紅葉も桜も
シナリオ・センター代表の小林です。今日はこの秋一番寒いのだそうです。
神宮外苑はいちょう祭りです。
いつも神宮外苑のいちょう並木を見ながら出勤しているのですけれど、まだ色づき始めたばかりですが、今年のいちょうはきれいじゃない、上の方の葉っぱはなくなっているし、どうもいまいちのような気がします。
温暖化は微妙にあちらこちらに影響しているようで、うちの前のもみじも葉っぱが丸まってしまい、これからどうなるやら、きれいに紅葉してくれることを祈るばかりです。
桜が悪いわけではないのに、ろくでもない人間たちのおかげで汚れた感じになってしまい、やけになって、花を咲かせないなんてことにならないといいけれど。(笑)
自然の猛威もすごいですが、自然を壊すのも、人間の仕業。自然とともにどう生きるかは、人としての生き方として大事な気がします。
お江戸けもの医 毛玉堂
出身ライターの泉ゆたかさんの新刊本が出ました。
泉さんは、2016年「お師匠様、整いました」で第11回小説現代長編新人賞を受賞され、小説家としてデビューされました。
新作は「お江戸けもの医 毛玉堂」(講談社刊)
生類憐みの令の頃は、動物を大事にしないと罰せられることから、この時代、案外ペットを飼う人は少なかったようで、もし犬が死んだら死刑にされたらと思ったらおちおちかわいがることもできませんものね。
その呪縛が解き放たれた明和5年、現代と同じようにペットを可愛がる人がたくさんいたようです。
江戸時代の医者物はありますが、動物のお医者さんというのはなかなかありません。その設定だけでもユニークです。
凌雲先生は、あの有名な小石川養生所の人間の先生でしたが、故あって辞めて、女房のお美津とともに動物のお医者さんを始めます。
のほほんといつもだらっとしているようだけれど、ひとたび病気の動物たち、飼い主と出会うと様変わりする名医凌雲。
いつもやさしくなんでもてきぱきと心配りの優れた女房のお美津。
江戸3美人の一人でお美津の仲良し、言いたい放題の水茶屋のお仙、毛玉屋に一緒に住むようになる孤児、腕白だが絵がうまく人にやさしい8歳の善治といかにも江戸ものらしい登場人物が病気の犬や猫、馬やその飼い主たちとの出会いからいろいろな物語を生み出してくれます。
ところが、泉さんのキャラクターは一筋縄ではないのです。
凌雲はなぜ小石川養生所をやめたのか?お美津と凌雲の夫婦関係は?善治はどうして捨てられたのか?表面だけではわからない人間関係と計り知れない胸の内が入り交ざって、奥深いキャラクターを作り上げています。
帯には「もふっと可愛くほっこり温かい傑作時代小説」とうたっていますが、確かに、連作のそれぞれのお話はほっこり温かいのですが、それだけでは終わりません。
ただ動物と飼い主の心と体を癒す名医のお話ではなく、動物との触れ合いを通してもっと深く、人としての生き様(よう)が描かれて、巧みな構成力で5つの連作を一つにまとめあげるその筆力のすごさに圧倒されます。
「動物は言葉なんてわからない。ぜんぶ人の思い込みだ」凌雲先生の言葉です。
言葉が通じない動物の心を読み取ろうとする凌雲先生。うちのハルも見てほしいです。
この毛玉堂はこれからシリーズになるのでしょうか。
また、かわいい動物たちに、犬の白太郎、黒太郎、茶太郎、キジトラ猫のマネキに会いたいです。