一言で、共感を生み、イメージが湧く企業理念が必要な時代
GoogleやAppleのような企業理念が明確なビジョナリーカンパニーが注目を集めています。日本の企業にも企業理念が求められる時代になってきました。
企業理念の大切さはわかるけど、自分で作ろうとすると、ありがちな言葉になってしまうため作り方がわからないという方、正直いうと、企業理念を作ることでどんな価値がうまれるのかもよくわからないという方もいると思います。
そこで、以下の項目をまとめました。
・なぜ企業理念が大切なのか
・そもそも企業理念とは
・企業理念と経営理念、何が違うのか?
・企業理念があると何がいいのか
・企業理念の条件
・企業理念の作り方 3つのパターン
・企業理念を作ったらどう活用すればいいのか
そもそも企業理念とは
企業理念について、Weblio辞典には以下のように書いてあります。
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企業理念とは、創業者が会社の創業に託した想いのことであり、会社の不変の価値観と会社の存在理由・目的からなる。
有名なものに、ソニー株式会社の「設立趣意書」や、ヒューレット・パッカード社の「HP Way」、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の「我が信条」などがある。
世界中から広く尊敬を集める企業の企業理念には以下の特徴がある。
①企業理念があり、かつ公言(文書化)している
②簡潔、明快、率直である
③社員の行動指針となり活力を与えている
④会社の文化や組織風土に影響を与えている
⑤利益の追求よりも優先されている
⑥経営戦略や組織設計との一貫性がある
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企業理念と経営理念、何が違うのか?
企業理念と経営理念は、ごっちゃになりがちです。二つの違いを整理してみました。
まず経営理念について、グロービスMBA用語集には以下のように書いてあります。
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経営理念とは、組織の存在意義や使命を、普遍的な形で表した基本的価値観の表明。
平たく言えば、「会社や組織は何のために存在するのか、経営をどういう目的で、どのような形で行うことができるのか」ということを明文化したものである。
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『企業理念』が企業が進むべき方向を示す矢印だとしたら、『経営理念』はその矢印を伸ばしていく方法と考えればいいのではないでしょうか。
企業理念があると何がいいのか
その企業らしい企業理念があると、ほかの企業と比べてどんないいことがあるのでしょうか。3つにまとめてみました。
① 企業として発信力が高まる
ここ数年で消費行動は、モノ消費から、コト消費へと変わってきました。企業理念が定まっていることで、顧客に向けて自分たちはどういう想いでサービスや製品を提供しているのかを、明確に伝えることができます。
企業理念は、顧客から見るとブランドイメージへとつながります。企業理念が、間接に利益に影響する時代になっているといえるのではないでしょうか。
② 社員の仕事に向かう姿勢ができる(離職防止)
自分がやっている仕事は、どんな価値があるのか……ビジネスパーソンであれば、誰もが考えます。企業理念が明確であれば、自分たちが何のために仕事をしているのかがはっきりとします。それがやりがいにつながり、離職防止にもなります。
社員の離職率が高い企業ほど、企業理念の見直しと社員への浸透に時間と予算をかける時期に来ているのではないでしょうか。結果的に採用コストの圧縮にもつながります。
③ 新卒採用にも使える
企業理念があることで、新卒採用にも有利になります。「この会社は、このために頑張っている会社なのか」というのが伝われば、企業規模に関わらず志の高い学生を集めることができます。
また、すでに企業理念に共感をしている人材を集めることができるので、入社後の育成もスムーズに始めることができます。
『デトロイト社が2015年に世界29か国のミレニアム世代を対象に行った調査によれば、就職先を選ぶ基準として、給与でも製品でもなく「その企業が事業を行っている目的」を重視すると6割が答えた』(『「NEW TYRE」の時代』山口周)という調査結果もあるそうです。
企業理念の条件
企業理念は、3つの条件を満たしている必要があります。
① 一言で言える言葉であるべし
企業理念は、一言で言えるものである必要があります。
Apple:人間の知性にとっての自転車をつくる
Google:世界中の情報を整理し、誰もがアクセスできる世界を作る
ピーチエア:アジアのかけ橋になる
② イメージがわく言葉であるべし
企業理念は、ともすると堅苦しい言い回しになりがちです。「未来の笑顔に貢献する」的な企業理念を見かけたことがあるのではないでしょうか。言いたいことはわかりますが、こういった企業理念では、イメージがわきません。短いなかで、なんとなくであってもどんな世界を目指しているのか、イメージがわく言葉である必要があります。
③ 共感できる言葉であるべし
企業理念は、社員がその言葉に共感し、さらに顧客にも共感してもらえるものである必要があります。「この企業はこのために頑張っているんだなぁ~」「こういう姿勢がサービスにもでてるよね」と共感できる言葉にしていきます。
上記の3つの条件を満たす企業理念を、経営者は作らなければなりません。
企業理念の作り方 3つのパターン
企業理念は、どうすれば作れるのでしょうか。大手企業などの場合は、コンサルティング会社やコピーライターなどが制作に携わることもあるようです。しかし、自分の会社の企業理念を人任せにしている経営者や経営層の言葉が、社員や顧客の共感を得ることができるのでしょうか。
企業理念を作る3つの方法をご紹介します。
① 経営者が一人で作る方法
一つ目は経営者の方が、頑張って一人で企業理念を考える方法です。
メリットは、企業理念作りをきっかけに自社のあり方を見直すことができること、自分の考えを反映できることです。
デメリットは、客観的な意見を得ることが難しいため、独善的になりがちだということです。誰もが共感してくれるような言葉にできるかどうか、冷静にチェックする必要があります。
この場合は、信頼できるアドバイザーや考えを整理してくるファシリテイターがいるといいかもしれません。
② 経営層が集まって作る方法
経営者だけではなく、経営層が集まって考える方法です。
メリットは、経営者一人だけの意見ではなく、さまざまな意見が出ることです。
デメリットは、経営層にとって都合のいい企業理念になってしまい、実際にお客様と接点のある社員の考えが反映されずらいため、社員や顧客が共感できる企業理念になりにくいことがあります。
③ 社員みんなで作る方法
経営者や経営層に加えて、社員も加えてみんなで企業理念を考える方法です。
メリットは、経営の視点だけではなく、現場の視点も踏まえて、様々な角度から企業理念を考えることができることです。共感されやすい企業理念が生まれる可能性も高くなります。
デメリットは、視点が多いだけに一つの企業理念にまとめていくことが難しい点です。意見はたくさんでたけれど、結局まとまらなかった……ということにならないように注意が必要です。
この場合は、参加者の総数は経営者もいれて、多くても7人~9人のチームで行うのがいいのではないかと思います。またどんな意見でもいえるという心理的安全性が確保されているという前提も必要です。
■社員も入れて企業理念を作り上げた成功事例
>>シナリオ発想で 企業の核 となる理念フレーズを考える
▼企業理念の共感度と自分事は、制作に関わる人間が増えるほど浸透させることができる
企業理念を作ったらどう活用すればいいのか
企業理念を作ったら、それで終わりではありません。企業理念を広く周知することで、社員や顧客の共感を得ていく必要があります。
① 企業理念を公式サイトに掲載する
公式サイトの『企業概要』や『企業紹介』などのページに企業理念を掲載していきます。アナリティクスなどでサイトを計測するとBtoB、BtoCに関わらず、サイト訪問者の多くは、製品やサービスページから『企業概要』や『企業紹介』のページへ遷移しています。
「信頼できる会社なのか」というのを、企業の姿勢から読み取ろうとしているのではないでしょうか。ここに、共感できる企業理念があれば、顧客からの問合せも増えてきます。
② 企業理念と事業のつながりを社員に丁寧に説明する
企業理念ができあがったら、社内報やブログなどを通じて、社員に向けて企業理念と事業とのつながりを丁寧に説明します。日々、何のために事業を進めているのかを社員に伝え、共感を得るようにしていきます。
シナリオ・センターが企業理念作りに協力させてもらったオーガニック料理教室では、『毎日のごはんから私のしあわせを見つける。』という企業理念を、公式サイトはもちろん、名刺にも記載しています。
③ 企業理念が実現された未来を共有する
企業理念が実現されたら、どんな未来になるのか、事業の『いま』だけではなく『これから』にフォーカスした発信も有効です。社員が共感できる未来を示すことができれば、それは顧客にも自然とつながります。それが、ブランドイメージとして最終的には利益や売上といった数字にもつながります。
ビジョナリーカンパニーとは、イメージまで伝えることができる企業といえるのではないでしょうか。
■企業理念をもとに、ビジョンを見える化した事例
ジムを超えたジム!『ヴィムスポーツアベニュウ』さんの企業理念を見える化!
企業理念は社員みんなが共感できれば、お客様にも響く
企業理念は、単なるお題目になりがちです。そのため、いまだに多くの企業が企業理念がもたらす恩恵に気づいていません。いま、動き出すことが必要です。
企業理念は、
一言で言えて、イメージがわき、共感をえる言葉です。
たった一言で、あなたの会社の『あり方』を、社員にも顧客にも伝えることができます。
ステキな企業理念、作ってくださいね!