出して、できるだけ読んだ上で挑戦しましょう。
出典:柏田道夫 著『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(月刊シナリオ教室2017年9月号)より
★次回は8月3日に更新予定です★
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小説家・脚本家 柏田道夫の「シナリオ技法で小説を書こう」ブログ記事一覧はこちらからご覧ください。比喩表現のほか、小説の人称や視点や描写などについても学んでいきましょう。
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