「古い映画は観たことない…」「昔の作品だから飽きちゃうのでは?」というかた、こちらの作品から観てみませんか?
今回は新井巖講師(作家集団担当)と坂田俊子講師(研修科担当)がおすすめする、巧みな脚本が光る名作映画2本をご紹介。
脚本家・小説家志望者は、主人公の描き方や構成の仕方など参考にできる部分が沢山ありますので、その点も注目してください。
新井巖講師おすすめ名作映画『昼下がりの情事』
〇新井講師:ビリー・ワイルダー監督をご存知ですか?
ロマンティック・コメディを撮らせたら天下一品。もともとはドイツ出身のシナリオライターでしたが、監督としてハリウッドでブレイクします。
『麗しのサブリナ』『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』『昼下がりの情事』などを撮った監督といえば、その実力はおわかりのはず。
今あげた映画はすべてオススメですが、ここでは『昼下がりの情事』をあげておきましょう。
プレイボーイのフラナガン(ゲイリー・クーパー)が、「世慣れた女」風に装う小娘アリアーヌ(オードリー・ヘップバーン)に翻弄されるという、ありえない設定で、正直、突っ込みどころ満載ですが、実はそれがこの映画の大きな魅力。逆に言えばこういった設定だからこそ、主人公のキャラが際立ってくるのです。
さすがシナリオライター出身だけに、脚本の仕掛けが巧みです。
つまり、ありえないような設定であっても、映像的に面白ければそれを採用するというエンターティンメントの王道をわきまえているんですね、ワイルダーは。
この映画が公開された時にヒットしたジプシー・アンサンブルが奏でる『ファッシネーション(魅惑)』という曲の使い方も、コメディならではの巧みさで効果を上げています。それと彼とコンビを組んでいる脚本家I・A・L・ダイアモンドにも注目しましょう。
それに音楽の扱いの巧みさとともに、小道具の使い方の妙も大いに参考になるはず。どのくらい小道具を巧みに使っているか探してみましょう。
もちろん上にあげたどの映画でも、構成の巧みさ、伏線の張り方、セリフの小粋さ、小道具などの扱いなど、参考点は満載のはず。いずれも古い映画だからDVDも安く手に入ります。
書き忘れましたが、この作品もオードリーのもう1つの主演映画『麗しのサブリナ』も、いかにもアメリカ的なサクセス・ストーリーである「大富豪(お金持ち)が、庶民の娘と結婚する」という設定になっています。
つまり定番の面白さも、エンターティンメントには必要なんですね。
※YouTube
Warner Bros.
Love in the Afternoon – Original Theatrical Trailer
※新井講師は別のテーマでも映画をおすすめしています。
「食欲がわくシーンのある おすすめ映画 ~シナリオ・センター講師9選~」はこちらからご覧ください。
坂田俊子講師おすすめ名作映画『駅馬車』
〇坂田講師:ジョン・フォード監督が、ジョン・ウェイン主演で製作した西部劇の金字塔とも称される作品。1939年のアメリカ映画、96分。
1880年代のアメリカ西部、アリゾナからニューメキシコへ向かう駅馬車に、娼婦、夫のもとに向かう妊婦、飲んだくれの医者、保安官ほか、癖のありそうな面々が乗り合わせた。
ジェロニモ率いるアパッチが駅馬車を襲撃するという知らせに騎兵隊は警備の準備をするが、出発した駅馬車は、出発して間もなく、殺人罪を犯し脱獄したお尋ね者のリンゴ・キッドを乗せることに。
この、キッドの登場の仕方が、シナリオ・センター所長の後藤千津子講師からよく「途中から出す主役は、主役であることを明確にするため『暖簾を分けてサッと出る※』ように書く!」と教えていただいた、まさにその良い例だと納得する。
構成に優れ、中盤までは駅馬車に集った面々の事情・人間模様などが語られセリフに重点が置かれているが、後半アパッチの襲撃に遭うところから場面は一変して緊張感に包まれ、アクションのハラハラドキドキ感が味わえる。
また決闘シーン、その後の人間ドラマに魅せられ、96分があっという間に終わった。
キャラクターの構築の仕方が主人公だけでなく、脇役までそれぞれ秀逸で楽しめる。
何より、ジョン・ウェインの観せ方がかっこいい!
主演を務めた彼は、この作品以降、アメリカ映画界で不動の地位を築いた。
ちなみに、『駅馬車』という邦題を付けたのは、映画配給会社の宣伝部員だった淀川長治氏だという。のちの名映画評論家である。
私が生まれるずっと前に製作された白黒映画だが、内容は古さを感じさせない。私の好きな映画の10本に入る作品である。
※これは、シナリオ・センター創設者 新井一の「シナリオいろは」にある【「し」:主人公、暖簾を分けてさっと出る】に基づいています。その他の「いろは」はこちらをご覧ください。
※YouTube
Warner Bros.
Stagecoach – Trailer
※坂田講師は、別のテーマでも映画をおすすめしています。
「企画 (アイデア)が凄い!と思うオススメ映画9選」はこちらからご覧ください。
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