脚本家洞澤美恵子さん/『それぞれの断崖』を脚色して

現在、毎週土曜日放送中のドラマ『それぞれの断崖』(CX)。
原作は小杉健治さんの同名小説（集英社文庫）。
脚色を手掛けたのは、シナリオ・センター出身ライターの洞澤美恵子さん。

『月刊シナリオ教室 11月号』(10/28発行)に洞澤さんのインタビューとドラマ『それぞれの断崖』のシナリオを掲載いたします。それに先駆けて、ブログ用にもコメントをいただきましたのでご紹介。

ドラマ『それぞれの断崖』の執筆エピソードの他、【20枚シナリオの課題はそれぞれに深い意味があると、現場に出てよく分かった気がします(洞澤さん)】等々、脚本家志望の生徒さんにとって、大変為になるお話もしていただきました。是非参考にしてください。

まずはドラマのあらすじから。

“被害者の父と加害者の母”
ドラマ『それぞれの断崖』あらすじ

家庭内暴力をふるう不登校の中学生が殺害された。加害者は13歳の同級生。殺人を犯しても少年法で守られていて罪には問われない。

悲劇の夜、「被害者の父」は酒に酔い、怪しげな店で遊んでいたことが発覚。妻や娘たちに恨まれ、警察からも疑いをかけられる。加えて、加害者少年への怒りを爆発させたことで、人でなし呼ばわりされ、世間からの容赦ないバッシングを受ける。職を失い、家族の絆が綻び、やり場のない怒りを抱えた「被害者の父」。生きる支えは、息子の無念を晴らすこと。

矛先を向けたのが「加害者の母」で、儚げな美しさをもつ、シングルマザーだ。法律に守られた少年の行方や、殺人を犯す少年を育てた母親の動向を知るために、怒りと復讐心から己を偽り近づいてゆく (東海テレビ公式サイトより)

※You Tube
tokaitvbroadcasting
オトナの土ドラ「それぞれの断崖」最終話　9月21日（土）夜11時40分放送

「特に『魅力ある人物』はシナリオの原点」

――小説『それぞれの断崖』は、少年犯罪の被害者家族と加害者家族の愛憎や葛藤を描くという、とても複雑なテーマ。脚色するにあたってどんなことを意識されましたか？

〇洞澤さん：複雑な心理のハナシだけに、思いの丈を伝えたくてどうしても書き過ぎてしまいがちで、セリフもト書きも出来るだけシンプルに、と心掛けました。

それでも、時に書き過ぎてしまうことも多く、迷路に迷い込むこともしばしばでした。そのたびにプロデューサー諸氏に、軌道修正をして戴きながら、なんとか脱稿に至りました。

今更ですが、最後までブレずに書き続けることの大切さを痛感しています。

――脚本家として活動されている中で、「シナリオ・センターで学んだこんなことが役に立っている」ということはありますか？

〇洞澤さん：20枚シナリオの課題はそれぞれに深い意味があると、現場に出てよく分かった気がします。

特に『魅力ある人物』は、シナリオの原点だと、新たな作品に取りかかる時、いつも思います。『魅力ある人物』と出逢えた作品は、自然に動き出してくれますし、その人物にしか言えないセリフも生まれます。

課題一作で終わりにせず、様々な『魅力ある人物』をストックしておけばよかった、書き続ける為の大きな財産になったのに、としみじみ思い知らされてます。

――脚本家になりたい生徒さんに向けて、ひとことメッセージをお願いいたします。