精神
シナリオ・センター代表の小林です。ここ数日の暖かさに誘われて、日曜日のひととき近所を散歩しました。
愛犬ハルは15歳になり、人間でいえば80歳くらいのおばあさん犬なので、足腰が弱り長い散歩はしなくなったので、寂しくひとり散歩です。
うちの周りは案外自然が多いので、もう梅が咲いていたり、菜の花が咲いていたりと、春はそこまで来ている感じも・・・何が起きても、草花は変わらず季節を教えてくれます。
暮れ行く夕日を眺めながら、ホテルのラウンジで本を読み、お茶して、久しぶりにホッとしたひとときでした。
今日、全豪オープン第1回戦、大阪なおみ選手は快勝、錦織圭選手は12年ぶりの1回戦敗退と明暗分けた結果にちょっと寂しい気持ちになります。
コロナ禍で、全豪オープン選手のためのチャーター機からコロナ感染者が出て、錦織選手らは2週間ホテルに閉じ込められ、ホテルの従業員にもまた感染者が出てと、練習もできないままコートに立ったわけで、プロは特に練習できるできないは大きなことなのでしょうね。
それでなくとも錦織選手は復帰戦でしたのに。(涙)
細心の注意をしてチャーター機まで飛ばしても、こういうことは起こるのですから、オリンピックはどうなのでしょう。
競技ごとにそうなったら・・・大パニックですよね、医療従事者だって、コロナで手いっぱいなのにどうなっちゃうんでしょう。
選手だって、納得いく練習もできないまま、できた人できない人の差に悩まれるだろうし、精神論で乗り切れるものではないですものね。
「人のふり見て我が振り直せ」ということわざもあります。
コロナ抑えに成功したといわれるオーストラリアですらこうですから、日本も深く考えてほしいものです。
やるのであれば、精神論でなく、きちんとした準備、手段を講じて。なんだか、上に立つ人たちがみーんな森さんと同じ穴の・・・みたいにみえてしまうのですが。
映画の字幕ナビ
セリフは、シナリオの命でもあります。セリフがうまい下手は、映像表現の特性をどこまで理解しているかにかかっているような気がします。
シナリオ・センター出身で数多くの映画の日本語字幕を担当されている落合寿和さんが字幕のさまざまなテクニックや表現方法を初めて公開しました。
「映画の字幕ナビ」(ステイングレイ刊)
字幕翻訳家への道から訳しのテクニック、映画の字幕の実際など面白く書いています。
この本は、「セリフが得意でない」「いいセリフを書きたい」と思っていらっしゃる脚本家志望の方に読んでいただくと、とてもいいシナリオの勉強になります。
字幕づくりのやり方を知ると、なにが大事なのかということがとてもよくわかるからです。
字幕って1秒4文字というのが基本なのだそうです。
それを日本語でわかるようなセリフにするには、決してその英語のセリフだけを直訳しているわけではないのです。
「字幕翻訳の難しさは、字数制限が厳しく、時間がない状態で情報を伝えることではありません。
どこまでも情報を伏線化し、複線化して仕込んでいくか、音声だけでなく映像を利用した字幕を作ることも1つの手法ですし、文字数を抑えて印象に残すべきキーワードを際立たせる方法もあります」
「字幕翻訳で重要なのは①ポイントになるセリフはどれか。
②キャラクターの個性を出す言い回しはないか。
③キャラクター設定から考えて日本語ではどのような口調がよいのか等など。(略)脚本家の視点でストーリーを消化する。これが脚本訳です。」
ジェラシックワールド(2015年公開)について、こう書かれています。
「字幕ではヒーローの答えが『散歩だよ、この恐ろしい森をね』になっていました。
途方に暮れたマッチョなヒーローの語尾が「ね」だと優しい感じになります。
試しに吹き替え版を見ると「森をな」と言っていました。
実際、吹き替えで「森をね」にしたら声優さんは演技しずらいはずです。
字幕は音と一体となって認識されるので、こうした語尾(口調)も当然意識しないといけません」
いくつか例を抜粋しましたので、私が脚本家を志している方に読んでいただきたい意味がおわかりいただけたかと思います。
きっとこれは、俳優さんにも監督にも通じることです。
脚本の全体構成が、キャラクターづくりが、どれだけ大事なのか。
セリフは単体ではない、キャラクター、ストーリーを形成するために大切なものです。