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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

創作者の心意気

エール(NHKより)

心意気1

シナリオ・センター代表の小林です。朝晩は寒いと感じるほどになってきました。
気温の高低差は体調に関わりますから、上着やセーターの1枚でも羽織れるものを持って出かけた方がいいようです。
今日の東京感染者150名。世界的にもまた増えてきていますし、このまま年を越して、来年はいかなるものなのか・・・。
菅首相は、オリンピックを来年は開催すると宣言されていましたが、国民の84%は無理だと思っています。
日本だけの問題ではありませんから、日本では14日留め置かないとか色々なことを言ってはいますが、世界中まだコロナは蔓延中だし、国によっての対応もまちまちですし、どう考えても難しいだろうと思うのが、まあ、一般的な感覚だと思うのですが。
気合だけでは越えられないことはいっぱいあるのに、どうも日本のお上は気合とか心意気で乗り越えようとする、具体的な方策など考えているのか全く見えない、それは竹槍でアメリカと戦おうとした時の内閣と同じではないでしょうか。
私の祖父は福島で軍需工場をやっていたそうですが、軍需工場でなにを作っていたかというと木材で作った荷車。
材木屋だったので作らされたようですが、荷車が戦争でどう役立ったのか、今となっては、誰もその使い道すら知りません。
もっと専門家の、学者の意見を聴いて、真剣に考えた方がいいと思います。
戦後の反省を踏まえてできた日本学術会議、イエスマンの声だけでなく耳の痛いことも含めて、他人の話しを聴くことは大切なことです。
できること、できないこと、今やれること、今やれないこと、目先のことにとらわれずに考えてほしいものです。

心意気2

出身ライターの清水友佳子さんと嶋田うれ葉さんが脚本を担当されているNHK朝ドラ「エール」、第18週の「戦場の歌」(10/12~16放映)朝ドラの域を超えた凄惨な戦場描写により戦争の悲惨さを伝えたことで大きな反響を呼び、急遽、今月24日深夜2:35~3:50に一挙再放送されることになったそうです。

この回は演出家の吉田照幸さんが書かれていらっしゃるのですが、インパール作戦など戦争を生々しく描いています。
主人公はビルマの戦場で恩師の死に直面しますが、映像的にも撃たれて死んでいく兵士などの描写は驚くほど生々しく迫力ある凄惨な映像でした。
しかも、この週は朝の元気をもらえる「エール」の主題歌も流さず、戦争場面から入っていっていました。
今まで兵士を鼓舞する曲を作っていた主人公の裕一が、戦争の真実を知り、それが戦後、平和を願う歌、エールを送る歌を作るきっかけとなるところなので、大事な場面です。
ですが、今までの朝ドラだったら、ここまで見せなかったのではと思われる描き方をされたのは、制作に携わる人としての良心を感じました。
また、焼け跡で音のお母さん(薬師丸ひろ子さん)が讃美歌「うるわしの白百合」を歌われたことが、感動を呼んでいます。
シナリオでは「コンチクショー」と叫ぶという全く違った表現だったのですが、薬師丸さんの提案で戦時中迫害され続けてきたクリスチャンだったら、自然と出るのは讃美歌だろうとのことで歌に変えたとか。
「この讃美歌の歌詞に出てくる百合には“復活”という意味合いもあります。戦争を経験していない私たちには、今を生き抜き、前を向いてに頑張ろうという復活の思いが、唯一表現できることではないかと思い、この曲を歌いました」と熱唱に込めた思いを薬師丸ひろ子さんは語られたそうです。
ドラマの中で、戦争だけではありませんが、事実をどう描くかは、これこそ脚本家、演出家の腕です。
今回は、役者である薬師丸さんの感性の良さに脱帽ですが、説明セリフではない、感情セリフも情緒セリフも越えた讃美歌「うるわしの白百合」の描写は見事です。
「エール」製作陣がどういう思いで、朝に凄惨なシーンをぶつけられたのかわかりませんが、戦中と戦後の生き方が変わることをわかったもらうためには、真実を見た主人公同様に視聴者にも味わってほしかったのではと感じました。

戦中に軍に協力したということで、戦後厳しい攻撃を受けた芸術家文化人はたくさんいます。「アッツ島の戦い」など描いた画家の藤田嗣二はつと有名ですね。
戦中は、誰もが戦争反対だの戦争はいやだのは言えなかった時代であり、本心とは違ったとしても、軍の希望する創作するしか許されなかったのです。
また今のマスコミにも通じますが、大本営発表ということで嘘の戦況ばかり流され、それしか知り得なかった庶民になにができたのでしょうか。
創作者のみならず私たちは、常に疑いをもってみること、しっかりと本質を見つめる目を養わなければ、またこの時代になるやもしれません。
新井一がシナリオ・センターを創設し、日本中の人にシナリオを描いてもらいたいという想いは、戦争からうまれたのです。
自分自身も戦争反対と声を出せずに加担してしまったことへの反省と、人が自分で想い、考え、伝える力を持つことの重要性を、身につける大切さを身をもって知ったからです。

朝ドラをご覧になったことがない方も、すごく遅い時間ですが再放送をご覧になってください。
ドラマ作りとはどういうものか、どのように描けばいいのかなど、脚本家としての目で見ていただくことで、映像表現に、人間を描くドラマづくりに役立つかと思います。

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