8月は
シナリオ・センター代表の表の小林です。8月はどうしても、戦争のことから頭が離れません。
まして、アホのように戦闘機だのイージス艦など買い漁る(買わされている)我が政府の驚くような行動に、戦前に帰ったような怖さを感じているのは私だけではないと思います。
戦地へと駆り出され、多くの男たちが無意味な戦いのために、銃弾で、飢えのために、命を落としました。
焼夷弾を浴びて市井の人々、女子供たちが焼き殺されました。
最後の砦とされた沖縄は、軍の、日本の犠牲となりました。そして今もなお日本の70%以上の米軍基地を担い続いています。
原爆を投下され、多くの市井の人々が命を落とし、現在も苦しみ続けています。
毎年、私たちは誓います。「二度過ちは起こしません」と。
本当にそう思っているのでしょうか。
私たち日本人は、常に戦争について、戦争の悲惨さ、無意味さについて語り続け、向き合わないといけないと思うのです。
8月には、反戦ドラマがよく放映されていましたが、ここ数年めっきり減りました。
戦争がなかったふりをすることでもなく、慰安婦がいなかったことにすることも、大虐殺がなかったことにすることも、真実を見つめようとする目がなければ「過ち」をまた犯します。
みたくない過去もあるでしょう。知りたくない過去もあるでしょう。でも、それでは戦前への道へと進んでしまいます。
過去にきちんと向き合い、自分本位の想いだけではなく、相手のことにも思いをはせることができる大人が増えてほしいと思います。
この十数年で、戦争を知らない子供たちばかりになります。だからこそ、知らないで済むことではないのだということを語り継がなくてはいけないのだと思います。
遥かなる旅 蝶の道
終戦記念日特集で、出身ライターの吉野万理子さんがラジオドラマ「遥かなる旅 蝶の道」を描かれました。
8月8日(木)NHKラジオ第一 22:05~22:55(全1回・50分)
8月10日(土)NHKFM 22:00~23:00(全1回・60分)
放送されます。
昨年、風船爆弾を現代に生きる孫を通して描かれた「73年前の紙風船」で文化庁芸術祭ラジオドラマ部門優秀賞を受賞された吉野さんですが、今年はどんなお話を描かれたのでしょうか。
瑠衣はバイク雑誌御編集者。ある日の編集会議で、「終戦の日特集」として、戦跡をオートバイで巡る旅を掲載しようと編集長がいう。
それは彼女の恋人・三嶋拓也が企画し、果たせなかった特集だった。
拓也は日本中の戦跡をオートバイで巡る旅を取材していたが、3ケ月前突然死んだ。
その企画を瑠衣がやることいなる。
出発点の蔵王は、戦時中、寒冷地での軍用機研究が行われていた。
そして、毎年、蝶が乱舞することで有名だった。日本で唯一「渡り」をする蝶アサギマダラだ。
そのアサギマダラを追いながら、かっての戦争の痕跡を巡るバイクの旅にでる。
戦跡をたどりながら、恋人の死因に悩む瑠衣。
旅先での人たちとの出会い、ふれあいの中、長野の伊那、奈良生駒山、大分の姫島と進み、そして恋人が死んだ世界で一番美しい奄美の海岸にたどり着いたとき・・・。
吉野万理子さんのラジオドラマは、前回の「73年まで紙風船」もそうですが、戦争と真正面に向かい合うのでなく、きれいな蝶などをつかって、より戦争の恐ろしさ、悲惨さを描き、戦争がもたらした人々への心の傷を描き出します。
小説家の吉野万理子さんならではの、人間の心底をのぞき込むような深い創り方にように思います。
人にはそれぞれの正義があります。
さりげなく、密かに戦争へ向かう足音が聞こえてくるような昨今、吉野さんのラジオドラマを通して、ご自分の想いに目を向けることは必要なのだと思います。
しっかりと戦争の道へと進ませない知恵と力を蓄えていくことが大人の責任ではないでしょうか。。