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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

戦争は終わらない

高知掩体壕 

中村哲医師の死

シナリオ・センター代表の小林です。冬晴の東京です。中村哲医師が亡くなりました。人としてこれほど素晴らしい人はいなかったのに…。
訃報のニュースに接するたびに涙がこみ上げていきます。悲しみと激しい怒りがとどまることなく膨れ上がってきます。
医師としての活動はもちろんですが、紛争地アフガニスタンで30年に及ぶ支援活動を続け、戦争放棄、憲法九条の重みを一番感じていた方です。
彼は武力ではなく、井戸を掘り、水路を作り、麦畑を耕し、難民が出ないように力を尽くしてきました。
憲法改正、安保法制、集団自衛権に強く反対し、政府が自衛隊を派遣するためのイラク特措法を成立させた後は、米国支援ということでテロの標的になると日の丸を外して行動しました。
机上の空論ではなく、言葉だけの平和主義ではなく、現地で活動しているからこその信念でした。非武力、平和主義。
現地で活動できるのは「日本は戦争放棄国。九条がまだかろうじて力を放ち、自分を守ってくれる」からだと。日本は武力で他国を侵略しない国と信じられてきたのです。
ですが、日本政府は、なんだかんだと言い訳しつつ中東に自衛隊派遣をしようとしています。
井戸掘り、水路づくりなど国を豊かにしようと力を注いでくれたとアガニスタンの名誉市民権を授与された、なにものにもとらわれずに活動してきた中村哲さんの本当に平和を作り出す精神は、日本政府には届かないのでしょうか。
「無節操と言われても誰とでも仲良くする。裏切られても信頼し続ける。それしか平和を守る道はない」とおしゃっていた中村哲さん。
私たち一人一人が、中村さんのように広い心を持ち、違いのわかる大人にならなくてはと思います。
遥か異国で、日本政府で悪法が承認されたが故に殺されてしまった中村哲さんと運転手、護衛の方々のご冥福を祈るばかりです。
この中村さんの死を重く受け止めてくれる日本であってほしいと心から願います。

 

昭和遺跡

昭和生まれの私としては、昭和は昔とは考えておらず、明治・大正時代からと思っていたのですが、年号が変わったせいもあるかもしれませんが、昭和は昔の範疇に入るようです。
明治時代、大正時代には、時代という言葉はすんなり受け止められるのに、昭和時代って微妙に言いにくいし…。(笑)
先日、朝日新聞に「昭和だって考古学」という特集記事が出ていました。
考古学は縄文とか古墳時代などの大昔を扱うと思っていましたが、最近「昭和」の遺跡を巡る動きが出ているそうです。
昭和の記憶といえば、一番は戦争の記憶。
沖縄は特に戦争の爪痕はひどいのですが、ひめゆり学徒隊が働いていたことで知られている南風原町にある沖縄陸軍病院南風原壕群。ひめゆりの塔だけでなく、戦争遺跡として文化財指定をされています。
広島平和記念公園は、戦前は材木町という町でしたので、被爆した生活用品などがたくさん発掘され、近現代遺跡の宝蔵庫として周知されています。
「昭和の考古学」を実践する研究者や自治体はまだ少ないようですが、山梨南アルプス市になるロタコ(御勅使河原飛行場跡)、静岡日本平の本土決戦壕などの発掘調査をはじめ、飛行機を収容した掩体壕や海軍工廠跡地など、全国で戦争遺跡を残す市民運動が盛んになってきているのだそうです。
また差別の記録を残すべく、取り壊された群馬ハンセン病療養所の後も発掘調査をされているとか。
そういう話をお聞きすると、昭和というのは歴史的にも貴重な経験をした時代ですから、きちんと残しておくべきだと思いました。
まして戦後74年経って、戦争の記憶が薄れていく、経験者が亡くなられていく昨今、語り継ぐためにもとても重要なことです。
戦争遺跡は、5万件も全国に残っているそうです。
私も高知龍馬空港近くの掩体壕を見学しましたが、こういうものを見るたびにいかに日本が無謀な戦争をしていたのかということを実感します。
こうした実体感が、戦争を知らないこどもたちには必要なことだと思いました。
昭和70年代の名曲「戦争を知らない子供たち」ではありませんが、平和が当たり前だと持っている戦後生まれの私たちは、戦争遺跡から学ぶことは山ほどあるはずだと思います。
中村哲医師が武力からは何も生まれないとおっしゃったように、戦争をなくしたいのなら、貧困と差別をなくすことに世界中が徹底することなのでしょう。
絵空事のようですが、でも、誰もが傷つかない一番良い方法だと思うのです。戦争からはなにも生まれません。

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