懐かしき日々
シナリオ・センター代表の小林です。今日はなぜか懐かしい方がいらっしゃってくださいました。
お一人は、創立当時の株主でもいらした藤堂船子さんの娘さん。もうおひとりは、8年前まで研修科にいらして、今は漫画原作やノウハウを書かれている岸智志さんがたくさんの著作をもってお顔を出し下さいました。
こういう昔いらした方や御親族の方が、懐かしいとおいでくださることは、私にとっては、いやシナリオ・センターにとっては名誉ある大きな勲章です。ありがたいなあ、やっていてよかったなあと思う瞬間です。
50周年を迎えるにあたって、どんな楽しい年にしようかと考えていると、昔のことを色々と思い出します。
当時のイベントや出来事を思い出すと、シナリオ・センターに関わってくださった方々のお顔やその時のシーン(映像)が浮かび上がります。
藤堂さんもそのおひとりですが、50年にもわたると亡くなる方も出てきています。もちろん新井をはじめ講師も随分と亡くなられてしまいました。思い出していると、あ、あの方もこの方もと寂しい気持ちに陥ります。
でも、今日、藤堂さんのお嬢様が、お母様がどんなにシナリオ・センターでシナリオを楽しんでくださったかをお話しくださり、とても温かい気持ちになりました。株主としても貢献してくださり、本当にシナリオ・センターはこうした方々が支えてくださったからこその50年なのだと実感します。
ありがたいことです。その感謝を忘れないように次へバトンを渡していかねばとしみじみ思った本日でした。
まずはこれ食べて
原田ひ香さんの新刊本がでました。
「まずはこれを食べて」(双葉社刊)
「心にじわっとしみるおいしさ満点小説」と帯に書かれていたので、前作の「ランチ酒」や「ランチ酒 おかわり日和」のようなおいしいものの紹介を含めたちょっとおしゃれな楽しいお話なのだと思ってページを開きました。ところがです・・・。
連作短編集です。
超多忙なベンチャー企業「ぐらんま」を起業した4人とアルバイト、家政婦を一作ごとに中心に描いているのですが、そこには大きな秘密があり、起業の時の立役者ですでにやめてしまった男がお話のキーとなり、物語を展開していきます。
会社に雇われた家政婦筧が絶品のオフィス飯を作りながら、狂言まわしでもあり、また深くかかわりをもちながら、それぞれの登場人物がもつ大きく傷ついた心の闇を解いていきます。おいしい手づくりのおにぎりや豚汁を前に、筧はいいます。「まずはこれ食べて」…問題解決はそれから。
ミステリアスで心理描写がすごくて、登場人物一人一人が魅力的で・・・どういう風にご紹介したらよいのかわからないほど面白い!
あらすじを書いてしまうとネタ晴らしにもなってしまうし、書くのも難しいので、ともかく読んでみてください。「まずはこれ読んで!」(笑) とまりませんよ、最後まで。覚悟して読んでください。
なぜ面白いのかといえば、登場人物すべての人が2面性(多面性)を持っているからです。
人間ってみえるところがすべてではないわけですが、そのことをつい書いているときに忘れがちで、どうしても表面的な部分、事象のみを書いてしまいます。
ですが、常に2面性を意識する、これが大事です。
だからこそ奥深い展開が生まれてくるのだということ、魅力的な登場人物になるのだということを原田ひ香さんの小説は教えてくれます。
さすが元シナリオライターでもある原田さんの描写は、映像が見ているように浮かび上がり、ああ、辛ラーメン食べた~い。