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映画『 五億円のじんせい 』を書いて/脚本家 蛭田直美さん

映画『 五億円のじんせい 』/ 応募企画343件の中からグランプリに

GYAOとアミューズが新時代を担う新たな才能の発掘を目指し開催した、監督(オリジナル映画企画)・俳優・ミュージシャン、オーディション発掘プロジェクト「NEW CINEMA PROJECT」。

「監督(オリジナル映画企画)」部門の応募総数は343件。その中から第1回グランプリ作品に選ばれたのが、出身ライター蛭田直美さんが脚本を担当し、映画監督の文晟豪さん(ムン・ソンホ)とタッグを組んだ『五億円のじんせい』。7/20(土)から全国順次公開となります。

【あらすじ】
幼少期、善意の募金五億円により難病から命を救われた少年。 健康に成長し高校生になった彼を待っていたのは、周囲からの期待や、マスコミに晒される窮屈な青春だった。空虚な日々を過ごしていた或る日、とある出来事をきっかけに彼は生きる意味を見失い、SNSで自殺を宣言。そこへ見知らぬ誰かからメッセージが届く。<死ぬなら、五億円返してから死ね>。家を飛び出し、お金と人生に向き合う波乱の旅が始まった――。

「NEW CINEMA PROJECT」の公式サイトでは、本作がグランプリとなった決め手について、【独自の切り口を持ち、登場人物の持つ強いエネルギー、そしてエンターテインメント作品としての広がりを期待させてくれた】とコメント。

さまざまな映画祭でも高い評価を得ており、上海国際映画祭パノラマ部門に正式出品したほか、愛媛国際映画祭のコンペティション部門でグランプリを受賞、New York Asian Film FestivalのCompetition部門ではSpecial mentionに選出されています。

そんな大注目の映画『五億円のじんせい』について、蛭田さんにお話をお聞きしましたのでご紹介。なお、『月刊シナリオ教室2019年9月号』(8/28発行)には蛭田さんのインタビュー記事を掲載予定。自分が脚本を書くときの参考になる創作のヒントが沢山詰まっています。併せてご覧ください。

「オリジナルを考えるときはストーリーより人物設定から」

――今回、なぜ『五億円のじんせい』を書こうと思われたのですか? 本作の公式サイトに掲載されている【自分を押し殺して生きてきた少年が初めて自分で見つけたやりたいこと、それが「五億円返して死ぬ」ということだった】というあらすじの一文を読んだだけで、とても引き込まれます。作品に込めた想いや心掛けたことなども併せて教えてください。

〇蛭田さん:とても嬉しいお言葉、どうもありがとうございます!

以前、ライターズバンク()でご紹介いただき、何度か執筆させていただいた『99のなみだ』という短編小説のシリーズがありまして、それが結構短いスパンで書かせていただけていたため、常にネタのストックを持っている必要がありました。

私は大抵、オリジナルを考えるときはストーリーより人物設定から考えるので(はっきりとした葛藤のある人物設定が見つかれば、ストーリーは自然と立ち上がってくると思っているので)、正確には『何本か』ではなく『何人か』で、その中の一人が、『子どもの頃五億円の寄付で命を救われ、健康に大きくなった少年が、五億円にふさわしい人生を送らなければ、と自分を偽って生きているが、行き詰る』という、『五億円のじんせい』の主人公・望来(みらい)でした。『99のなみだ』が終わってしまったため、彼を外に出す機会をなくしてしまっていたのですが、今回、とても幸運な形で実現することができました。

実際に望来のような境遇を持つ方は稀だとは思いますが、周囲の期待に応えるために自分を偽ってしまっていたり、自分の望む生き方より周囲の望む生き方を選んでしまう、そんな『優しさに道を阻まれている人』は沢山いると思っています。

また、なぜ生きているのかわからなくなってしまうことはきっと誰にでもあって、私自身、何度も何度も考えてきたことです。今後、また変わっていくこともあるかもしれませんが、今の時点で出した答えを書きました。

気を付けたことは、実際に望来と同じ境遇の方と、その方を支えた方々がこの映画を観てくださった時、傷ついたり、否定されてしまったように感じるようなことがないように、ということです。それだけは絶対にあってはいけないので、本打ちの時も、プロデューサーや監督と慎重に確認し合いました。

※You Tube
アミューズ公式チャンネル
映画『五億円のじんせい』90秒本予告/7/20より全国順次公開!より

「面白いオリジナル企画は、より“待たれている”」

――オリジナルの企画を作るにあたって、「今回はこんなことが新たな発見だった」「こういうところを再認識した」というエピソードがございましたら教えてください。

〇蛭田さん:脚本というのは脚本家一人で書き上げるものではなく、本打ちを通してプロデューサーや監督の意見やアイディアや希望(予算的なことも含めて)を取り入れながら作っていくものだということはわかっていたつもりだったのですが、オリジナルだと、どうしても自分の主張が強くなってしまう、ということは発見でした。

私はとても幸運なことに、今までいただいたお仕事はオリジナルが多かったのですが、あくまで提示された『企画』があってのオリジナルでした。

でも今回はそれがなかったので、つい、「この作品やキャラクターについて一番よく分かっているのは私」という気持ちが強く出すぎてしまった時があったと思い、それは大きな反省点です。もちろん、そういう気持ちも大切だと思うのですが、仲間の意見を聞けなくなってしまうのはマイナスでしかないですから。でも、愛情は誰よりも持っているべきだとも思っています。正しく愛情を持てていれば、作品やキャラクターをよりよくするための意見やアイディアは一つでも多くいただきたいと思うものだと思うので……。

今回、とても強く感じたことは、プロデューサーや監督、スタッフもキャストも、「オリジナルをやれる」ということをとても喜んでくださり、張り切ってくださった、ということです。「オリジナルをやりたい!」という気持ちをとても強く持っている方は多いです。確かに原作ものの方が企画が通りやすくはあると思うのですが、より待たれているのは、面白いオリジナル企画の方だと感じました。

――脚本家として活動されている今、シナリオ・センターで学んだことで役立っていることはありますか?
〇蛭田さん:沢山あります!運命と宿命、葛藤、対立、小道具……。私なりに実践してみたつもりです。ぜひ確かめていただければ……(宣伝してしまいました、すみません(笑))

――シナリオ・センターの“後輩”に向けて、ぜひメッセージを。

〇蛭田さん:受賞やデビューなど、チャンスの手ごたえをつかめるまでは、キャッチャーがいてくれるのかもわからない暗闇に向かってボールを投げ続けるような気持だと思います。(その気持ち、私とってもよく知ってます)。

でも、キャッチャーはいるんです。必ず。投げて投げて投げ続けていれば、いつか必ず受け止めたボールを投げ返してくれます。その日は本当に突然やってきます。だから、どうか投げ続けてくださいね。お会いできるのを心から楽しみにしています。

ライターズバンクについてはこちらをご覧ください。 

・シナリオ・センター出身の脚本家・小説家・映画監督の方々のコメントを掲載している記事『脚本家・小説家コメント記事一覧/脚本や小説を書くとは』はこちらからご覧ください。 

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