員数

シナリオ・センター代表の小林です。この1週間いただいた夏休みは、猛暑猛暑の毎日。何しろアスファルトのところでハルが飛びましたからね、熱くて。こんなこと14年一緒にいて初めて、本当に熱した鉄板のようで足はやけどしそうでした。
で、1週間ずーっと静かに静かにこもっておりましたが、最後の週末、意を決してテニスを午前中少々。まああ～、暑いのってなんのって、頭から湯気が出るってこういうこと？って感じ。コロナの前に熱中症で死んでしまうかと思いつつ、なんとか無事生還。シャワー後の冷え冷えのビールの旨さよ。はぁ～。生きていてよかった。
皆様はどのようにお過ごしでしたか。録画を11作品、本を5冊と熱中症少々、私の夏休みの成果はこんなものです。

休みの間に、終戦の日を迎えました。
戦後75年、長きにわたり平和な日本をもたらしてくれた日本国憲法に敬意を表しつつ、過去をきちんと見つめなおすことの難しさを感じました。
亡くなった三浦春馬さんのでていた「太陽の子」（ＮＨＫ）を拝見しました。日本でも原子爆弾の研究をしていたのですね。

15日朝日新聞の「折々の言葉」に英国の思想家ジョン・Ｓ・ミルが先達の言葉を「ベンサムの金言」としていった言葉が取り上げられていました。
「だれでも一人として数え、だれも一人以上に数えてはならない」
一人一人は社会の単位にすぎないのではなく、どの「一」も同じ重さを持つということ。
公平と平等の大切さを説いたこの言葉に、人を人とも思わない員数でしか考えない戦争というものを描いた浅田次郎さんの小説「終わらざる夏」を思い出しました。
やはり新聞ですが、奉仕を疑わなかった軍国少女だった92歳の半田たつ子さんのお話も重く突き刺さりました。
「戦後に誓った。二度と自分で考えることもなしに、唯々諾々と従う事だけはすまいと。
なのに、コロナ禍に直面して、再び同じ渦にのみ込まれた気分になっていた。
戦後に誓ったことを再び胸に刻んだ。
自分で学び、考える。過度に恐れず、踊らされず。
日々の暮らしを大切にすることから始めたい。」

新井一とまさに同じ気持ちの方々がたくさんいらっしゃるのだと思いました。経験しているからこその重い深い言葉だと思うのです。
戦後でありながら、戦中の様相を呈している今こそ、コロナを通して、「自分で学び、考える」、「自分の想い、考えを伝える」ことを大切にしていきましょう。

リアルプリンセス　夢のあと

昨年、ポプラ文庫から「リアルプリンセス」という古今東西のお姫様童話を6人の作家がアレンジした面白い短編小説が上梓されました。
「鉢かづき姫」「踊る12人のお姫様」「ラプンツェル」「エンドウ豆の上に寝たお姫様」「乙姫様」「眠り姫」を現代に置き換えて、新たなお話が生まれました。
この中で「眠り姫」をアレンジしたのが出身ライターの大山淳子さん。
ご存じ「猫弁シリーズ」初め、映画になった「猫は抱くもの」や「「あずかりやさん」「赤い靴」など多彩な小説を書かれている大山さんです。
「眠り姫」の童話から現代に置き換えた小説「夢のあと」は、構成のすばらしさに、姉妹のキャラクターの見事さに驚嘆してしまいます。

この小説が、朗読とアニメーションを組み合わせた新しい手法で、ＮＨＫで放映されます。
「第１回　眠り姫」作：大山淳子「夢のあと」　
放送予定：総合 8月21日（金）よる10時45分から11時15分
朗読：広末涼子　出演：凛美、井上想良、田中ヒロコ ほか

何事にも準備を怠らない貴子は、受験、就職、結婚、そしてキャリアアップと思い通りの人生を歩んできた。唯一うまくいかなかった妊娠も、３７歳にしてようやく念願がかない、間もなく臨月を迎えようとしている。

今を生きる女性が真実の愛に目覚める「眠り姫」のお話ですというのがＮＨＫの宣伝文句ですが、ちょっと甘すぎ、そんな簡単なものではありません。
生きるということの意味も、愛というものの意味も深い 深い眠りの底からどのように目覚めるものなのか・・・新たな試みの朗読＆アニメとともに、是非とも小説も読んでください。
私の一押しはもちろん大山淳子さんの「夢のあと」ですが、それぞれ読み手によって、様々な受けとりかたもあるかと思います。
6人の作家のアンソロジーをお楽しみください。
放映とは別ですが、小説「リアルプリンセス」を読むと、どのお話も脚色のお勉強にもなります。