活動の幅が広がると、伝えたいことも増えていきます。
だからこそ必要になるのが、すべての活動を“串刺し”にするフレーズです。
小難しく言うと「企業理念」でしょうか。
かみ砕いて言うと「いろんな大変なことがあっても、企業が活動し続ける理由」のことかと思います。
シナリオの技術でいうと、どんなに大変でも主人公が進み続ける理由という意味では「貫通行動」でしょうか。
この「企業理念」、うまく作れない、作っても浸透しやしない……とお困りの経営者のかたやマネジメント層のかたも、多いのではないでしょうか。
先日、オーガニック料理教室や食育講座・講演など「食」に関するさまざまな発信をされているワクワクワークさんも、そんな悩みを抱えていました。
代表を務める菅野のなさんからは、
【大切にしたい核なるフレーズを年1回くらい再考して、更新しながらここまでやってきましたが、このところの取り組みの広がりから、自分たちの活動を1行で分かりやすく言うにはどうしたらいいか。何とかしたい!】
そこで弊社の新井が実施した『核となることば探しワークショップ』。
今回はこの模様を、広報の齋藤がお届けします。
企業理念作りのヒントが、あるかもしれません。使えそうなところは、ぜひ使っちゃってください。
ちなみにワクワクワークさんがわずか3時間で見つけた新理念フレーズがこちら!
『毎日のごはんから私のしあわせを見つける。』
「何を伝えるか」「どう伝えるか」を分けて考える
〇新井
「企業理念を考えよう!」と思うと、かっこいいフレーズにしたいみたいな下心、でてきたりしません?
皆さん、苦笑いでうなずきます。
〇新井
なので、まずは伝えたいことだけに集中してもらいます。もしもあなたが天才コピーライターでないのであれば、「何を伝えるか」と「どう伝えるか」を分けて考えることをおすすめします。
では、どうやれば「伝えたいこと」をカッコつけずに考えることができるのか。
そこで、シナリオの出番。「ちょっと生意気な健太くん(10歳)にあなたの仕事を聞かれたらなんと答えるか」を問答形式のシナリオにしていきます。
※参考記事
>>「企業理念が浸透する方法」
健太くんに「どんな仕事してるの?」「それって誰かのためになるの?」「例えばどんなことしてるの?」といくつもグイグイ質問されます。
健太くんとの会話の中にでてきたフレーズには、面白い傾向が出てきます。自分が無意識のうちに繰り返し使っているワードがあるのです。
・「たのしい/自分で決める/食は生きること」
・「毎日のごはんを大切にする/日本中とか世界とかエリアを表す言葉」
・「毎日を楽しく/食から伝えていきたい」
・「おいしい/生きていくのにごはんは大切/みんなで、みんなが、とか横のつながりがある言葉」
・「毎日のごはん/家族/そのまま」
・「おいしいごはん/みんなで、みんなが、とか横のつながりがある言葉/楽しい/ラクに」
・「命/自分の、自分で/人/楽しく幸せ」
どんどん、ことばから離れていく
でも、これはあくまでも、ことば。
なぜだか新井は、みなさんをどんどん、ことばから離そうとします。
〇新井
これらのことばをふまえて、健太くんに「それって例えばどんな感じなの?」と突っ込まれたら、なんて言います?
「例えば、〇〇〇〇って感じかな」と返答してみてください。
そして、そのことばの状態をイメージできるシナリオを書いて、そのシーンを絵にしてみてください。
「絵には色もつけてくださーい♪」と色鉛筆をひろげる新井。
最初は「シナリオなんて書いたことない」「絵を描くなんて小学校以来」と戸惑っていた皆さんも徐々にノリノリに。
〇のなさん
なんか、頭の中をやわらかくもみほぐされている感じ。
絵にしてみると、みんながどんなことを考えているのか、よくわかるね~。
シナリオと絵がだんだん出来上がっていきます。
さて、いったいこれは企業理念とどう関係があるのでしょうか?
会社が伝えたいことをお客さまにどう思ってほしいか、をシーン(絵)にする
*
ずらっと並んだ色とりどりの絵。
では、これはなんなのか。
〇新井
皆さんから、色々な絵が出てきましたね~。
これは、ワクワクワークって、どんな風であったらいいのかをシーンで表したものです。たぶん、いつも皆さんの頭の中にぼんやりとあったワクワクワークの理想のシーンです。
でも、ここからがちょっと大変。
絵になった、いろいろなシーンから思いつくことばを探していきます。
みんなで意見を出し合います。
〇ワクワクワークのみなさん
・自分がおいしいものって自分しか作れないんだ、と思ってほしい。
・オーガニックって言うと大変そうだけど、なんだできるじゃん!って。
・オーガニックって近くにある。で、やってみて、ふと気づいたら変われてた!っていう。
・で、幸せだなって思ってほしい。
〇新井
じゃあ、お客さまには何に気づいてもらい、どう変わってほしいか、を考えてみましょう。
〇ワクワクワークのみなさん
・食生活を変えるのはそんなに大変じゃない。
・毎日のごはんから幸せが見つかる。……だめだ、キレイなフレーズにまとめようとしちゃってる!でも、そう思ってほしいな。
ことばを探していくと、ちょっとずつカッコつけ始めちゃいます。
そんなときは、もう一度皆さんが描いた絵に戻ってもらいます。
〇新井
絵の共通点ってなんかあります?
〇ワクワクワークのみなさん
・食卓を描いてる、何か作っている。
・回想シーンがよく出てくる、子どもが出てくる、日常を描いてる。
・共通して作っているものがある(塩もみ人参、バナナケーキ、コトコトスープなど)。
・身近な幸せに気づいている。やっぱり「身近な幸せに気づいてほしい」というのはあるよね。
〇新井
お!? で? で?
〇ワクワクワークのみなさん
・『毎日のごはんから私が幸せを見つける』、みたいに“私”を入れたら、“自分で、自分の”という感じが出るんじゃないかな。
・そうすると、ワクワクワークがやっている全ての食プロジェクトを網羅してるよね!家族と暮らしている人も、1人暮らしの人も、講師になる人も、海外の人も。
絵があることで、具体的なイメージを持ったことばがうまれます。
そのことばには、体温がある気がしました。
ことばからあえて離したのは、このためだったんですね!
絵で考える。とても大切な要素です!
〇新井
「何を伝えたいか」が決まれば、あとは「どう伝えるか」を考えるだけ。
でももはや、こねくり回す必要はなさそうですね。
うんうん、と深くうなずく皆さん。これも絵から発想したからこそですね。
伝えたいことは本当にずっと変わっていない
*
研修は料理教室も実施しているオフィスで行ったためキッチンがあり、おいしいお昼ごはんとスイーツをいただきながら、ワイワイと和やかな雰囲気で実施しました。
新理念フレーズが決定し、ワクワクワークの皆さんからは、
【私たちが食を通してずっと大事にしている、「日常すぐそばにあるしあわせ。」が核として中央に。伝えたいことは本当にずっと変わっていないけど、探していたものを見つけたような感じもあり。やっとしあわせになれた感を感じました!】と言っていただけました。
伝えたいことは変わっていなくても、その核心を突く言葉を見つけるのは意外と難しいのかもしれません。
でも、想いさえあれば、考え方と、考える順番次第で、どんな組織でも核となることばを見つけることはできるのです。新井がしたのは、その道案内だけ。
企業理念でお困りのかたは、ぜひ今回ご紹介した方法を試してみてください。