チームビルディングとは、必要なものか
働き方改革やテレワークの普及による仕事の仕方の変化や、人材難が叫ばれる昨今、今いるメンバーの力を、どんな状況でも発揮できるチームが求められています。
今まで以上に、個々の力を発揮し、チームで成果をあげることができる組織を作り上げるチームビルディングが重要になってきます。映画やテレビドラマの現場でも、チームワークがよいほど、視聴者の心を掴む傾向にあるようです。
『現場に行くと、役者さん達から「次どうなるの?」という質問を凄く受けましたね。主役を演じた伊藤英明さんはあるシーンのセリフを読んで大爆笑して「最高だー!」と。他の役者さんもスタッフも爆笑しながら撮影したことが凄く印象に残っています』宮川 晶<ケイ ファクトリー/プロデューサー>
ドラマ『僕のヤバイ妻』:第5回市川森一賞を受賞した出身ライター黒岩勉さんが授賞式でのコメントより
そこで、個々の力を高めるチームを作るための方法を考えてみたいと思います。
そもそもチームビルディングとは……
チームビルディングについて調べると、必ず出てくるのが、心理学者のブルース. W. タックマンが提唱した『タックマンモデル理論』の中で紹介されている『チームビルディングに必要な五つの発展段階』です。
それぞれのステージは次のとおりです。
形成期…結成当初で、まだチームとしての機能や役割が共有されていない状態
混乱期…目標に対する意見の食い違いや人間関係で、対立が生まれている状態
統一期…チームの目的や役割が共有されて、統一感が生まれている状態
機能期…結束力が生まれ、互いにサポートやフォローを行い、チームとしてもっとも機能している状態
散会期…目的達成や時間的制約によって、チームが解散する時期
チームビルディングは、タックスマンモデルでいう『機能期』を目指すといえるのではないでしょうか。
チームビルディング研修の必要性
タックスマンモデルでいう『機能期』を達成する必要性を、整理してみました。
・働き方が根本的に変わってきている
働き方改革やテレワークの普及に伴い、私たちの働き方そのものが根本的に変わってきています。いままでは職場という、同じ環境を共有し、何気ない会話や素振りの中から問題を見つけ、お互いにフォローをしあったりすることができました。
チームを意識せずとも、自然とチームとして機能することができたのではないでしょうか。しかし、これからは多様な働き方が増えることで、相対して仕事をする時間が減ってきます。
そういったいままでとは異なる環境が増える分、チームを意識的に機能させていく必要があります。
・働き方改革による長時間労働の是正
『働き方改革の中で、時間外労働の上限について、「月45時間、年360時間を原則とし、臨時で特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)を限度に設定」等、労働時間に関する制度の見直し(施行:2019年4月、中小企業は2020年4月)がされています(*2)』
【わかりやすい】「働き方改革」とは。変わる5つのこと、目的・概要まとめ より
・転職組が増えることで、意思疎通が難しくなる
総務省統計局の労働力調査によると、2019年の転職者比率は5.2%になっているようです。年々、転職者比率は上がっています。20人に1人くらいは転職をしているといえるそうです。
実際に、どの会社でも中途採用者は多くなっているのではないでしょうか。転職組が増えることで、人材の確保ができます。また新たな力を得ることができます。一方で転職組が増えることで、組織全体の帰属意識の低下も起こります。結果、離職者が増え、チームワークを取ることすら難しくなってきます。
転職組のスキルを、既存の組織の中で活かすためにも、チームビルディングを行うことは大切になります。
・いざ、というときに協力ができない
機能期(結束力が生まれ、互いにサポートやフォローを行い、チームとしてもっとも機能している状態)のような状態になっていない場合、緊急時や不測の事態が起きた時に対応することが難しくなります。
自然災害や流行性ウィルスの問題も含め、どんな時でも協力できるチーム力がその組織にも求められています。
・社内の空気は社外にも伝わる
意外に忘れがちですが、社内の雰囲気の良し悪しは、それとなく社外に伝わっていくものです。顧客はそういった組織のもつ雰囲気を肌で敏感に感じるものです。そして、人知れず商品やサービスを利用することをやめてしまいます。
チームビルディングは、ブランドイメージにも大きくかかわってきます。
チームビルディング研修の方法
個々の力を最大限に発揮し、チームとして成果を上げるための方法をご紹介します。
・共通の目標をもつ
チームビルディングをするうえで、最も効果的だと思う方法は、企業理念の徹底です。ビジョナリーカンパニーともいわれ、改めて注目を集めています。
Apple:人間の知性にとっての自転車をつくる
Google:世界中の情報を整理し、誰もがアクセスできる世界を作る
ピーチエア:アジアのかけ橋になる
企業理念がしっかりとしていて、かつ成果を出している企業は、従業員ひとりひとりに企業理念が浸透しているのではないでしょうか。企業理念を、どんな年次の、どんな階層の社員にも浸透させる方法の一つが、企業理念を基にしたPR動画の作成です。
PR動画作りを通して、企業理念への理解を深めます。実際に動画を作成するまで行わないにしても、「もしもPR動画を作るとしたら~」というお題で、ワークショップを行うだけで企業理念を浸透させ、チームビルディングをすることができます。
『伝えたいテーマを決め、構成をつくるアウトラインを学ぶ中で、これから何が必要なのかが考えやすくなったな、と感じております』宇奈月温泉 延楽で実施した研修の感想より >>シナリオを使って、経営理念を浸透させる方法
・お互いを想う想像力の養成
小さな組織でも大きな組織でも、様々な考え方、様々な価値観を持った人がいます。お互いの人となりを知ることで、チームワークを発揮しやすい状態を作ることができます。
この時にポイントとなるのが、仕事をする上で『どんなことを大切にしているのか』『今までどんなことをして、何を感じてきたのか』『これからどんなことをしたいのか』を整理できるといいと思います。
「筋と呼ばれる、大まかな展開から描いてしまうと、人間のことを考えていないから化学反応が期待できない。(略)本来は、脚本家が生み出したキャラクター、人物たちがぶつかり合った時に、どんな出会いになるのか、どんな化学反応が起きるのか。
そこを考えるのがドラマ作りの中で一番面白いわけです。」脚本家・倉本聰さんのインタビューより
■「相手の立場なって考える」を具体的に実践するためのワークショップの事例
チーム力が上がるメリット
チームビルディングが達成することで、どのような成果に結びついてくるのでしょうか。
・妥協ではない合意形成ができる
合意形成というと、考えをすり合わせるために、妥協点を探ると思われがちです。しかし、社内コミュニケーションの目的は、お互い気持ちよく「〜した方がいいよね!」と合意できることです。相手に妥協させたり、議論で打ち負かすことが目的ではありません。
チームビルディングが達成されることで、高いレベルでの合意形成をすることができます。
・助け合う雰囲気が醸成される
「チームワークがいい」というのは、それぞれが担当している役割を全うしつつも、役割以外の部分への目配り気配りができることではないでしょうか。仕方なく手伝うのではなく、積極的に手伝い、お互いに気持ちよく仕事をする、そんな雰囲気になることで、心理的安全性も確保することができます。
『いまの僕の映画を作るスタイルは脚本が完成して撮影に入るわけではないので、撮影しながら脚本を役者さんと一緒に、スタッフと一緒に作って行くという作業が、端から見ているとハラハラされるかもしれませんが、とても楽しくて』
第42回日本アカデミー賞是枝裕和監督 『万引き家族』最優秀脚本賞のコメントより
・新しい企画、アイデアが生まれる
チームワークがいいと、異なった考えや意見を聞き入れる土壌が生まれます。それは、新しい企画やアイデアを生み出すきっかけとなります。
『希林さんは、随所で、色々なカタチで、僕が書いていないセリフを現場でフッと口にされて、それをキッカケに僕はまたその希林さんのセリフを見返しながら、脚本を書いていく、というそういう共同作業を一緒にやって作った映画』
第42回日本アカデミー賞是枝裕和監督 『万引き家族』最優秀脚本賞のコメントより
チーム力がありそうな企業
最後に、チームワークがよさそうな雰囲気を感じる企業をいくつかあげたいと思います。
・ピースオブケイク
『だれもが創作をはじめ、続けられるようにする』を企業理念にNoteというサービスを運営する『ピースオブケイク』さん。https://www.pieceofcake.co.jp/
シナリオ・センターの新井もNoteを利用していますが、随時更新される「お知らせ」の内容からもチームワークの良さが垣間見えます。
・北欧暮らしの道具店
ECサイトを運営する『北欧暮らしの道具店』さんも、チームワークの良さを感じます。こちらでは、実際にブランドノートというサービスの営業資料作りのお手伝いをして、改めてそのチーム力の高さを感じました。
シナリオで探す「北欧、暮らしの道具店」「BRAND NOTE」のフィットすることば
・コットン・ラボ
知る人ぞ知る会社かもしれませんが、『もっとコットンにできること』の企業理念をもとに、様々なコットン製品を作っています。コットン・ラボさんでも研修やインタビューなどをさせて頂いていますが、チームワークの良さやお客様を大切にしている姿勢がどなたからも感じることができます。
オーガニックコットンで、コットン・ラボにしかできないことを追求
気軽に話かけられるか否か
チームビルディングができているかどうかのわかりやすい指針は、誰でも、気軽に、相談をする雰囲気があるかないかではないでしょうか。
テレワークが増えてきたとしても、誰かが遠慮している状況があるのであれば、それはいいチーム状態とは言えません。仕事の仕方は変わっても、人間の本質が変わるわけではありません。気持ちよいコミュニケーションを、共通の目的のためにすることがこれからの組織にはより一層、求められるのではないかと思います。