時代劇を書きたいかたは、ラジオドラマの脚本はいかがでしょうか。
このほど、田窪泉さん(大阪校 第一長篇研究科)の『とどけ、風の如く』が第48回創作ラジオドラマ大賞の大賞を受賞。田窪さんによると、受賞作はシナリオ仲間から「田窪は時代劇が良い」と言われたことがキッカケ、といいます。
本作の舞台は天保の世・大坂。街角で瓦版を売る若い2人の男、佐吉と紀之介。得意ネタは、よく売れるがお上に禁じられている“心中もの”。そこへ大柄な武士が通りかかる。2人は役人と勘違いして逃げ出すが、彼は元与力の学者・中斎だった。この出会いを通じて、貧困と飢えにあえぐ人々があふれる世の中の矛盾と向き合うこととなる――。
6月には、ラジオドラマ化され、NHK FMシアターで放送。
佐吉役を担当した上口耕平さんは、NHK公式サイトで「田窪さんによる情感溢れる言葉が直接胸に届き、声に出して読む度涙がこぼれました」とコメントされています。
「聞き逃してしまった…」というかたは、『月刊シナリオ教室 2020年9月号』(8月末発行)に、受賞の言葉とともに、シナリオも掲載いたしますので是非ご覧ください。
そして、ブログ用のコメントもいただきましたのでご紹介。時代劇を書きたいかた、創作ラジオドラマ大賞に応募をお考えのかた、参考にしてください。
「祖母のような人達が少しでもおもしろがってくれたらいいなぁ」
――受賞作『とどけ、風の如く』について
〇田窪さん:シナリオ仲間に「田窪は時代劇が良い」と言われた事を真に受けて、現代の問題に絡めた時代劇を書こうと思い、できた作品がこの『とどけ、風の如く』です。
SNSで誰もが情報発信できるようになった現代。それは諸刃の剣であり、発信者はそれを理解するべきである、という事を織り込んだつもりです。
私の作品を選んでくださった方々、先生、仲間、友達、家族、役者さん、スタッフさん、作品を聴いて下さった全ての方々に心から感謝します。
――ラジオドラマに込めた想い
〇田窪さん:ラジオドラマを書くにあたり、私は祖母を思い浮かべました。
祖母は晩年、盲目になりました。高齢だったので出歩くこともできず、テレビを見たり、本を読むこともできません。唯一、イヤホンをすればですが、音は聞こえました。
娯楽って、人が生きていく上での楽しみであり潤いであると思うのです。それが少なくなってしまった祖母を少しでも楽しませたい。
その為には、川や風、炎に三味線、様々な音で想像をかき立てよう。主人公は泣いて笑って走り回らせて、そうすればラジオを聞く祖母も想像の中で同じように走り回れるかもしれない。
祖母はもうこの世にはおりませんが、祖母のような人達が少しでもおもしろがってくれたらいいなぁ、そんな思いで書き上げました。
――ラジオドラマ化されて
〇田窪さん:コンクール用に書き上がった時、この作品は完成した、と自負しておりました。しかしプロデューサーさんの感想をお伺いした時、それは慢心だったと気づかされました。
負の部分や必要なものの指摘が、なんと的確な事か。それを聞いて改稿すると、自分でもわくわくする程完成度が上がり、これがプロか、と愕然としてしまいました。
そして本放送を終えた今、なんだか祭りのあとの気分です。たくさんの方達と力を合わせて、ひとつの作品を作り上げる高揚感。その中での素晴らしい人達との出会い。命が吹き込まれた作品のクオリティの高さ。
そして、顔も知らない方々からのお褒めの言葉。正に夢心地です。この気持ち、再び味わいたいと切に望む今日この頃です。本放送は終了しましたが、機会がございましたら是非聴いていただきたいと思います。
※前回第47回創作ラジオドラマ大賞 佳作第四席受賞者のコメントはこちらの記事「書きたいものを書いて賞をとるには/第44回創作テレビドラマ大賞より」で。