「非日常的な世界を描きたいけど、なんか嘘っぽくなるんだよな……」とお悩みでしたら、ゴジラを思い出してください。なぜゴジラは観客に無理なく受け入れられたのか。そこに創作のヒントがあります。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
予想もつかない「変化」を求めている
お客が娯楽として求めているものに、「非日常性」があります。
お客さんというのは、決まりきった時間に会社に行って、決まりきった時間に「ただいま」と帰ってきて、食事をして寝る、こんな日常生活にみんな飽き飽きしているのです。何か変わったことはないか仔猫ちゃん、ということになります。常に変化を求めているのです。
スポーツの好きな人は、試合の中で予想もつかなかった変化に興奮します。生活の中では、体験することのできないような珍奇な話、怖い話、馬鹿馬鹿しい話などを求めています。
非日常的な話で観客を納得させるには「動機づけ」
しかし、日常で経験しないような話ですと、そんな「馬鹿な」と言われることになってしまいます。誰もが変な話や誇張した話、飛躍した話は大好きなのですが、納得がいかないものはつまりません。お客さんはなぜそうなったのかを求めます。
例えばトリックといっても、ちゃんとその裏打ちがなかったり、トリックの解明をしなかったりすると、馬鹿馬鹿しいと軽蔑されることになります。
そこでその無理な話に理屈をつけなければなりません。ドラマでいうと、動機づけというやつです。ドラマでも、面白い話を作るときには、話が無理なく進展するために必要な動機づけがなくてはなりません。
よく例にとりますが、あの有名な『ゴジラ』が、地球になぜ出現したのか、ただ突然現れたのでは、観客は一様に馬鹿にします。
ところが、そのゴジラの出現の理由は、その頃、水爆の地下核爆発を地球上の強国がこぞってしていたので、これに対する国民の非難を込めて、地球人のそうした理不尽な仕打ちに対して、今まで平和に地下で眠っていたゴジラが、寝ているわけにはゆかず、地球上に姿を現したということになっています。
科学的にはまったく解明されない嘘ですが、その当時の人々の怒りを背景に、無理なく理解されたというわけです。このことはよく覚えていてください。そうした一般の人の感情にのせて説明をすれば、無理なく、その拒否反応を抑えることが出来るのです。
出典:『月刊シナリオ教室』1994年2月号「新井一 十則集」/2015年10月号「新井一.com」
※非日常的な物語を書くとき、こちらの記事「『永遠の誘惑』に学ぶ/ありえない設定にするとき」もご覧ください。
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
今回の記事をご覧になって「ちょっとシナリオ、書いてみたいな…」と思われたかた、是非お気軽にご参加ください。
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
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