==アナタの脚本、映像が浮かびますか?耳で聞いただけで分かりますか?「自信がない……」という方にオススメするのがラジオドラマを書くこと。それはなぜか。その理由が今回ご紹介するコメントから分かると思います。是非参考に==
NHK大阪拠点放送局(BK)主催「2020年度第41回BKラジオドラマ脚本賞」。
応募総数141篇の中から最優秀賞に輝いたのは山本昌子さん(大阪校研修科)の『摩耶ぎつね』。
BKラジオドラマ脚本賞のサイトでは、「キャラクターが魅力的で、おとぎ話のようだが新鮮さを感じられる作品。アニメのような映像が浮かぶようだが、音声ドラマとしてぜひ聞いてみたい作品だと高評価が集まる」という講評が掲載されています。同サイトにはあらすじ全文が掲載されていますが、こちらでは一部をご紹介↓
『摩耶ぎつね』あらすじ
キツネの娘・摩耶は母の敵かたきを討つため、キツネのみこさまの呪文で冬一番の雪が降るまでの半年間、人間に化けさせてもらう。敵討ちができなければ摩耶の命は尽きる条件で。敵の町絵師・六興は灘の山手で、飯炊きの菊水と暮らしていた。三年前、山で助けた女ギツネを藍那と名付けて飼いながら描いた『狐の嫁入り行列図屏風』が評判を呼び、ひとかどの絵師となっていた。だが藍那が亡くなってからは絵心が衰え、今では草紙画版画の下書きの仕事で細々と生き延びている。そんな頃、摩耶が弟子にしてほしいとやってくる――
摩耶は一体どうなってしまうのか、このあらすじだけでも引き込まれますよね。BKによると、今後ラジオドラマ化され、NHK FMシアターで全国放送されるとのこと。
その前に、山本さんのコメントをご覧ください。作品に込めた想いの他、「ラジオドラマを書くとき、どんなことを意識すればいいのか」もお話しいただいていますので、特にその部分、脚本家志望者は要チェックです!
「シナリオの勉強を始めた当初から毎年応募」
――受賞の手応えはありましたか?
〇山本さん:今回の作品に関しては、あまり自信はありませんでした。かつて自信をもって応募した作品がことごとく落選していましたので、まったく期待してなかったのです。
最終選考に残ったかどうかも知らなかったので、NHKのディレクターさんからお電話をいただき、驚いて舞い上がってしまいました。いろいろな質問に答えたあと、最後にもう一度、『最優秀賞』ですね、一番ですね、と確認したくらいです。
――ラジオドラマを書いたのは今回が初めてですか?それとも、以前から、ですか?
ラジオドラマとの“出会い”を お聞かせください。
〇山本さん:シナリオの勉強を始めて6年半になりますが、当初から、このBKラジオドラマ脚本賞を第一の目標に掲げて、毎年、応募してきました。6作目にして認めていただけたということです。BK以外のラジオドラマの脚本賞にも、いろいろ応募はしています。
――なぜラジオドラマに挑戦しようと思ったのですか?
〇山本さん:ラジオドラマは映像に頼らない分、ことばが大切で、より小説的と聞いたからです。15年前に『文章力を鍛えます』という教室に入り、それ以来、主に小説を書いてきました。その経験からラジオドラマの奥深さに惹かれたのです。
「絵や情景をことばで表現できるように」
――今回書いたキッカケを教えてください。
〇山本さん:最初に『摩耶ぎつね』の言葉ありき、で書き始めました。私の父が生前、地元の公民館の小説教室に通っていたのですが、当時、父の趣味にまったく興味も関心もありませんでした。
けれどもなぜか『摩耶ぎつね』という言葉だけが印象に残りました。いまの私が新しいシナリオの題材を考えているとき、ふと『摩耶ぎつね』という言葉が思い浮かんだのです。
それが小説の題名だったのか、テーマなのか、昔話なのか、言い伝えなのか、わからないまま、きつねは化ける、きつね憑き、化けたきつねが出てくるなら昔話、と発想をつなぎ、きつねが美しい娘に化けてやってくる場面を書き始めたのです。
――特にどんなことを心掛けましたか?
〇山本さん:時代劇ですので、むかしのことば遣いの美しさや方言の楽しさ、使わざるをえない現代ことばが不自然にならないよう、耳で聞いたときの分かりやすさを心掛けました。
また、キツネの娘が母のカタキの絵師に次第に惹かれていき、カタキ討ちのタイムリミットが迫る中、思うにまかせない心の惑いを描くべく、心を砕きました。
――「ラジオドラマだからこそココを意識して書いた」というところはありますか?
〇山本さん:絵や情景をことばで表現できるよう、工夫を重ねました。
――ラジオドラマ脚本コンクールで賞をとりたい生徒さんに向けてメッセージをお願いします。
〇山本さん:ことばを大切にしてください。そして無駄な場面、余計なセリフはないか、もっとすっきりした言い回しがあるのではないか、耳で聞いただけで理解できるよう、なんども練り直してください。見直すたびに書き直しがあるものです。
ラジオドラマコンクールに出したいかたはこちらのブログも併せて
■「第41回BKラジオドラマ脚本賞 佳作受賞 圡山由紀子さん」
■「ラジオドラマ脚本コンクールで賞をとる2018①/山本雅嗣さん(第39回BKラジオドラマ大賞最優秀賞受賞)」