原爆

シナリオ・センター代表の小林です。広島原爆記念日です。
また犠牲になられた方のお名前が5068名増えました。32万人の被爆者のお名前が慰霊碑に奉納されています。
被爆から74年経った今もなお原爆で亡くなられる方がいらっしゃる・・・原爆の怖さがこれ以上伝わるものはないのではないでしょうか。
広島原爆記念館の残る被爆した方がたの写真や着物などを見て、ショックは受けても過去のことと捉えがちです。
でも、過去ではない。
過去ではなく現在も続いている苦しみなのだということを私たちはもっと知らなくてはいけないのではないでしょうか。
被爆者の方は「今でも頭の中にあの惨状が残っている」とおっしゃいます。
まざまざと目に浮かぶだけに、つらすぎて、他人には語れなかったとおっしゃる方も多いと聞きます。
口に出すのもつらいほどの経験をされているのです。
それが、戦争であり、原爆であるのです。
核兵器禁止条約の署名、批准を求める被爆者の方々の想いを私たちもしっかりと受け止めなくてはなりません。
原爆の恐ろしさ悲惨さを知っているからこそ、本当に心から願われていることなのです。
安倍総理は、記念式典で「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努める」と宣言されました。
嘘でもなくきれいごとでもなく本気で立ち向かって欲しいものです。

どんな正義であれ、人が人を殺すことは、あってはならないことだということを、人間として訴えてほしいと思います。
8月9日は、長崎原爆記念日です。黙祷とともに本気で「ノーモア広島・長崎」を現実のものにしていくことが、私たち「戦争を知らない子供たち」だからこそ、遺されたものとしてやるべきことではないでしょうか。

紅土に散りゆく

少なくなったとはいえこの時期は、戦争ものを、映画、テレビ、演劇と様々なジャンルで見せてくれます。
山崎貴監督の「アルキメデスの大戦」が話題になっています。
国家予算の浪費でしかないと戦艦大和の建造を阻止するために、山本五十六の意を汲んで数学者が数学で納得させようというお話です。
山崎貴監督は「戦争前夜のような今だからこそ作らなければならないと思った」とおっしゃっていました。
国家予算の浪費を今すぐにでも止めたいものです。

出身ライターの松本京さんの脚本の「紅土に散りゆく」9月3日から8日までウッデイシアター中目黒で上演されます。
松本さんは、2014・16年と特攻隊のお話を「天泣に散りゆく」を上演されました。
史実に基づいたお話で、妻とともに特攻機に乗り組み、ともに散っていった夫婦を描きました。
今回は、戦場で玉砕した慰安婦と兵士に愛の物語です。
「紅土に散りゆく」も史実に基づいてつくられたフィクションです。

昭和19年、中国雲南省騰越（とうえつ）の地では中国軍の総攻撃が始まっていた。
最前線の真島大尉の部隊は、2日後には総攻撃を受け部隊は間違いなく壊滅することに。
「玉砕あるのみ」それが真島の出した答えだった。玉砕を前に看護婦や慰安婦を呼び寄せ後退するように命じるが、女たちは「一緒に戦いたい」と志願した。女たちの運命は、生き延びることはできるのか・・・。

前回の特攻隊の夫婦も、慰安婦と兵士も、戦争がなかったら二人がともに散ることもなく、死でしか愛を全うできない人生などはなかったはずです。
戦争は、人間のすべてを崩壊させます。
このお話は、あいちトリエンナーレで問題の慰安婦とは違いますが、現実に韓国だけでなく、日本にも中国にも慰安婦は存在していたわけで、その過去をなしにすることはできません。
戦時中に李香蘭と呼ばれていた女優として活躍されていた山口淑子さんも、戦後国会議員になって慰安婦問題に取り組まれていらっしゃいました。それはご自分が李香蘭という女優として戦争昂揚映画に出演し、戦争の加担した贖罪の意味があったと言います。
心ある人は過去をきちんと見つめて、将来のために何をすべきかを考えます。
小林正樹監督が5年の歳月をかけて監督編集をされたドキュメンタリー映画「東京裁判」がデジタルリマスター版となり、上映されています。
「戦争を知らない子供たち」が圧倒的に増えてきています。
知らないから知らないままでよいのではなく、知らないからこそ、様々な書籍や映画、ドラマ、体験者の声をお聞きして、共感であったり、異論であったり、どんな形にしろ、自分自身の考えを持つことが必要なのだと思っています。
8月、私たちは未来のために過去を知りに行きましょう。