小説が書けるようになるための2つの方法&心得
小説の巧みな「比喩」表現の例として、前回は村上春樹の文章を引用しました(※)。
毎年ノーベル文学賞の候補に挙げられ、世界中に愛読者がいて、出す本は必ずベストセラーになる作家です。好き嫌いはともかくとして、それだけ読み手を魅了する世界があり、文章も優れているからでしょう。
少し脇にずれるのですが、「どうすれば書けるようになりますか?」という作家志望者からの質問を受けることがあって、いつも返答に困ります。というのは、その書き手の作品、レベルによって当然アドバイスが違ってくるし、当たり障りのない一般論や精神論は極力述べたくないから。
ただ、ほとんどの志望者に当てはまる方法なり、心得が2つあります。
ひとつは「書き続ける」こと。(試行錯誤や悩んだりはしつつも)真っ白な原稿用紙(パソコン画面)を埋め続ける。これができる人だけが作家になれますし、今プロとして活躍している人は、認められないアマチュア時代に、誰もがそうして来ました。例外はありません。
そしてもうひとつは、「優れた書き手の作品、文章から学ぶ(盗む)」こと。
両方とも一般論(精神論)じゃないか?と思われるかもしれませんが、多くの志望者の作品に触れていて、常々感じることです。それも2つ目の「学ぶ(盗む)」ということを、ほとんどの方はやっていない。
ただし、盗み方は要注意。例えば村上春樹の文体に影響を受けすぎて真似てしまうと、いかにも春樹調になってしまって、薄っぺらな雰囲気だけの現代小説になってしまう。
村上春樹が売れっ子作家になったばかりの頃(『羊をめぐる冒険』前後)、純文学系の小説コンクールには、いかにも春樹もどき小説ばかり集まっていたといいます。
学ぶ、盗むというのは、(むろん村上春樹じゃなくてもいい、自分の愛読する)作家の作品の表現法なり作劇法を探り出し、理解した上で参考にして、自分なりの文章、世界として書けるか?という意味です。