ゼミで課題を発表して「内容は分かったけど、うーん……」と言われた経験をおもちのかた、もしかして、いきなり書いていませんか? 今回は、「話は分かるが面白くない」とならないシナリオを書くための方法をご紹介します。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
「ああなってこうなって」と考えると、話はわかるけど面白くない
近頃、会員諸氏の20枚シナリオを読んで痛切に感じるのは、シーンの配列の仕方がお行儀よく平凡だということ。意外性のない話の運びで、各シーンがおなじみのところ、茶の間とか喫茶店などでストーリーを展開させていることです。
つまり絵柄になっていません。話はわかるが面白くないという結果になります。なぜこうなるのだろうと考えてみたのですが、原因の1つとして、恐らく「ハコ書」を作ってないのではないかと思われます。
20枚シナリオだから、別にハコ書を作らなくても、「ああなってこうなって」という具合に、すぐ頭の中に描くことができるので、ぶっつけで書いているのだろうと思います。
箱の姿をした枠があると、絵柄を中心にした発想が浮かぶ
シナリオは普通の文章と違って、地の文もなければ段落もありません。全部絵で説明してゆくより方法がないのです。同時にカットバックやシーンとシーンとの相剋、アップなど、つなぎによる表現を積み重ねていくのです。そうした映像独得の方法によって展開していくのがシナリオです。
そこで今言ったつなぎという特殊な技法を駆使していく方法として、ハコ書という構成方法が発明されているのです。
ハコ書とは簡単に申し上げると、シーンのあらましを箇条書きで書き、筋の流れを見やすくするために箱で囲むので、ハコ書と言われています。『シナリオの基礎技術』の本では構成表としてお話してあり、映画の画面のような枠を作って、その枠(箱)に1シーンずつドラマを埋めていくということです。
何でもないようですが、先に箱の姿をした枠があると、「このシーンは何をどう書くか」と考えるとき、自然に絵柄を中心にした発想が浮かぶのです。それにはまず場所を考えなければなりません。それが人間の思考です。
場所の設定をしないと、「ここでお互いに愛し合うのだが、やがて別れる」というように非常に抽象的な考え方になります。場所が決まると、愛し方も具体的なものが浮かんできます。抽象的な思考が、ハコ書で具体的になっていくのです。発想を具体的に煮詰めていくために、ハコ書を見直しましょう。
出典:『月刊シナリオ教室』1991年「新井語録」/2019年7月号「新井一.com」
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
今回の記事をご覧になって「ちょっとシナリオ、書いてみたいな…」と思われたかた、是非お気軽にご参加ください。「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
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