「人間を描くってどういうこと?」というかたは、こちらの記事で疑問解消してください。今回ご紹介する人間の “ある面”に注目すると、「人間を描くってこういうことか!」と腑に落ちると思いますよ。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
人間誰でも表裏がある
生きている人間は、誰でもが二面性、あるいはもっと多面性を持っています。
真面目な校長先生で、職員室では教員と教育方針について打ち合わせし、生徒に対してはやさしく注意をする。家へ帰れば、夕食に1本くらいつけて、寝るまで読書。
昼間はそれでいいのですが、家へ帰ると、カラオケの装置が買ってあり、風呂場でも歌い、マイクロホンを孫と取りっこするような校長先生ですと、何か人間性が感じられますね。
校長先生ばかりでなく、あなたも私も、ちょっと人には言えないものを持っているものです。ドラマでは人間を描くについて、それを利用して、登場人物に二面性を作ってやると、さっき申し上げた深味が出てくるのです。
主人公が身近な存在になって感情移入しやすくなる
お客さんが、映画やテレビを見るということは、どういうことなのでしょうか?
ひとつは自分にはないものを求める。例えば、腕力が強くて、気に入らないヤツがいるとやっつける。剣がうまくて悪者をやっつける。ちょっとやってみたいですね。
ところが、現実にはそうは行きません。電車の中で、酔っ払いが美しいOLに絡んでいて、目に余るものがある。「嫌なヤツだな」と思いながら、「君、やめたまえ」とは言えないでモジモジしている。
普通の人って、そんなだらしがないものです。でも、やっつけてやりたいとは思っています。だからそれをドラマの中で実際に、自分に代わってやってもらうと、溜飲が下がるというものです。だから、ああいう人になりたいなあという、あこがれる人物を好みます。これをあこがれ性というのです。
しかしこれだけでは一面でしかありません。これにもうひとつの面をつけなければなりません。これを忘れてしまいがちになるのですが、もうひとつの面が「共通性」です。共通性とは、「なーんだ、俺と同じじゃないか」という親近感を持たせることです。これによって、その主人公が非常に近くなりますから、感情移入がとても楽になります。
そしてもうひとつの面はウイークポイントをおくことです。人間の弱さです。あのアメリカを苦しめたフセイン大統領は、ゴキブリが大嫌いで、ゴキブリを見ると飛び上がってしまったそうです。独裁者の顔が、急に近くなるでしょう。
出典:『月刊シナリオ教室』1992年10月号「新井一 十則集」/2014年4月号「新井一.com」
※こちらの記事「登場人物に共感 してもらうには二面性」も併せてご覧ください。
※「あこがれ性」についてはこちらの動画をご覧ください。
※「共通性」についてはこちらの動画をご覧ください。
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
今回の記事をご覧になって「ちょっとシナリオ、書いてみたいな…」と思われたかた、是非お気軽にご参加ください。
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
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