「“よくあるストーリー”になっちゃうんだよな……」とお悩みのかた、そうならないためには何を意識したらいいか、をご紹介します。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
人の胸を打つのは「人間」。だから人間を描く。
小説でも戯曲でも、もちろんシナリオも、究極は人間を描くことに外なりません。
なぜ人間を描くのでしょうか。ギリシャ時代から何億という脚本や小説が書かれて、いろいろな人が描かれ、それを見ている人を感動させたり、泣かせたり、笑わせてきました。
人の胸を打つのは人間ですから、何億と書かれようと、人間の気持ちは無尽蔵。しかも人間の気持ちは複雑で裏と表、本音と建前があります。あの人妻に恋していけないという気持ちと、どうしてもあきらめきれない本音があります。人間には業というか、押さえきれない欲望と理性との闘いがあります。
そうしたものは作者の視点によって、いろいろな角度から採り上げることができます。
生きた人間を描くにはキャラクター表を作る
またそんなむずかしいことでなくても、例えば学校の授業中におしっこに行きたくても、怖い先生に言えないし、漏れてきそうになる不安、やっと授業が終わってトイレに行くと、先客がいるなどの悩みは、「ああ」と共感されると思います。今の話は視聴率の高い『ちびまる子ちゃん』の一節です。
いい悪いにかかわらず、そんな気持ちになるよね、ということが書けていれば一流作品です。『サザエさん』のそそっかしさも『アンパンマン』のヒューマニズムが歓迎されているのも、人間が描けているからです。
倉本總氏の『六羽のかもめ』は、登場人物に共感を呼ぶものがありますし、今まで書かれなかった人間観察です。山田太一氏の『岸辺のアルバム』における人妻の心の動きは近松門左衛門に通じるものがあります。
ところが多くの作品はストーリーの展開に追われて、パターン的な行動をするものが多いのです。あなたの作品もストーリーに足をとられていませんか。
では生きた人間を描くにはどうしたらいいのか。コツを申し上げましょう。
キャラクター表を作るのです。
充分に人物を描いているつもりでも、実ははっきりしていないものなのです。背は高いのか、眼鏡は掛けているのか、頭に浮かばせることが必要なのです。しかしそれだけではセリフや動作は湧いてはきません。
そこでキャラクター表を作って、その質問に答えてみるのです。そうするといやでも目に浮かんでくるものです。
出典:『月刊シナリオ教室』1990年10月号 「新井一 十則集」/2017年9月号「新井一.com」
※新井一は「ドラマとは人間を描くこと」と言います。こちらの記事「ドラマとは何か 改めて考えてみました。」も併せてご覧ください。
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
今回の記事をご覧になって「ちょっとシナリオ、書いてみたいな…」と思われたかた、是非お気軽にご参加ください。「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
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