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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

学ぼう、先人に。

TBS名プロデューサー・演出家の鴨下信一さん

こうきたか!

シナリオ・センター代表の小林です。
色々いろいろありましたが、まだなんの解決にもならないけれど、とりあえず森会長が会長職を辞任され、その後勝手に後任指名した川渕さんもご辞退され、さてさて組織委員会の力量が試されるところです。

出身ライターの柏原寛司さんのFacebookでのコメントが素晴らしく、「こう来なくっちゃ」って、ひどく感心してしまったので、ご本人の許可もなく載せさせていただきます。
「いやー、さすが森元首相。オリンピックを見事に閉めたね。
去年の12月23日に開会式ほかのイベントを担当する野村萬斎チームを解散したことからはじまって、わざと女性蔑視発言をして、スポンサーやIOCに自分を批判させ、辞任することでオリンピック中止にもっていく段取りって訳だ。
もしやる気なら川淵氏じゃなく安倍前首相を会長にするはずだからね。
大体、オリンピックの記録映画を撮る大仕事を受けた監督が去年映画を撮ってること自体が信じられないことで、そんな暇があったらオリンピック映画の段取りやテスト撮影をしているはずだ。
森さんはやるねえ、このくらいの大芝居が打てなければ総理大臣にはなれません。」
さすがの見識に、思わず拍手喝采。
いやあ、私などまだまだだと思いました。つい噛みつきたくなってしまうのは女だからでしょうか。(笑)
柏原流の切り口の足元にも及びません。これから作家を目指す方々、見習ってくださいまし。

新人の武器

TBSの名プロデューサー、演出家の鴨下信一さんが亡くなりました。
飯島敏弘さん、堀川とんこうさん、大山勝美さん、久世光彦さん、実相寺昭雄さんらとドラマ全盛時代を創りあげた方です。
皆さん鬼籍に入られてしまいましたが、昭和は名作ドラマの宝庫でした。
鴨下さんの代表作というと「岸辺のアルバム」(77‘)「ふぞろいの林檎たち」(83’・85‘・91’)があげられますが、もちろんそれだけでなく、裏番組の「北の国から」と視聴率を争った「想い出づくり」や向田邦子さん脚本の「幸福」など名作を続々と作られていらっしゃいました。

新人を育成することにも力を注いでくださっていて、シナリオ・センターの月刊シナリオ教室にも「ふぞろいの林檎たち」のシナリオを掲載させてくださったり、新人への提言や脚本家としてあるべき姿などをお話しして下さっていました。
鴨下さんが、月刊シナリオ教室に「即戦力として使える新人4つの武器」(96‘)という特集に寄稿してくださいました。
とても大事なことですので、是非ライターを志す皆さんにお伝えしたいと思います。ポイントだけになりますが、ご容赦ください。

「君だってあなただって、持っている武器で、ちょっと気のついていない武器を教えようか。(略)
自分がどうしゃべっているか、をまず検証したまえ。決して、君が描いているように、君は話していないはずだ。君の隣の若い人の会話をちゃんと聞いてみたまえ。
実に面白い単語の使い方、新しい言い回し、省略の激しさ、不思議なイントネーションでしゃべっているだろう。
それに最近の若い人は、会社や学校にいる時、家庭内、友達同志のオフタイム、それぞれ全く違う言語体系で話していることにも気づくはずだ。
そういう豊富な言語を、ちゃんと台本に定着させることだ。」

「必ずと言っていいほどに、二人は向き合って座る。
座ったらとめどもなく話す。それで終わり。それだけか。
ここで第二の武器、社会の実際をスケッチするということ、これを学んでもらいたい。」

「第三の武器は、物知りであること。
これ意外と知られていないけれど、ものを描く人間の最大の武器のひとつなんだ。
新人だからものを知らなくていいなんてことは絶対ない。」

「君は新しいものが好きか。これが第4の武器だ。
ものを作る人間は、こどものような好奇心、新しいものに対する、物珍しいものに対する好奇心を持ち続けていかなくちゃならない。(略)
今は、テーマのこと、素材のこと、そうしたことにあえてふれない。
それ以前になすべきことが山ほどあって、テーマや素材は、実はこうした作業を着実にこなしてゆけば、必然的に、どうしても、そこにぶつかる。そういった性質のものだと思う」

「要約すればたったひとつだ。君は、あなたは、ちゃんと、普通の生活をしているか。
現実にしゃべられているコトバをセリフにすること、現実に行われている生活をきちんとスケッチすること、現実に世間で読まれてたり観られたりしていることに興味を持ち、知識を積むこと。
これらは、みんな<普通の生活>。普通に生き生きと生きていれば、必ずそういった台本を書きたくなるはずのことなのだ。(略)
もし感受性を鋭く、自分の目と耳をちゃんと働かしているならば、そうそれだけで大きな武器だ。
自分が閉鎖的になっていないか、旧るくなっていないか、ひとりよがりになっていないか、自己検証をすすめる。
テレビのライターを志望している、そのことにいい気になっていないか、自己反省をすすめる。
こいつが本当にできたら、その人は抜け出てくる。
普通の生活、こいつは難しいが、やりがいのある。普通の生活で物を描く、こいつは難しいが、必ず成功する。本当に期待しているんだ。」

本当は全文読んでいただきたいのですが、割愛してだいじなところだけ。
鴨下さんは、今のドラマをどのようにご覧になっていらっしゃったのでしょうか。お聞きしておきたかったですね。
ドラマを知り尽くした先人の言葉を大切に、新人としてやるべきこと、普通の生活をきちんと暮らしていきましょう。
鴨下さん、心に残る名作の数々をありがとうございました。合掌。

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