大人の恋
シナリオ・センター代表の小林です。朝からハンカチを用意して、私の大好きな福山雅治さん主演の「マチネの終わりに」を観てきました。
激しさではなく静謐の中の溢れる愛情、3度しか出会わないのに誰よりも深く愛するという大人の恋愛に、丁寧な描写とギターの音色、美しい景色、カット割りのうまさに魅せられました。
私としては、珍しく平野啓一郎さんの原作を読まずに映画をみました。
それだけにどっぷりと福山さんと石田ゆり子さんの大人の恋愛の世界に浸れたような気がします。
ふだんは、大体の原作は読んでいることが多いのですが、原作がある場合は、観てから読むか、読んでから観るかは、それぞれの楽しみ方ですね。
「マチネの終わりに」の大人の恋愛ドラマ続きともなりますが、「29歳のクリスマス」「男女7人夏物語」など多くのヒット作を描かれている脚本家鎌田敏夫さんのトークイベントがあります。
「PenOnlineトークイベント 鎌田敏夫作品における、時代や場所の関係を探る」(脚本家鎌田敏夫×ライター速水健朗)
鎌田さんはラブストーリーだけではなく多くの作品を手掛けていらっしゃいますが、私は「金曜日の妻たちへ」が大好きで、泣きながら毎週見ていました。
このトークイベントでは、時代の空気を鋭く読む鎌田さんが当時、それぞれの作品に込めた意図や登場人物、舞台設定などをどのようにつくられたかをお聴きできるようです。シナリオライターを目指す方々は必見のトークイベントです。
日時:11月22日(金)19:00~20:30
会場:代官山蔦屋書店1号館イベントスペース(渋谷区猿楽町17-5)
定員:50名 参加費用:2000円(税込)
申し込みはPeatixのイベントページまたは0120-777-581(10:00~18:00)
27時の怪談師
出身ライターの問乃みさきさんの新刊本が出ました。
大評判だった「次回作にご期待ください」の第3作目かと思ったら、新しいシリーズになりそうです。今度はホラー小説。
「27時の怪談師」(角川ホラー文庫刊)
いやいや読みたくないなあと「ホラー、弱いです」とお持ちいただいたときに、問乃さんに意を決して申し上げたら、「そんなにホラーホラーしていませんから、怖くないですよ、大丈夫です」とにっこり。
うーん、そこまで言われたら・・・こわごわ読ませていただきました。
騙されました。(笑)
でも、怖いけれど面白い、これほどカセを見事に使った小説は、久しぶりに読ませていただいた気がします。
主人公は引きこもりで誰とも会いたくない、外に出られない棲師の亜嵐と夜な夜な怪談を語る怪談師ナイト君。
いわゆる事故物件に住んで告知義務のない家としてクリアにするのが棲師亜嵐君のお仕事。
出身ライター原田ひ香さんの「東京ロンダリング」が、事故物件をロンダリングするお話で、人間の生き方を考えさせられる素晴らしい作品を読ませていただいていたので、どうなのかなあと正直思ってしまいました。
「東京ロンダリング」は純文学ながらエンタテイメント性が効いた読み応えのある作品でしたけれど、同じ事故物件を扱うにしても、切り口が変わると全く違うものになります。
だからこそ、作者の切り口、作家の目って大事なのです。
問乃さんは、見事な切り口で、エンタテイメント小説としてホラー小説として創り上げられました。
「27時の怪談師」はもちろんエンタテイメントホラー小説ですから、切り口が違うのは当たり前ですが、引きこもりの棲師と真実を語る怪談師のナイト君のキャラクターがとてもよくできているのと、次から次へと困った状況が来る、そのたびに棲師の亜嵐君は葛藤する、ナイト君がまた困らせる、そして・・・。
ネタバレするのでお話の内容は、今回はあえて書かないですが、いつも「公募コンクール講座」や「サマーセミナー」などで浅田講師が口を酸っぱくしていいっている、キャラクターと葛藤がすごくうまく生かされていて、怖さもあるのですが、うまさに引きずられてどんどん読んでしまいました。
ナイト君にもまだまだ秘密があり、亜嵐君はなぜ引きこもりなのか、そこから脱することができるのか、まだまだ読み足りないように描けています。
シリーズ化されること間違いなし。
これって、深夜ドラマの企画にぴったりです。
来年のあつ~~~い夏に、オリンピックでのぼせた体も頭も冷やしてくれるドラマにしてみてはいかがでしょう。
問乃さんは、脚本家でもありますから、シナリオはもちろん描けますよ。