シナリオの特質
2月5日、シナリオ・センター代表の小林です。今年は50周年なものですから、過去のものをひっくり返して、驚く毎日です。
月刊シナリオ教室は、創設と同時に創刊していますので、月刊シナリオ教室を紐解くといろいろなことが見えてきます。
指先を真っ黒にしながら、古い保存版を見直していると、創設者の新井一は、どれだけ「一億総シナリオライター化」をめざして、あれこれやってきたのだとびっくりします。
私たちは今もう少し優しくわかりやすい表現で「日本中の人にシナリオを書いてもらい」と言っています。
創立以来一貫したシナリオ・センターのポリシーです。
それは、シナリオの特質、一方通行では描くことができない創作だからです。
登場人物のキャラクターを把握することは、人はみな違うのだということがわからないとできません。
アクションとリアクションの両方を描くことは、人の気持ちがわからないと描けません。
対立を描くには、双方の意見をどちらも正論にしなければなりません。
総てを客観的にみることができる創作なのです。
そして、新井一が一貫して言い続けていることは「褒めて育てよ」ということでした。
怒らない
先日、バレーボールの日本代表だった益子直美さんが、福岡で「益子カップ小学生バレーボール大会」を主催され、注目を浴びているというニュースを耳にしました。
この益子カップの決まりごとは「監督が怒ってはいけない」ということ。
監督が怒ったら益子さんに言いつけに来るようにと小学生の選手たちにルールを説明します。(笑)
益子さんがなぜこんな大会を始めたのかというと、引退するまでバレーを楽しめなかったといいます。中・高校生から活躍されているのに。
・ほめられたことがない・自信がない・考えることをしない・チャレンジしない・目立ちたくない・意見を言えない・楽しくない…監督に怒られないようにしようとそればかりの日々だったそうです。
引退してスポーツキャスターとして、1996年アトランタオリンピックの全日本女子をインタビューしたときに「オリンピックを楽しんできます」といわれてびっくり、まさかのセリフだったといいます。
今まで体罰も暴言も当たり前、根性が必要と思っていたから。
「楽しむ」というと「えっ?」といわれる方はまだまだいますが、「楽しむ」という言葉だけとれば、おちゃらけているように思うかもしれませんが、スポーツの本質は「スポ根」ではなく「真剣に楽しむ」ということではないかと思います。
「小中学生を怒って委縮させる指導では、考えて自分で判断する力を養うことができない、そもそも日本の子どもたちはスポーツ以外の場面でも自分で考えたり、選ぶことができない、押し付けられているように感じます。」と益子さんの言葉は重いです。
続ける
新井一は、一人ひとりの個性をつぶさない、否定されたらそこで終わるといつも言っていました。
創作もスポーツも一緒なのです、いや、すべてに通じることでしょう。
自分が楽しめなかったら、本当に人を楽しませることはできないと思うのです。
シナリオを描くということは、自分の頭で考え、心で想い、それを伝えることなのです。
自分で考えられなかったり、選べなかったら、描けませんよね。
しかも、シナリオは、アクションとリアクションの両方を作る、各々のキャラクターを考えることで、客観的に物事の本質をとらえることができるすごい技術なのです。
一人でも多くの方にシナリオを描きていただきたいと、50年経った今もまたいい続けていきます。