ヒッチコック
シナリオ・センター代表の小林です。7月も終わります。そんな今日、東京の感染者数はついに400人台に突入、463人。岐阜、沖縄と相次いで緊急宣言を独自で出しています。
東京もそうなるらしいですが、政府はさっさとGOTOキャンペーン引き下げて、検査に回すなり、医療の充実を図るなり、考えるまでもなく行動していただきたいと切に願います。
コロナに振り回されて、7月もアッという間に過ぎた感じがします。
やっと通学ができると喜こんだのもつかの間、1カ月で元の木阿弥に。
しかも、感染数はうなぎのぼり、第2波だ、第2波ではないとまたまた意見は割れるけれど、とにもかくにもなんとかせねば。
数字ばかりに踊らされている昨今、こんな数字はちょっぴり嬉しいでしょうか。
日本人の平均寿命、男女とも最高で、男性81.41歳、女性87.45歳だそうです。(笑)
今日は出身ライターの福島治子さんが陣中見舞いにおいでくださいました。
久々にお会いできて、とても嬉しかったのですが、コロナ禍だからとご遠慮くださって、立ち話で。
それでも、近況や今後のお話などできてわずかでしたが、楽しいひとときでした。
シナリオ誌9月号の作協ニュース編集後記を福島さんが書かれていらっしゃり、読みながら見識に圧倒されてしまいました。
ヒッチコックの名画「鳥」にコロナ禍の状況を例えていらっしゃるのです。
映画「鳥」は、小さな港町へ都会から来た美しい一人の女性がきてから、ある日突然鳥の大群が人々を襲います。彼女に向かって、人々は・・・
「あなたがこの町に来てからよ・・・あなたのせいよ・・・悪魔だわ!」
コロナ禍で感染リスクを背負いながら人命救助にあたる医療従事者、我々の生活を支えてくれるスーパー従業員や物流事業者への偏見や差別、コロナに感染した人への責任転嫁、自粛警察ともいわれる誤った正義漢からの攻撃など、同じですとおっしゃっていて、
「これら全ての根源にあるものは“恐怖”すなわち死への恐怖心だ。死や危険から逃れようとする防衛本能が人を時として過激な行動へと導いてしまう」(略)
「ラストは町を脱出するシーンで終わっている。いずれにしても鳥が人を襲った理由は明かにされない。
それが一層観客の恐怖心を煽るとヒッチコックは確信していたからだ。ヒッチコックは人の心がどう動くのか知り尽くしていた。だからこそかれの演出技術は卓越している。
彼が今の時代に生きていたらきっとこう言うのではなかろうか。『コロナウイルスより怖いのは、人の心だ』」
現在の人々の心の動きを分析しながら、ドラマが人間を描くというのはこういうことだと言下に書かれていて、さすがだなと思いました。
ドラマとしては、恐怖心を煽るというのは、人の心の弱さや怖さを面白く描く方策なのですが、現実の世界ではゼッタイ優しくしてほしい。ちょっと疲れてきましたもの。(笑)
おかあさんの被爆ピアノ
五藤利弘監督の「おかあさんの被爆ピアノ」が、広島、呉で上映が始まり、コロナ禍の中、たくさんの観客を呼び、感動の声をいただいています。
広島では8日で終了予定の上映も20日までに延びました。
被爆したピアノを通して、原爆の恐ろしさ、戦争の愚かしさを感じていただけるのでしょう。
被爆ピアノを修理し、自らトラックを運転して全国を回りながら平和コンサートを行っている調律師矢川光則さんをモデルに、被爆ピアノとの出会いから家族のルーツを捜し歩き始める女子大生を主人公に、五藤監督は「原爆とは」とか「戦争」とはと大上段に構えるのではなく、平和への想いを静かに心に沁みこむように描いています。
原爆体験者もどんどんいらっしゃらなくなり、原爆の悲惨さを語れる方は少なくなっています。
原爆を浴びながらも残った被爆ピアノは、そんな方々に変わって、75年経た今も平和の音を奏でて、75年前に奪われた命の声を届けてくれます。
関東でも、8月から公開が決まっています。東京ではK’scinemaで8月8・9日、神奈川では関内シネマリンで8月7・8・9日。
関西では、大阪テアトル梅田で8月7・8・9日、烏丸京都シネマで8月7・8・9日の上映です。
8月は、すべての日本人が「戦争」を考える月です。
是非とも、過去をきちんと見つめることで、未来を創りあげていきましょう。
コロナ禍でおいでになりにくいかもしれませんが、映画館は、ソーシャルディスタンスはきちんとできていますので、お出かけいただけると嬉しいです。