「シナリオのテクニック・手法を身につけると小説だって書ける!」というおいしい話を、脚本家・作家であるシナリオ・センター講師柏田道夫の『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
文章力・描写力・構成力などなど、小説を書くために必要な“チカラ”は沢山ありますが、これらを鍛えるには小説を書く習慣を身につけないといけませんよね。そのために柏田講師がオススメしている方法が今回お話しする、「まずはショートショート、短編をたくさん書くこと」です。
入選に値する作品は、小説として読める文章力が大前提
大手出版社が主宰する長編のコンクールなどは、受賞すれば多額の賞金を貰えたり、華々しいデビュー、作品の出版化への道筋がつけられます。そうしたメジャー系コンクールは特に困難です。
そもそも(400字詰めで)数百枚の長編を書き上げるだけでも、かなりの時間と労力が必要です。
また、メジャー系の賞(に限らず)で、デビューできたとしても、そのまま消えてしまう書き手もたくさんいます。受賞2作目のクオリティが大事だ、とよく言われるのは、この生き残りの有無に関わるからです。その話は機会があれば、ということで、まずは受賞を目指して頑張りたい。
で、前回述べたように、いきなり長編のコンクールを目指して数ヶ月(もしくは数年)もかけて書いて、というアプローチは、ダメとは言いませんが、かなりリスクをともないます。
入選に値する作品は、小説として読める文章力が大前提で、加えて題材、世界、テーマの新しさなり切り口が求められますし、構成や人物像、ディテールの確かさなどなど、総じての完成度が求められます。
これはシナリオでも同じでしょう。ただ、小説の場合は、より前提としての文章力が必要となります。
だからといって、シナリオは文章力がなくてもいい、という意味ではありませんよ。シナリオもト書の的確な表現であったり、なによりいいセリフが書けるか、というのが重要で、それは文章力の有無に関わります。
まずは短編で文章力を身につける
それはそれとして、小説はなにより文章表現ですので、読んでいて読者を立ち止まらせる、混乱させる文章で書かれていたのでは、内容うんぬんの前に落選とされてしまいます。
長編、短編うんぬんの前に、この最低限通用する文章をまず身につけてほしい。さらにこの文章力だけでなく、小説を成立させるための描写力や、読者を小説世界に導く手法、構成力をつけるために、まずはショートショート、短編をたくさん書くことをオススメします。
ところでシナリオ・センターでは、ゼミや通信でも、受講生の皆さんに20枚シナリオをたくさん書いてもらいます。そこでは、20枚でオチがついて終わり、というショートストーリーではなく、デッサンとしてシーンや人物、ドラマを描くための訓練(レッスン)だ、と講師から常々言われているはず。
こうしたレッスンに物足りなさや焦りを感じる受講生もいます。実際のシナリオコンクール(特にメジャー系)は、1時間ドラマや映画などがほとんどですから。
スクールによっては、半年くらいかけて長編を1作書かせて卒業、といったシステムのところもあります。それが間違いとは申しませんが、実際に20枚シナリオ枚のデッサンシステムによって、シナリオ表現力をしっかりと身につけたシナリオ・センターの受講生の方が、圧倒的に結果を示しています。
これは小説でも同じだと思います。いきなりの長編を長時間、労力を注いで書いて、あえなく沈没というよりも、まずは短い枚数の作品をデッサンのように書いて力をつけるのです。
すぐさまデビュー、出版化というのは難しいとしても、ショートショートや短編小説のコンクールもたくさんあります。レッスンとして限られた枚数の中で、通用する作品を書き上げるのです。
こちらの受賞ももちろん簡単ではありません。けれども、文章力というのは、当然ながらたくさん書かないと身に付きません。文章は書かないと下手(稚拙)なままですが、書けば書くほど上達します。書く習慣を身につけるためにも、まずはショートショートから始めましょう。
出典:柏田道夫 著『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(月刊シナリオ教室2017年10月号)より
★次回は1月2日に更新予定です★
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小説家・脚本家 柏田道夫の「シナリオ技法で小説を書こう」ブログ記事一覧はこちらからご覧ください。比喩表現のほか、小説の人称や視点や描写などについても学んでいきましょう。
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