俳優さんありきで企画
〇木村さん:この映画は私が立てた企画なので、まずは私のほうから話させていただきます。
ある日、『夜行観覧車』というテレビドラマ(TBS)を見ていたら、中川大志くんが出ていました。当時はまだ子役でしたが、素晴らしい俳優だということは知っていましたので、絶対この人と仕事がしたい、プロデューサーとして、この人の別の一面を引き出したいと思いました。
マネージャーさんに、彼が今後どんな方向の作品をやってみたいのか伺うと、少女漫画を原作としたキラキラものをやりたいんですと。こういった作品は演じられる時期が、つまり年齢が限られてくるんですね。私はもともと少女漫画が大好きで読んでいるものですから、原作を探せてくださいということになりました。
そして『きょうのキラ君』という映画を製作させていただきましたが、中川くんの演技がとにかく素晴らしいんです。いろんな引き出しが見えてきたのですが、若いので、どこにどんな引き出しがあるのか本人もまだわかっていない……という中で、私がぜひやってみてほしいと思ったのがコメディでした。
コメディでもう1回、中川くんと一緒にやりたいと思って探し出した原作が、今回の『覚悟はいいかそこの女子。』でした。
『覚悟はいいかそこの女子。』は、原作探しにフラっと本屋さんに入ったら、たまたま本屋さんにコミックス版が平積みになっていて、タイトル買いですね。読んでみたらスゴく面白い。すぐに集英社に連絡しました。そこから映画会社さんとお話をして、脚本家をどうしようかということになりました。
私は脚本家のマネジメントもしていまして、その中に李さんもいらっしゃるんですが、どなたかに頼みたいなと考えた時に李さんの名前が浮かびました。
李さんとは今まで若い人がターゲットのものをやったことがなかったんですが、コメディセンスがスゴくある方だと思っていました。ドタバタとキュンキュンの間を狙っていくのに、ちょうど適しているのではないかと思い、スケジュールを聞きました。李さんのマネジメントをしているはずなのにスケジュールを聞くという……。(笑)
〇李さん:そうなんです。「李さん、空いてますか?」って(笑)。『科捜研の女』(テレビ朝日)のシナリオがちょうど脱稿するタイミングで、出来ると思いますとお答えしました。私は2009年から『科捜研の女』を書いていまして、プロデューサーの皆さんからはサスペンスの李~と思われているようなところがありました。
なので木村さんから「『覚悟はいいかそこの女子。』の原作を読んでみて」と言われた時は「私でいいんですか?」って、ちょっと思ったんです(笑)。でも自分はもともとラブストーリーが大好きなので、ぜひやらせてくださいとお話しました。
〇木村さん:企画が決まると、かなりスピードが早く動くことが多いです。中川くんのスケジュールは、だいたいこのへんが空いていますと言われて、そうすると逆算して、このあたりですべてが揃っていなくてはいけないっていうことになる。そのスケジュールがずれてしまうと、もう組めないということになってしまうので、こればかりは運ですね。
〇李さん:そうですね、やりたいのに、(スケジュールが)重なる時は重なるっていうことがありますね。
〇木村さん:不思議ですけど、そうなんですね。でも今回はスパっとハマって、李さんにお願いすることが出来ました。それでまず映画でスタートして、そこから広げたいなと思い、ドラマの企画を立ち上げました。広げたい理由は2つありました。
1つは作品の認知を広めるため。もう1つは映画単体だとパッケージとして売りづらいという時代だからです。これはメーカーによっても違うので、ケースバイケースではあるんですが、2時間単体で売るよりも、ドラマがあったり、多少長尺のほうが売りやすいということがあります。
今回はMBSの深夜枠ということで、以前の中川くんのドラマ『監獄学園-プリズンスクール』(2015年)がとても成績が良かったので、話はすぐにまとまりました。今回は企画が立ち上がってから、比較的スムーズな流れで進行したと思います。