シナリオコンクールで賞をとった脚本があまり映像化されないのは、なぜだと思いますか?今回、新井一が語る「その原因」を参考にしていただくと、今後アナタがどのようなことに気をつけて脚本を書けばいいか、ひいては、どう書けば賞がとれて映像化もしてもらえるのか、が見えてきますよ。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
当選作品が映像化にならないのは
懸賞募集の当選作品は、せっかく当選までしたのに、なぜなかなか映画化やドラマ化にならないのだろうという疑問があります。原因としては、よい作品ではありますが、魅力がないのではなかろうか、ということです。
魅力とは、つまりプロデューサーが「ああこれをやってみたいな」、監督さんならば「撮ってみたいな」と、俳優さんは「ぜひこのキャラクターをやらせてほしい」というように、自らやりたくなる衝動に掻き立てられるようなものではないでしょうか。
特にプロデューサー氏ならば「予算は何とかして会社を口説いてでも」と制作意欲が沸くものでなくてはならないでしょう。当選はしたけれど、映像化はされないという作品は、それが欠けているのではないでしょうか。
映像化されない3つの原因と、映像化されるために重要な「場面設定」
欠点はいろいろあると思いますが、
①ストーリーが真面目すぎて暗い。日本人はどうも一生懸命になるとストーリーも人物も暗くなるものが多いようです。
②キャラクターに魅力がない。ストーリー展開させるためにいろいろと動いていますが、面白味が出てこない。何かウィークポイントがあれば、主人公でもかえって魅力的になるのにと思います。役者さんにとっては、仕どころ、つまりこの場面こそ観客に観てもらおうと場面設定がない。
③監督さんにとっても、ここはうまく撮ってみせるぞ、という正念場のないことも大きな欠陥となると思われます。
もう1つ力説したいのは、場面設定です。
一度統計を取ったら面白いと思うのですが、柱で多いのが、茶の間、応接間、玄関、台所、浴室、庭、路地や横丁、公園、マンションの一室、会社、学校、電車、プラットフォーム、公衆電話、警察の取り調べ室、留置場、裁判所、喫茶店、美容院、キャバレーや繁華街街、ラブホテルや旅館の一室、デパートの中、きりがありませんがそんなところです。
場所として魅力のあるところ(美しいところではありません)がほしいのです。
画面には人物とその背景しか映りません。その半分以上のウエイトを持つ場所にも、大いに頭を使う必要があるのではないでしょうか。すべての名作はドラマそのものが素晴らしいのですが、背景にも必ず魅力があります。
出典:『月刊シナリオ教室』1984年11月号「新井一 巻頭言」/2019年9月号「新井一.com」
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
今回の記事をご覧になって「ちょっとシナリオ、書いてみたいな…」と思われたかた、是非お気軽にご参加ください。「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
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