「観客や視聴者が登場人物に共感できるように描け、とか、魅力的に描け、と言われてもよく分からない…」というかたは、登場人物に“二面性”をもたせてみてください。そうすると、視聴者や観客に愛されるキャラクターになりますよ。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
お客をその気にさせるには
あなたが推理小説を読む時、状況を考えながら、「ふむ、あまり犯人らしいから犯人じゃないぞ、むしろ清潔な貴公子みたいな顔をしているから、こっちが犯人かもしれない」なんて考えますね。
推理小説は、これがあるから面白いのです。「誰が犯人になったって大したことはないさ」では面白くも何ともありません。どういうことかというと、読者をいつの間にか事件の中に引っぱり込んでおく必要があります。「どうでもいいや」ではいけないのです。
人物に惚れ込ませなければなりません。ものの本によると、「人物に魅力をつけなければいけない」と書いてあります。その通りですが、いい男やいい女がお客さんが出来ないことをやってくれて、それを第三者的に眺めるだけではダメなのです。
登場人物に欠陥を付ける
お客と登場人物とが、いつの間にか一緒になって、愛おしく思ったり、いじめられていた弱い人が、もう我慢できない、堪忍袋の緒が切れたとタンカを切ったりすると、まるで自分がやったような気分になります。
人間、誰でも悪を憎みますが、ドラマの中では大変悪を憎みます。勧善懲悪が、徳川の時代からずっとお芝居のテーマになっていたのでもわかるでしょう。しかし非の打ちどころのない人物が悪を懲らしめるだけでは、お客は登場人物の気分にはならないのです。
一致させるのにいちばんいいやり方は、人間の二面性を利用することなのです。
例えば、正義心に強く、チャンバラも強い、これだけでは、「主人公は自分」とはなりません。
そこで、腹っぺらしでその上お金に縁がなく、庶民一般と同じとなると、時代劇『三匹が斬る!』の役所広司の浪人役がそうですね。そうした生活の部分があると、「あー、ああいうことはあるよ」と思って、同感するのです。
そうした人間が持つ欠陥みたいなものを付けてあると、その人物は生きている人間らしく、生き生きとしてきて、お客は一緒になって心配してくれるのです。
出典:『月刊シナリオ教室』1995年8月号 「新井一 通信生を応援する!」/2016年8月号「新井一.com」
※「でもまだ二面性ってどう考えればいいかよく分からない」という方は、こちらの記事も↓
・「脚本を面白くする登場人物の描き方」はこちらからご覧ください。
※二面性についてはこちらの動画もご覧ください↓
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
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