首里城
シナリオ・センター代表の小林です。朝から、沖縄の首里城の火災の報にびっくりしました。
何が原因なのかは知りませんが、全焼というニュースに心が痛みます。
琉球王朝のシンボルでもあり、沖縄県人の心の支えでもあったところだと思います。
どうしてこんなことが起こったのか・・・。
私も2回ほど首里城にはいっていたので、赤を基調とした黄金色に輝くような首里城が炎に包まれた姿に、金閣寺炎上を思い出し、愕然としながらニュースを見てしまいました。
心底、世の無常を感じます。
かたみ仕舞い
脚本家で監督、小説家の高山由紀子さんの新刊本がでました。
「かたみ仕舞い」(角川文庫刊)
映画「メカゴジラの逆襲」でデビューされた高山先生ですが、最近は時代小説をたくさん書かれていらっしゃいます。
「源氏物語 千年の謎」1・2、「吉原代筆人雪乃」1~3、「花魁くノ一」1・2と時代小説を書かれていらっしゃるのですが、女性を主人公とされていらっしゃる。
あの時代に働く女性、くノ一はともかく、代筆屋だったりが面白いです。
今回は「かたみ仕舞い」のタイトルでも、想像できるように、亡くなった方の形見を処分するお仕事が主人公の小夜。
日本橋の老舗唐物屋「西湖堂」の一人娘小夜は、父が亡くなり、祖父の手で「西湖堂」は店じまいされ、お嫁に行くように仕向けられます。
ですが、幼いころから豊富な知識を教えられ、宋白磁の杯を小さな手に持たせてくれた父である長右衛門の思い出、遺された帳簿と目録帳に小夜は、自らの力で西湖堂の再興を果たそうと誓います。
父を裏切った番頭だった丈四郎の店「玉寶堂」で働くことで、経験を積もうとする小夜、かたみ仕舞いの仕事を始めるのでした。
5話に渡って、様々なお家のかたみ仕舞いのエピソードが描かれています。
「かたみ仕舞い」は、大切な人の思い出を、死して尚、届けたい想いを小夜が品物とともに手渡していきます。
高山さんの凄さは、お話しもさることながら描写力です。
脚本・監督された「娘道成寺 蛇炎の恋」などの映像描写もそうですが、かたみの着物や簪の色、形、姿そのものに映像イメージが彷彿させられる描き方ができる筆力の高さなのです。
お父様の日本画家文化勲章受章者の高山辰雄さんの審美眼を受け継がれているからでしょうか、その見事な描写力には常に驚かされます。
高山さんの時代小説は、代筆屋雪乃もそうでしたが、女性だからこその仕事の仕方、女性だからとさげすまされながらも、芯は強く、男顔負け、いや男ではできない細やかな想像力で仕事をこなしていく女性が主人公です。
時代小説でありながら、主人公たちの生き方は、現在のワーキングウーマンたちの姿そのものです。
考えてみると、時代が遥か経っている今も、女性の立場も、社会の目線も変わりがないなと寂しくなりますが、それを超えて、いかに女性たちが本質的な力を持っているかを感じさせてくれる、チャンチャンバラはありませんが、スカッとさせられる時代小説です。
女性が読むと元気が出る、男性が読むとなるほどと思う、普通の時代小説の読み方とはまた違った読み方も楽しんでいただきたいと思います。1作品で二度おいしいです。(笑)