「セリフを書くとどうしても説明セリフになっちゃう……」というかた、こちらの記事でお悩み解消!
まずは説明セリフについて。
シナリオ・センター創設者・新井一は著書『シナリオの基礎技術』(P177)の中で、
【シナリオはストーリーでも、登場人物の心境でも、説明しなくては観客にはわかりません。
しかし、その説明をいかにも説明ですというふうにいっては芸術になりません。その説明をどう説明ではないようにするかが表現というものでしょう。
ところがドラマを進行させる目的のために、しばしばセリフの中にナマの説明を持ち込んでしまうことがあります。この説明をセリフでしゃべってしまうのを<説明セリフ>という訳です。】
――と述べています。
新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこでこのコーナーでは当時の記事を皆さんにご紹介しています。
今回は、説明セリフにならないように、「たとえ1行のセリフを書くときでも、構成を意識する」というお話を新井一からさせていただきます。
1行のセリフにも構成はある
構成とは何かというと、多くの人々は「ははあ、起承転結のことだな」とか、「世阿弥の序破急のことさ」「いや、フライタークの3部5点説(19世紀のドイツの戯曲作家フライタークが唱えた戯曲構成法)のことさ」といろんなように考えます。
それらの共通性は、何か長い1つの作品に対して、並べる順序のことだなと考えられています。
ですから以前、私が20枚シナリオ勉強法を提唱したときに、プロの作家は少し軽蔑のまなこで、「20枚シナリオ?子どもだましの勉強方法だよ。大体、構成ができないじゃないか」と言われたものです。
構成とは240枚とか120枚の作品になって、初めて使われるものと思っていました。あなたもそう思っていたでしょう?まずその点から、考え直していただきましょう。
「これが、うまいんだな」より「うまいんだな、これが」
わずか1行の短いセリフでも、実は構成が必要なのです。
「セリフに構成があるなんて」と思われる方が多いのですが、ビールのコマーシャルで、“ショーケン”こと萩原健一さんがビールのコップを持ちながら、
「うまいんだな、これが」
と言うのがあります。思わずゴクリとするCMです。
これはこういう言い方もあります。
「これが、うまいんだな」
使っていることばはまったく同じですが、こっちのほうが理屈っぽくなります。
つまり説明的になるのです。前の方は感情に訴えることになります。
北原白秋のお弟子さんが、ラジオに初出演したときに、田舎にいるお母さんに、ラジオを聴いてくれたかというのを、うれしさのあまり、電報で訊こうとしました。
郵便局に行くお弟子さんに、白秋は、電文は何だと訊きました。
「お母さん、聴いてくれましたか」
と言ったところ、ちょっと待てと書き直したのが、
「聴いてくれましたか、お母さん」
さすが詩人の大御所ですから、文章の並べ方ひとつで、理屈ともなり、感情的になるのをご承知だったわけです。
この並べ方が、構成なのです。短くても構成があるということおわかりになったと思います。
出典:『月刊シナリオ教室』1993年6月号「新井一 十則集」/2014年12月号「新井一.com」
※セリフについてはこちらの記事「良いセリフを書くためにおさえるべきセリフの機能、種類とその方法」も併せてご覧ください。
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
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