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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

優しさって

ドール先輩の修復カルテ(光文社キャラクター文庫刊)

カセ

シナリオ・センター代表の小林です。今日も東京はどんよりです。
久々に仲村講師がきて、講座の撮影に取り組んでくれています。普段でも1、2カ月講座がなければ会わない時もあるのに、なぜかひどく懐かしく嬉しい。
会えるということ自体が、こんなにも嬉しいものなのかと不思議な気持ちになります。
講座の中で、ドラマに「カセ」を使うとドラマが盛り上がるというお話をして、新井が創ったカセ表というのをお渡ししています。
カセ(枷)=障害ですが、会いたいのに会えない状況だからこそ、気持ちが盛り上がるのですね。
この状況って、カセだらけなので、実際に困っていらっしゃる方が多いのではと思います。
大変なことはドラマの中だけで終わらせたいですね。
時々、出身ライターの方が短いけれどさりげなく優しい励ましメールをくださる。本当に心に沁みます。
どこかで気にかけてくださる方がいてくれる・・・なんと幸せなことかと思います。ありがたいなと思います。
ここのところ、困っている人たちへの公の対応は増えてはいますが、その成り立ちを見ているとやさしさがまったく感じられません。
私たちが収めた税金なのに、恵んでやる感満載で、できれば「ビタ一文、恵んでもらうか!」と啖呵のひとつも切りたいところですが背に腹を変えられず・・・。(笑)
なので、ついつい御自分たちにボーナスなどお出しになるのなら、しっかり納税者の私たちにお返しいただくのが筋ではとか言いたくなってしまいます。
上から目線ではなく困っている方々に寄り添う気持ちが欲しいですね。こんな時こそ人の心がくっきり見えてくるものです。

ドール先輩の修復カルテ

出身ライターの関口暁人さんが、エブリスタ小説大賞、光文社キャラクター文庫大賞を受賞され、受賞作でもある「ドール先輩の修復カルテ」(光文社キャラクター文庫刊)が出版されました。
受賞おめでとうございます。

「ドール先輩の修復カルテ」は、美味しいもの大好きな小動物系美少年の雛太と天才的修復師耽美系美少年ドール先輩と人形との事件簿です。
元親友に殴られそうなところを助けてくれたのが小日向雛太が通っている名門私立高の先輩沢桐瞳瑠(通称ドール先輩)。
「もう俺のコレクションだよ、今日から君は」と小動物系美少年の雛太に助けた恩を売って、強制的に自分一人でやっている「人形(ドール)研究会」に入部させる。
雛太は耽美系美少年のドール先輩に振り回されながら、ぬいぐるみや人形の修理に駆り出され、そこからさまざまな事件に首を突っ込んでいくことに。
4つの連作です。

関口さんはよく存じ上げているのですが、何故、お人形のお話を書かれたのか、なんでこんなにおもちゃ修理に詳しいのか、すご~いと思いながら読み進んでいきました。
知らなかった。関口さん、日本おもちゃ病院協会認定のおもちゃドクターなんですって。なるほどと初めてうなづけました。
ご本人もインタビューで言っていらしたのですが、作品化するときにどんな切り口にしようかと悩まれたそうです。
ご自分が所属していいらっしゃるおもちゃ病院を舞台にとも考えられたそうですが、より面白くとこの美少年二人を主役にした設定にされたそうです。
切り口ってとっても大事です。だから、受賞されたのです。

この二人のキャラクターの濃さ、4作にわたる連作の構成はさすがです。
雛太は、父親を事故で亡くし、妹と母との母子家庭。小柄で華奢でおくびょうな小動物系美少年のため、野蛮な男子からはおもちゃのように扱われ、女子からは小動物扱いされてきた男の子。美味しいものが大好きで甘いものに目がない。
瞳瑠は、他人を寄せつけないほどの耽美的美少年。祖父の代からの人形修復工房をもち、おもちゃ、人形の修復に凄腕をもっている。クールに見せながら優しい。
この二人が人形やぬいぐるみに隠された因縁や事情を解き明かしながら、人形が持つやさしさに登場人物たちが癒されていきます。
誰でもが思い出の人形やぬいぐるみやおもちゃはお持ちだと思うのです。
そこにスポットを当てて描いているので、本当に優しい気持ちになります。
ちょっと気持ちが萎えているこういう時期に読む本として、特にお勧めしたいですね。

関口さんは、おもちゃ病院の存在を知って、おもちゃドクターになり、この構想が生まれたのです。
高価な品ではなくても思い入れがあるから直したい人形がある。それを直してくれる魔法使いのような人たちがいる。そこに「わー、直った」と笑顔になる子供たちがいる。だから、日本おもちゃ病院のドクターたちは、情熱と喜びを持って修理をされていらっしゃるのです。
実際に活動されているおもちゃドクターとの出逢いが、想いが素敵な本となりました。

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